BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

スケートボード・バートの世界記録誕生からスノーボード・パイプの進化をたどる

2021.07.20

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7月16日、X GAMES夏季大会のスケートボード・バート(バーチカル)ベストトリック部門において、12歳のグイ・クリー(ブラジル)がコンテスト以上初となる1080を決めた。これは1999年に、当時31歳だったトニー・ホーク(アメリカ)がスケートボード史上初の900をメイクして以来、22年ぶりの記録更新となったため大きな話題を集めている。

練習中になるが、昨年5月にグイは同トリックを決めており、11歳の天才スケートボーダーがトニーの記録を破ったということですでに話題にはなっていた。そのときの動画はグイのInstagramでチェックしてほしい。
 
では、スノーボード・ハーフパイプで最初の1080はいつ誕生したのだろうか。足がボードに固定されていることで、仕掛けた技を途中でキャンセルできないリスクや、フットポジションを移動できないというデメリットもあるが、スケートボードよりも回転数でアドバンテージがあることは言うまでもないだろう。
周知のとおり、1998年の長野五輪からハーフパイプが正式種目に採用されたことを契機とし、加速度的にトリックが進化していくことになる。長野五輪で銀メダリストに輝いたダニエル・フランク(ノルウェー)は決勝のランでハーカンフリップ→FS720→CAB720と3連続720をつないでおり、この大会での最高難度ルーティンだったことから、それ以降の誕生で間違いない。
 
2001年のBURTON US OPENで優勝を飾っているダニー・キャス(アメリカ)はファーストヒットでCAB1080から展開するルーティンを組んでいた。とても見えにくいカメラアングルなのだが、4:27〜の映像をチェックしてほしい。

往年のスノーボーダーには言うまでもないだろうが、そのダニーは2002年のソルトレイクシティ五輪で銀メダルを獲得。そのときのルーティンはFS720からCAB1080という繋ぎだった。以下動画の2:03〜あたりに収録されている。
そして、その直後に行われたBURTON US OPENでは、史上初となるバック・トゥ・バック(連続)1080に成功。五輪の雪辱を晴らすようにUS OPENでの2連覇を飾ったのだった。1:12あたりからウイニングランを観ることができるのでご確認いただきたい。

そして、スノーボード独自の進化としてショーン・ホワイト(アメリカ)がダブルコークの開発に乗り出した。この時点でオンスノーだけの練習ではトリックを修得できない域に到達。2010年バンクーバー五輪ではバック・トゥ・バックのダブルコーク1080を決めて2大会連続金メダルを獲得したのだ。

現在では、FSダブルコーク1440とCABダブルコーク1440がハーフパイプにおけるフロントサイド回転の最高難度トリックとされている。
 
駆け足になってしまったが、スケートボード・バートの記録に端を発してスノーボード・ハーフパイプのスピンの進化をたどってみた。こうした異次元の世界に身を置き、ただただ回転技を高難度化させるだけでなく、そこにクールさやグラブのこだわりなどを凝縮させて開発に取り組んでいるライダーたちに、改めて敬意を表したい。

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