
COLUMN
ショーン・ホワイトと平野歩夢はスノーボードに乗り替えて練習中。北京五輪の行方
2020.10.13
2006年トリノ(イタリア)、2010年バンクーバー(カナダ)、2018年平昌(韓国)とオリンピックのハーフパイプ競技で3つの金メダルを手中に収めてきた、言わずと知れたスノーボード界のスーパースターであるショーン・ホワイト。本日、ショーンが自身のInstagramのストーリーに気になる写真を投稿した。彼は現在、スイス・サースフェーで開催されているTHE STOMPING GROUNDSに参加していることはInstagramをチェックすればわかるのだが、平野歩夢とその弟・海祝と一緒にウエア姿で写っている写真を公開したのだ。

周知の事実だろうが、ショーンは東京五輪から正式種目に採用されるスケートボード・パーク競技の出場を目指し、平昌五輪以降はスノーボードと距離を置いてきた(記事はこちら)。歩夢に関しては正式な発表こそなかったものの、スノーボードの大会には一切出場していないことから、スケートボードに集中していたことが窺い知れる。
しかし、今年1月に弊サイトの記事でお伝えしたように、ショーンは昨シーズン、雪上復帰を果たした。それを裏づけるように3月1日、アメリカ大手メディアのMBCなどはショーンが東京五輪への出場を断念したと報じている。2019年9月にブラジルで行われたスケートボード・パーク世界選手権では13位と、アメリカ代表の座を得るには厳しい状況だったからだろう。
対する歩夢は、同世界選手権で17位に終わったものの、WORLD SKATEが2019年11月に発表した五輪ランキングでは日本人最高位の26位となっており、オリンピック出場圏内に入っている。それだけに、東京五輪の1年延期が彼を苦しめているわけだ。ただでさえ2年間をスケートボードに捧げたうえで2022年の北京五輪で悲願の金メダルを狙うという人生設計だったはずが、東京五輪の閉幕を待っていれば北京五輪までおよそ半年しかない。
そうなると、SAJ(全日本スキー連盟)が特例でも出さないかぎり、北京五輪の出場は不可能になる。日本代表の座を射止めるためにはワールドカップを転戦してポイントを稼がなければならないからだ。それを逆算してギリギリ間に合うのが今年の夏から北京五輪の準備をすることだったわけだから、かなりの苦境に立たされていることがわかるだろう。
スノーボードとスケートボードの両立について「野球とバスケを両立しているくらい競技性が異なる」と以前コメントしていた歩夢。「スノーボードをすることでスケートボードを失い、スケートボードをすることでスノーボードを失う」とも語っていた。スケートボードのバーチカルで磨き上げたオーリーがあるこそ、スノーボード・ハーフパイプでのエアの高さにつながっていることは事実だが、競技として世界レベルで両立させるということは、ショーンも断念したほど不可能に近い。だが歩夢は現在、雪上にいる。
先にリンクしたショーンのコメント動画に耳を傾ければわかるのだが、スケートボードで東京五輪を目指すがスノーボード競技からは引退しないとも明言していた。歩夢は沈黙を続けているが、もちろん、北京五輪ハーフパイプでのリベンジは目論んでいるはずだ。2022年冬、このふたりが再び激突し、世界中を賑わせるのか──。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
RELATED POSTS
-
READ MORE
COLUMN
命がけのトリプルコークを全否定されても逆転で金。平野歩夢が北京の舞台で夢実現
オリンピックを頂点としたFIS(国際スキー連盟)主催のワールドカップを含め、これまで表現力...
2022.02.12
-
READ MORE
COLUMN
トリプルコークをハーフパイプのルーティンに組み込むことは可能なのか
7月上旬、米オレゴン州マウントフッドのハーフパイプにて同州ベンド出身のフリースタイルスキー...
2021.07.14
-
READ MORE
COLUMN
過去5シーズンにUS OPENハーフパイプで90点以上を叩き出した衝撃ランまとめ
1982年に始まったBUTON US OPENはスノーボードの大会としてもっとも歴史がある...
2020.04.06
-
READ MORE
COLUMN
あの感動から2年──平昌五輪ハーフパイプでのショーンと歩夢の激闘を振り返る
今なお、バック・トゥ・バック(連続)ダブルコーク1440という奇跡のルーティンは誰も成功し...
2020.02.14
-
READ MORE
COLUMN
ショーン・ホワイトVS平野歩夢の激闘。平昌五輪ハーフパイプ決勝を振り返る
OLYMPIC CHANNELにて平昌五輪ハーフパイプ男子ファイナルの全編が公開中。銅メダ...
2018.03.02
-
READ MORE
COLUMN
平昌五輪ハーフパイプ予選3位の結果を受けて確信に変わった平野歩夢の金メダル
韓国・フェニックススノーパークで行われている平昌五輪ハーフパイプ男子予選が終了し、1位はシ...
2018.02.13
-
READ MORE
COLUMN
平昌五輪でカギを握るYOLOフリップと呼ばれるダブルコーク1440に迫る
2017年夏、米オレゴン州マウントフッドのハーフパイプでトレーニングを行っていたトビー・ミ...
2018.01.10
-
READ MORE
INTERVIEW
ショーン・ホワイトと同じ道は歩まない。平野歩夢が孤独とともに勝ちとった金メダル
人跡未踏のトリプルコーク1440をルーティンに組み込んだスーパーランをオリンピックという大...
2022.04.29
-
READ MORE
NEWS
平野歩夢が圧巻の滑りで予選1位。北京五輪ハーフパイプは日本人男女7名が決勝へ
昨年8月5日まで本当にスケートボードに専念していたのか。スケートボードで東京五輪出場を果た...
2022.02.10
-
READ MORE
NEWS
平野歩夢が圧巻の滑りでW杯ハーフパイプ2連勝。トリプルコークの行方は?
今シーズンのコンテストには一切出場していなかった平昌五輪の銅メダリスト、スコッティ・ジェー...
2022.01.16
-
READ MORE
INTERVIEW
スケート&スノーボードで史上初の夏冬2年連続五輪を目指す。平野歩夢が今を語る
先日のコラムでは、平昌五輪ハーフパイプ金メダリストのショーン・ホワイトと同銀メダリストの平...
2020.11.02
-
READ MORE
NEWS
事実上の世界一決定戦 BURTON US OPENに平野歩夢らが参戦
36周年という歴史と伝統を誇る格式の高いコンテストとして知られるBURTON US OPE...
2018.03.04
LOAD POSTS