COLUMN
優勝賞金200万円のビッグエア日本一決定戦「SCLOVER BIG AIR」に迫る
2020.03.23
さる3月6日、暖冬シーズンにも関わらず寒波の襲来とともに、ビッグエア日本一決定戦が行われた。かつて東京ドームや札幌ドームで開催されていたビッグエアの国際大会で活躍し、現在は新潟・神立スノーリゾートやロッテアライリゾート、そして岩手・夏油高原でパークをプロデュースする石川敦士が主催。そのタイトルは石川を中心として活動していたフィルムクルーの名であり、現在はパーク名としても採用されていることから、SCLOVER BIG AIRと銘打たれた。
当初は5日に予定されていたのだが、悪天候により翌日に順延。全国津々浦々からビッグエアの猛者たちが集結しており、決戦の火蓋が切られるのを今か今かと待ちわびていた。会場は自身がパークを手掛けているゲレンデではなく、福島に位置する星野リゾート 裏磐梯猫魔が選ばれたのだが。
「2011年3月11日に起こった東日本大震災のとき、僕はアルツ磐梯にいたんです。大会が予定されていたんですがキャンセルになってしまって……。あのときできなかったからこそ、福島で大会を開きたい。そういう想いがずっとあったんです。あと、自分が若い頃は目標となる大会がたくさんありました。そこでスポンサーに声をかけてもらったり、評価されたりしたものです。だからこそ、若いライダーたちの目標となる大会を作りたかった。でも、少雪だったのでライダーたちがベストなパフォーマンスを出せるサイズのキッカーを造るだけの雪の量が足りませんでした。大会の開催を決定したのは2月9日。そこからすべてが動き出したためギリギリになってしまったんですが、現場のプロたちが施工や造成など段取りをしてくれたおかげで開催にこぎつけたわけです」
石川は今大会を主催する経緯について、このように語ってくれた。そして6日、天候は回復。時折強風が吹き荒れるものの、コンテストは開幕した。
ひとり3本のランを行い、ベストポイントで争われた。1本目、3番出走の宮澤悠太朗がいきなり魅せる。目の覚めるような特大BS1260メロンをストンプすると、新型コロナウイルス感染拡大防止のため無観客で行われていたにも関わらず、関係者たちの歓声が鳴り響いた。間違いなく会場のボルテージが上がった瞬間だった。
さらに、平昌五輪・日本代表の國武大晃がCAB1440でインディからノーズをつかむ2グラブを披露。1本目から格の違いを魅せつけた。
勝負となった2本目。強風が吹く頻度が高まり、ライダーたちはスピード調整に苦しめられていた。結論から言ってしまうと、出場ライダー20名のうち5人しかジャンプに成功しなかったほどである。うち荻原大翔の着地は後傾になってしまっていたため、クリーンにメイクしたのは4人しかいなかった。
そのような運も必要となるなか1番出走だった最年少の14歳、渡部陸斗が今大会で最高回転数となるBS1620ミュートを決めた。着地直後にヒールエッジでリカバリーしたものの、滞空時間が短いながらスピンを完璧にコントロール。末恐ろしさを覚えさせるほどの存在感を示した。
そうした状況で、先述の國武とともに2019年に行われたBURTON US OPENスロープスタイルでファイナリストになるなど、国際大会で活躍している飛田流輝が見事なジャンプを繰り出す。強風などの影響により出走前の5人が連続してミスするという厳しい環境下にも関わらず、FS1440メロンをパーフェクトストンプ。スイッチ・トゥ・スイッチで、しかも2グラブで同じく4回転を決めた國武を2位に従えての優勝を飾ったのだ。
3位に入ったのは、初日の一般予選を2位で勝ち上がってきた山瀬拳生。勝負に出た2本目、BSトリプルコーク1440ミュートをどデカく放ってきたのだ。風を読み違えるとナックルに落ちてしまったり、逆に飛びすぎてしまうような状況だったが、その飛びすぎを抑える力強い着地に見事成功。招待ライダーたちを退けて表彰台を射止めたのだった。
X GAMESでの活躍など世界から注目を集める相澤亮は、3本目にBSトリプルコーク1440ミュートを決めるもわずか1ポイント及ばず4位。
宮澤は1本目のポイントで5位、4回転半に成功した渡部は6位に終わった。
「出場ライダーたちのライディングスキルはハンパじゃないですね。日本の将来は明るい! 世界の舞台で活躍できるライダーに成長してくれることを祈っています。今後はもっと大きなジャンプが飛べるステージを用意し、イベント自体も大きくしていきたいと思っています。そして、ライダーたちが活躍できる場であり、一般予選にもっと多くのスノーボーダーたちが参加できるような、目指すべき大会にしていきたいと考えています」
事実、一般参加の山瀬が3位に入った今大会。そして、飛田は200万円、國武は100万円を獲得した。一般ライダーに夢を与えながら、世界中を転戦するため多額の活動費がかかる競技者たちのサポートにもなったSCLOVER BIG AIR。
かつて石川が大会やスポンサーからの恩恵にあやかってきたように、今は若手ライダーたちをサポートする立場になった。エンターテインメントとしてのビッグイベントも大切だが、こうしたライダーによるライダーのための大会が選手たちを強くしていくのかもしれない。
SCLOVER BIG AIR 結果
1位 飛田流輝
2位 國武大晃
3位 山瀬拳生
4位 相澤 亮
5位 宮澤悠太朗
6位 渡部陸斗
全結果はこちら
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief) photos: yoshitoyanagida.net, Ryo Hiwatashi