COLUMN
人跡未踏の雪山を前に“ダイヤルイン”するトラビス・ライスのルーティンに迫る
2019.11.19
米ワイオミング州に位置するビッグマウンテン・ジャクソンホールでスキーパトロールを生業としていた父を持つトラビスは2001年冬、18歳のときに参加した大手専門メディアが主催する若手の登竜門と化していたイベントにて、特大のバックサイド360で112フィート(約34m)の飛距離を叩き出し、鮮烈なデビューを飾ることに。その場でABSINTHE FILMSにスカウトされてムービースターとしての道を歩み始めた。その傍らで、X GAMESやBURTON US OPEN、東京ドームで開催されていたX-TRAIL JAMなど、スロープスタイルとビッグエア競技において国際大会の頂点に君臨したのだ。
その後、フリースタイルスノーボーディングの未来を追究するべく、バックカントリーを舞台とした映像表現に注力することになる。約37mと言われる伝説のチャドズギャップで衝撃映像を残すと、BRAIN FARMが手掛けた『THE ART OF FLIGHT』(2011年作)や『THE FOURTH PHASE』(2016年作)といった、これまでのスノーボードムービーの常識を覆す規格外の映像作品をリリースし、アクションムービーという枠組みを越え新たなる可能性を示唆した。
トラビスが生きているバックカントリーという世界。冒頭で述べたように地球規模の滑りを映像化するために、スノーモービルやヘリ、そして自らの脚を駆使して、まだ見ぬ極上の斜面を求めて彷徨い続けるわけだ。そこまでのアプローチ方法、ともに行動するクルー、斜面への陽の当たり方、雪のコンディション、雪崩のリスク……など、調べなければならない情報は枚挙にいとまがない。常に死と隣り合わせの状況においては、滑りが上手いだけでは絶対に通用しないのだ。知識や経験はもちろん、万全の準備が必要なのだから。
「山々が雪に覆われている時期は、日が短い。太陽が南に傾いたとき、射し込む光が谷を照らす。冬山では謙虚に。森の中に仲間といるためには、徹底して責任を持つこと。自然のなかへと進んでいく道はいくつもあるが、重要なのは自分の意思なのさ。様々なステップで解決すべきパズルがある。あらゆる意味で正しいと感じたなら、進め。予想されることと、そして予想外のことのために、私はBoaとダイヤルインする」
本記事に掲示している動画内で、トラビスはこのように語っている。彼の滑りを支えるシグネチャーブーツには、シューレースでもクイックレースでもなく、自らが選んだBoa®フィットシステムが搭載されているのだ。
一般的なBoaに対する印象として、“簡単” “ラク” “速い” “手軽” という意見が多いのかもしれない。失礼ながら筆者もそうだった。しかし、BOA FIT SYSTEMは単なるコンポーネントブランドとは一線を画し、ダイヤルの選定からワイヤーの通し方など細部に至るまで、各ブーツブランドと共同開発を行っているのだ。これにより、最大限のパフォーマンスを発揮することはもちろん、剛性や強度、耐久性においての強い信頼を勝ち得ている。
多くのスノーボードブランドがBoaを採用していること、トップライダーたちがBoaを愛用している事実、さらに、8,611mと世界で2番目に高いK2に登頂し、そこからパラグライダーで飛ぶという常軌を逸した冒険家、マックス・バーガーの足元を支えているシューズやブーツにもBoaが搭載されていることからも、前述した機能性を十二分に証明していると言えるだろう。
ダイヤルを回すだけでブーツを締め上げることができる画期的なシステムは、確実に進化を続け、トラビスのような超人スノーボーダーのパフォーマンスを支えるフィットソリューションとなった。すばやく、容易に、かつ確実なフィットを得られるBoaは、あなたのブーツにも搭載されている。
「カチカチカチカチ」とダイヤルを回す作業は、トラビスにとってバックカントリーという人跡未踏の地に足を踏み入れるための準備であり、儀式のひとつ。いわゆるルーティンだ。ダイヤルイン(DIALED IN:ダイヤルを回すこと。英語で「準備万端に」)して繰り出された数々のパフォーマンスに世界中のスノーボーダーたちは魅了され、再び雪山へと足を向けるのだろう。
そして自らもダイヤルインすることで、スノーボードがもっと面白くなる。
text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
トラビス・ライス
生年月日: 1982年10月9日
出身地: アメリカ・ワイオミング州ジャクソンホール
Boa Pioneer | Travis Rice
- Boa Technology Japan Inc.
- ブランドサイト: boafit.com