BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

X GAMESアスペン発の新競技“ナックルハック”ってナンダ?

2019.01.29

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米コロラド州アスペンで開催されていたX GAMESの3日目、新たなるスノーボード競技が誕生した。ビッグエアのジャンプ台を使用するのだがキックからは飛ばずに、テーブルとランディングの斜度が急激に切り替わるポイント、ナックルを利用して飛び出すというもの。パークムービーを熱心に観ている読者諸兄姉であれば、すぐにピンと来るだろう。そう、ノルウェーが生んだスピンマスター、バックサイド・クワッドコーク1800を操ることで有名なマーカス・クリーブランドが開発した“遊び方”が競技として採用されたのだ。
 
この遊びが生まれた背景には、ジャンプの巨大化が挙げられる。より難度の高いトリックが繰り出せるように空中で描く放物線を大きくするためには、着地時の衝撃を緩和してあげなければライダーのリスクが高すぎる。よって、ランディングバーンを40度近くの急斜面に設定し、かつ長くする必要があった。こうして巨大キッカーでクワッドコークを編み出す傍らで、その息抜き(?)としてナックルでの遊びが誕生したのだ。
 
その生みの親はケガのため記念すべき第1回大会への出場は叶わなかったが、20分のジャムセッションで行われた本イベントは観ていて面白い。滞空時間の大きい巨大な弧を描くしか選択肢がないビッグエアでは、どうしても回転数の多さや回転軸の複雑さがフォーカスされてしまい、トリックの高難度化が急がれることで、ライダーたちの個性が置き去りにされる傾向が強い。
 
しかし、このナックルハックはテーブルのフラット部分でバタートリックを仕掛けながら、そのままボードの反発を利用してスピンしてみたり、バックカントリーのノールのようにダウン系のヒットポイントとして遊んでもいい。ハンドドラッグからダブルコークを回すなどの高難度トリックまでを含め、創造力と技術力が共存できるフィールドなのだ。
 
そうしたこともあり今大会には、平昌五輪スロープスタイルで金メダルを獲得して以降、コンテストシーンから姿を消していたセイジ・コッツェンバーグ(アメリカ)、そして、BYND×MDLSの一員としてムービーシーンで活躍しているケビン・バックストロム(スウェーデン)らが出場。ケビンはX GAMES初参戦となった。また、競技者としての道を歩んでいる17歳のジャッド・ヘンクス(アメリカ)は、およそ40度の傾斜を誇るランディングバーンをヘッドスライディングで滑降するなど、要するになんでもアリ。もちろんライディングスキルは重要なのだが、それ以上に、ライダーたちの遊び方のセンスが問われるからこそ観ていて面白いのだろう。
 
そんなクリエイティビティあふれるコンテストを制したのは、その中身は不明だが常にバックパックを背負ってパークライディングに明け暮れているフリチョフ・ティッシェンドルフ(ノルウェー)。存在自体が放っている強烈な個性に負けず劣らず、滑りでも魅せてくれた。
 
クワッドコークや1800といった高回転3Dスピンでは伝えることが難しくなってきたフリースタイルスノーボーディングの自由さや独創性が、このナックルハックを通じてコンテストシーンでも表現されることを願う。

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