BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

フリーライディングとはスノーボードのすべて

2018.06.01

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プロスノーボーダーたちは、ターンの一つひとつにとてもこだわりを持っている。滑る地形や雪質によってターンを変えているほどだ。
 
僕たちが楽しんでいるスノーボードはフリースタイル。そう認識している人は多いだろう。この言葉を耳にすると、トリックなどのアクションが重視されるように思われがちだが、すべてはターンの延長線上にあるということを忘れてはならない。
 
5月27日に新潟・かぐらもクローズしてシーズンは幕を下ろしたばかりだが、改めて考えてみたい。そこで、美しいラインを刻みながら縦横無尽にバックカントリーを駆け巡り、あらゆる地形をヒットしながらトリックを織り交ぜるフリーライディングの達人、ニコラス・ミューラーが以前に語ってくれた話をお届けしたい。
 
彼はフリーライディングにルールはないという持論を展開しており、思い描いたように滑ることでルールは自分たちで作るものだと考えている。自分自身の存在をしっかり感じながら仲間たちと一緒に滑り、ボードと一体化させるような気持ちで自分のスタイルとスノーボードを愛すること。こうした気持ちが必要になると、精神的な面からもフリーライディングの在り方を考察している。
 
この“ボードと一体化させる”というのは技術的な話になるが、いわゆる“板に乗れている”と表現されるライディングを指すのだろう。これについて、ニコラスは次のように語っていた。
 
「ほとんどの動きを上半身がリードするから、いつでも柔軟に動ける状態をキープしている。ライディング中、ボディバランスが自然にとれている場合とそうじゃないときがあると思うけど、もし後者だとしたらもっと滑り込むべき。自分のライディングをイメージしたとき、頭の中で視覚化した動きに自信を持てるかどうかが大事なんだ」
 
当然だが、トリックうんぬんの前に、滑り込むことが重要だ。シーズン序盤であればなおさらだが、フリースタイルスノーボーディングを楽しむためには、その下準備が必要となる。
 
「フリーライディングしながらトリックをマスターしようと考えるんじゃなくて、フリーライディングは滑り自体の質を高めるもの。トリックを覚えるのは二の次で、時間があるときに練習すればいい。まずは、意のままにボードを操れるようにすることが先決なんだ」
 
トリック単体の動きを習得するために躍起となっているスノーボーダーが多いのかもしれないが、前述したように、すべてはターンの延長線上にある。それは、キッカーでのスピンだろうが、自然地形へヒットするときだろうが同じこと。アプローチラインを活かしてトリックを繰り出すのだから、ターンの精度を高めることがトリックを習得する近道とも言い換えられる。
 
その結果として、思い描いたように滑れるようになるのだから。ニコラスが言っていた「ルールは自分で作るもの」というフリーライディング理論は、自在にボードをコントロールできなければ不可能であり、本当の自由を手に入れるためには、やはり基本となるターンが大切というわけだ。
 
そしてニコラスは、フリーライディングの醍醐味についてこのように語ってくれた。この言葉を持って、本コラムの結びとさせていただく。
 
「オレにとってのフリーライディングとはスノーボードのすべて。魂が感じるまま自由に滑ることができる、最高の遊びなんだよ」

rider: Nicolas Muller photo: Scott Serfas/Red Bull Content Pool

 
※弊誌編集長・野上大介がRedBull.comで執筆しているコラム「SNOWBOARDING IS MY LIFE Vol.101」(2016年11月18日公開)を加筆修正した内容です

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