
COLUMN
弊誌創刊号「國母和宏という生き様」に込めた想い。イントロ全文を公開
2017.05.07
2016年10月28日に発刊した弊誌ISSUE 1「KAZU KOKUBO ──國母和宏という生き様──」。創刊号にいちライダーのストーリーを採用した理由。それは、世界トップに君臨する日本人プロスノーボーダーであることはもちろんだが、カズの強すぎる信念こそがフリースタイルスノーボーディングの本質そのものであり、そこに、スノーボーダーとして育まれるアイデンティティを垣間見ることができるから。ここでは、ISSUE 1のイントロダクションに綴った全文を公開する。
INTRODUCTION
はじめに
2004年初冬。シーズンを目前に控え肌寒くなってきていた東京・渋谷に、高校1年生の少年が単身で北海道からやってきた。14歳のときに、伝統の一戦であるBURTON US OPENハーフパイプ種目で2位に輝くなど、“タダモノ”でないことは承知していたのだが、長時間に渡るインタビューやスタジオ撮影、さらに高校生の一般スノーボーダーとの座談会など、過密したスケジュールを難なくこなす姿からは、すでに大器の片鱗をのぞかせていた。それが、カズとの出会いである。
あれから12年。スノーボードを取り巻く環境は大きく変化したが、それ以上に、カズの進化は凄まじかった。その偉業を含めた彼のスノーボード人生については、たっぷりと後述するので割愛させていただくとして、ここでは、小誌「BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE」創刊号のすべてを通してカズを表現することで見えてくる、その強すぎる信念について触れておきたい。
これまでカズは常に明確な目標を掲げ、それに向かって全力で突き進んできた。幼少期の頃は「上手くなること」、小学6年時にプロ活動を始めてからは「日本一になること」、高校生のときには「世界で認められること」、それを実現した後には「世界のトップに立つこと」。幼い頃から、大人だらけの環境で上達していく過程で経験したあらゆる出来事に解釈を求め、それが正解だと確信することで育まれていったスノーボード観。ハーフパイプから高く宙を舞うことで賞賛され、スタイリッシュなトリックを決めることでハイファイブを求められた。このようにして、大会で“勝つための滑り”ではなく、“カッコいい滑り”を発信することがカズの信念となった。大会だけでなく撮影でも同じ価値観を抱き、表彰台に上がることはもちろん、美しい写真や映像を残していくことで、その信念は確固たるものへ昇華したのだ。
しかし、スノーボードの本場で確立した己の信念を貫き通したことで、日本社会から大きな誤解を受けてしまうことになる。賛否は分かれたものの多くの国民が彼をバッシングしたが、カズは自分の信念を曲げることはしなかった。体育文化では学ぶことができないフリースタイル文化を肌で感じ、大自然のなかで言葉や文化の壁を越えて孤軍奮闘してきた自信とプライド。その結果として、スノーボード界の世界トップに登り詰めたわけだから。
BURTON US OPENの2連覇は周知の話であり、世界中のスノーボーダーを震撼させた数々のビデオパートや、1シーズンで世界各国の専門誌9誌の表紙を飾った。さらに、記憶に新しいと思うが、2015年の秋に開催されたX GAMESを主催するスポーツ専門チャンネル・ESPNが贈るバックカントリームービーの世界頂上決戦においては、オンラインによる一般投票で大差をつけてのトップ。ギギ・ラフ、ジェレミー・ジョーンズ、ジョン・ジャクソン、ミッケル・バングらトップライダーが名を連ねるなかで、過半数以上の得票数を獲得しての1位だった。これらは、前述した世界トップである事実を証明する材料として申し分ないはずだ。
この12年間、誰よりもカズを取材してきたいちジャーナリストとして、その信念を深く理解しているつもりである。彼を天才と称するのは簡単な話だ。でも、そうではない。その舞台裏では、幾度となく苦難を乗り越え、目標に向かって積極的に行動し続け、新しい価値を創造してきた。それは、“カッコいいスノーボードを伝えたい”という、シンプルだが強すぎる信念が突き動かしていたのだ。これこそが、國母和宏という生き様。
成功哲学の原点『思考は現実化する』の著者であるナポレオン・ヒルの名言に、こんな言葉がある。「心の中に限界を設けないかぎり、人生に限界なんか存在しない」。あくまでも通過点であるが、國母和宏のスノーボード人生をここに記す。
BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE編集長 野上大介
ISSUE 1 KAZU KOKUBO ──國母和宏という生き様── A4サイズ / フルカラー / 日本語・英語 / 128ページ
※ISSUE 2「THE ESSENCE OF FREESTYLE SNOWBOARDING ──フリースタイルスノーボーディングの本質──」とISSUE 3「SNOWBOARDING, FRIENDS, AND THE BOND ──スノーボードと仲間と絆──」の3号セットでのオンライン限定販売になります
RELATED POSTS
-
READ MORE
NEWS
弊誌最新号ならびに創刊号 國母和宏に関連する書籍の販売再開のお知らせ
11月6日の國母和宏の逮捕を受けて販売を停止しておりました、BACKSIDE SNOWBO...
2019.11.28
-
READ MORE
NEWS
BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE 國母和宏氏に関連する書籍の販売停止について
11月1日に発売しましたBACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE IS...
2019.11.06
-
READ MORE
MAGAZINE
弊誌 ISSUE 1「國母和宏という生き様」第1章【全文公開】
代官山 蔦屋書店にて弊誌初となる実店舗販売がスタートしたことを受け、2016-17、201...
2018.10.08
-
READ MORE
MAGAZINE
1st. Issue “KAZU KOKUBO – The life as Kazuhiro Kokubo –“ Now available for worldwide.
BACKSIDE MAGAZINE first Issue was released Oc...
2016.12.12
-
READ MORE
NEWS
創刊号「KAZU KOKUBO ──國母和宏という生き様──」コンテンツ紹介
10月28日(金)にオンライン限定発売となる弊誌「BACKSIDE SNOWBOARDIN...
2016.10.27
-
READ MORE
COLUMN
平野歩夢の「夢への歩み」を追った一冊。イントロ全文を公開
2018年2月6日に発刊した弊誌5号目「WALK TO THE DREAM ──夢への歩み...
2018.03.09
-
READ MORE
INTERVIEW
記者会見で「うるせー」と真正面から言い放った國母和宏の真意を改めて知る
連日報道されている「会見ボイコット問題」。あらゆる角度から様々な意見が飛び交う中、2010...
2021.06.03
-
READ MORE
NEWS
今季開幕号「KAZU KOKUBO, THE MOVIE STAR ──國母和宏が命を捧げる映像表現の世界──」11月1日(金)発売
創刊号「KAZU KOKUBO ──國母和宏という生き様──」の続編。世界一に登り詰めたム...
2019.10.28
-
READ MORE
NEWS
弊誌ポップアップコーナーが東京・代官山 蔦屋書店に1ヶ月間限定オープン
2016年10月に創刊した弊誌「BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZIN...
2018.11.20
-
READ MORE
MAGAZINE
今季開幕号「BURTON, SIMS, AND CRAIG KELLY ─フリースタイル温故知新─」11月20日(火)発売
スノーボードの根幹であるフリースタイルスノーボーディングの原点をたどり、現在につながる系譜...
2018.11.14
-
READ MORE
MAGAZINE
弊誌 ISSUE 3「スノーボードと仲間と絆」第1章【全文公開】
代官山 蔦屋書店にて弊誌初となる実店舗販売がスタートしたことを受け、2016-17、201...
2018.10.10
-
READ MORE
MAGAZINE
弊誌3号目「スノーボードと仲間と絆」4月24日(月) 発売
ISSUE 3「SNOWBOARDING, FRIENDS, AND THE BOND」で...
2017.04.21
LOAD POSTS