
COLUMN
BACKSIDE MAGAZINEが伝えたいこと Vol.3
2016.09.16
なぜ今紙媒体なのか?
インターネット全盛期。ウェブメディアが台頭し、デジタルシフトが急がれ、紙媒体の休刊が相次いでいる。電車内を見渡せば、スマートフォンを片手に情報収集している人々(ゲーマーもいるだろうが)が多く、通勤時に新聞を読んでいるサラリーマンが激減。日々の情報は、紙ではなくインターネットから入手する時代へと移行している現実は否めないし、僕自身もそうだ。
職業柄、このようなことを日常的に考えているのだが、改めて向き合ってみた。スノーボードメディアとして紙媒体は必要なのか? ……悶々と考えを巡らせるなか、雑誌編集者として歩んできた約16年の道のりが思い出された。
スノーボード誌を制作する際、各フォトグラファーがシーズン中に作品として撮影した写真を、雪解けとともにまとめて預かるケースが多い。編集者として駆け出しの頃はデジタル写真ではなくフィルム写真だったため、フォトグラファーごとに封筒に分けて管理していた。ライトテーブル上でルーペを覗き込みながら一枚一枚チェック。現在はデジタル写真なのでフォルダごとに分けて管理しているのだが、改めて振り返ってみると、物質として存在していたポジフィルムのほうが記憶や印象に残っていたことが脳裏をよぎる。誌面で使用したい写真のイメージが固まったとき、記憶の引き出しから誰の封筒の何枚目くらいのスリーブに近しい写真がある、というような“感覚”として探し当てることができた。もちろん、完璧にではないのだが。
現在は膨大な量のデジタル写真をパソコン内で管理しており、各写真をキレイな液晶画面でスピーディに確認できるわけだが、フィルム時代にはあった物質的な感覚がない。管理している写真の点数が多いことも一因だろうが、カタチとして存在していないためか、フィルムと比較したときに記憶や印象に残っていないのだ。
これらは、あくまでも個人的な見解である。しかし、スノーボードメディアにとって、写真は単なる“記録”ではない。それは、ライディングでもランドスケープでもそう。ライダーたちの表現力、大自然が織り成す景観美───これらを“記憶”として刻み込んでほしい。ルーペで覗いていたとはいえ、たった24×36mm(35mmフィルム)の大きさからもそう感じたのだから。こうした理由から、紙媒体として届けたい。そう強く思った。
冒頭で述べたように、日々の情報はスマートフォンを中心にインターネット上で閲覧されている。スノーボードでも同じように、即時性を有するコンテンツはウェブメディアのほうが相性がよい。よって、BACKSIDEが贈る紙媒体では、後世に残す価値の高いコンテンツ制作を意識し、質の高い情報をお届けしていく。また、あらゆる情報をバランスよく編集するのではなく、前項までに述べてきたテーマを絞り込んだうえで、とことん掘り下げていく。そして、読み手の“感覚”にアプローチする情緒的価値を一冊に詰め込む。こうした編集方針で制作していく覚悟だ。
編集者として駆け出しだった頃、原稿はフロッピーディスクに保存していた。たった15年ほど前の話だが、現在、それを開くためのドライブを持っていないことに気づく。だが1000年以上前、和紙に墨で綴られた史料はいつでも見ることができ、そこから歴史が紐解かれていった事実。
繰り返そう。後世に残す価値の高いコンテンツを見極めて、紙に残していく。
BACKSIDE編集長 野上大介
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