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滑っているのに、仲間との距離が“ゼロ”になる。セッションの常識を覆す、Bluetoothインカム「Cardo」とは?
2025.11.21
バイク用インカムとして進化してきたBluetooth通信デバイス「Cardo(カルド)」を、スノーボードセッションで使用してみたところ、想像をはるかに超える“つながり”が生まれたのだ。高音質かつ安定した通信により、まるで“隣にいる”かのような近さで仲間の声が届く。個性を解放するスノーボーディングの楽しさを同時にシェアできる、これまでに経験したことがなかった新しいセッション体験がそこにあった。
バイクで培われたテクノロジーが、雪上で開花する
まずは基本仕様から見てみよう。Cardoはバイク用インカムとして長年進化を続けてきたプロダクトだ。 ヘルメットへの装着を前提としているが、スノーボードではゴーグルバンドに直接取り付けることも可能。 見た目もスタイリッシュで、ストリートスタイルにも自然に馴染む。

重量やわずらわしさを感じることはなかった
実際にセッティングしてみて感じたのは、使い勝手のよさだ。バイカー同様、スノーボーダーもグローブを外したくない場面が多い。その点、Cardoは「ヘイカルド、ボリュームアップ」「ヘイカルド、マイクをミュート」など、音声コマンドで操作ができる。グローブをしたままでも反応がよく、ストレスはほとんどなかった。さらにアプリを連動させれば、電話の発着信や音楽、ラジオの再生も可能だ。

グローブを着けたままでも操作性抜群
最大の魅力は、通信の仕組みにある。Cardoはトランシーバーやスマートフォンの電波を使わず、インカム同士をBluetoothで直接つなぐ。雪山のように携帯キャリアの電波が届きづらい場所でも安定して使えるのは、スノーボーダーにとって大きなメリットだ。
最大15人までのグループ通話に対応。2者間での通話距離が最大1kmのところ、全員が中継点となって通信をリレーし、最大5kmまでカバーできる「DMC(Dynamic Mesh Communication)」という独自技術を搭載している。国内のゲレンデであれば、ほぼ問題なく使えるレベルの通信範囲といえる。
7人で同時に話す、まったく新しいセッション体験
今回は、読者コミュニティ「BACKSIDE CREW」の有料会員「FRESHFISH」のメンバーに協力してもらい、実際の雪上で使用してみた。用意したインカムは7台。5名のCREW、カメラマン、筆者でテストに臨んだ。
リフトに向かって歩き出した瞬間、まず驚かされたのは音質のクリアさだった。7人全員と同時に話しているのに、音が濁らない。キレイな音声が耳元で聞こえるので、まるで隣で会話しているような感覚に陥り、思わず笑ってしまうほどだった。
リフトは2台に分かれて乗車したが、「どのコースに行こう」「どんな撮影をしよう」といった打ち合わせも全員でリアルタイムにできる。これまではリフト降車後に合流してからか、身振りやスマホで伝えていたわけだが、そんなやりとりは必要ない。滑る前から、すでに新しいセッションの可能性を感じていた。

会話もいつも以上に盛り上がる
ピークに到着しても会話は止まらない。
各々好きな場所でヒールエッジを雪面に突き刺して安定させたのち、「装着した?」「あのコース行こうよ」「どんな構図で撮ろうか?」と、全員がバインディングを締めながら自由に話す。STEP ONユーザーの筆者は装着が圧倒的に速いので、準備中の仲間にずっと話しかけていたら「うるさい」とツッコまれた(笑)
そして、いよいよライディング。スピードが上がれば風切り音で会話が聞こえにくくなるのではと予想していたが、それも杞憂だった。時速100kmを超えるバイクでの会話を想定して開発されたノイズキャンセリング性能は、雪上では感動レベル。クリアな音で、全員の声がはっきり届く。

Cardoを装着したファーストラン。テンション爆上がり状態
流れを止めることなく、セッションを楽しめた。従来であれば、一度止まってコミュニケーションを図るか、電話や無線機を取り出して通話する、もしくは身振りで伝えていたやりとりが、日常会話のように自然に行える。

筆者もライディング&トークセッション参加。音質がクリアだからこそ、滑りながら話す価値が上がる
上の写真では、こんなやりとりがあった。
「よし、このまま滑り下りよう。ZIZO(カメラマン)、下のリフト乗り場で合流よろしくー(筆者)」
「オッケー(ZIZO)」
Cardoでつながることで効率が格段に上がり、およそ1時間で本記事の撮影はすべてコンプリートした。
撮影現場にも、家族の時間にも。Cardoがもたらす共有の力
シーズン中は毎月、BACKSIDE CREWによるセッションイベント「BACKSIDE SESSION」を開催している。本記事の撮影は、BACKSIDE SESSION後に行ったものだ。毎回記事にするための撮影を行うので、一般スノーボーダーよりも“撮影慣れ”しているメンバーも多い。
撮影者と被写体が常に“声”でつながっていることで、ラインどりや構図を即座に共有できる。「もう少しライダーズレフトから入る」「今のアプローチラインをキープ」など、これまでジェスチャー頼りだったやりとりが一瞬で完結するため、撮影効率の向上はもちろん、意思疎通のズレが減ることで、より自然な画が生まれるのだ。

カメラマンからCREWへ的確な指示が飛ぶ
テストに参加してくれたメンバーから、Cardoについて率直な意見が寄せられた。

「鮮明な音でストレスなく、少し離れた仲間もすぐ近くに感じられました。キッカー下にいる人と連絡を取り合えば事故防止にもなりそう。見た目もカッコよく、操作もしやすかったです」──Toyo

「複数人で滑っているとき、コース分岐点で“どっち行く?”と話しながら滑れるのは本当に便利。バックカントリーでも雪面やクラックなどの情報共有の質が格段に上がりそうです」──Masa

「追い撮り中に飛ぶポイントを話しながら滑れたら絶対楽しい。仲間同士もいいですが、家族で使ったら、きっと最高の思い出になるんじゃないかと感じました」──Nemo

「撮る側と滑る側の細かいやりとりができるのは大きい。少しサイズが大きめなので、シビアな状況では重量などが気になる人もいるかもしれません」──Hossy

「ストリートなウエアにも合うルックスで、ゴーグルバンドにしっかり固定できるので安心して滑れました。スマホの充電を気にせず使えるのは、とてもよかったですね」──Yuto
筆者はバイカーではないため、バイク用に開発されたという商品背景からは想像が及ばなかったが、実際に使ってみてはっきりしたことがある。バイク用に開発されたインカムだからこそ、スノーボードでの使用にこれほど適していたのだ、ということを。
仲間とリアルタイムで同じ空気を共有する──それがセッションの醍醐味だ。電波に頼らず、声でつながる。常時つながっていることで、その濃度はさらに高まっていく。このように、雪上でのコミュニケーションを革新するデバイス。それがCardoなのだ。

事実、最高のセッションとなった
この冬、Cardoがあれば、セッションはもっと自由で、もっと楽しくなる。
PACKTALK OUTDOOR
PACKTALK OUTDOOR

▷Bluetoothバージョン: 5.2
▷通話人数: 最大15人
▷最大通信距離(ユニット間): 1,000m
▷最大通話時間: 10時間
▷連続待機時間: 10日間
▷本体サイズ: 約44mm×88mm×25mm
▷本体重量: 49.5g(ケーブル含まず)
▷作動温度: -20〜55℃
▷実勢価格: 2個セット69,800円
※ゴーグルは付属しません
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: ZiZO




