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“登って滑る”ために開発された未来のウエア「KALAUSI」を生み出したBURTONの本気度
2023.12.23
AKはアラスカを指すわけだが、その地元のガイドや登山家たちが身につけているテクニカルギアを先出のクレイグが目の当たりにし、スノーボードブランドでも同様のハイパフォーマンスアウターウエアが必要だ、という考えのもと開発されたものだ。そうした原点に立ち返ったのか、これまでは“滑る”ために作られてきたAKに、“登って滑る”ことに徹底的にこだわったプロダクトが誕生。KALAUSI(カルーシー)と銘打たれた。
その誕生秘話について、BURTONのシニアプロダクトディベロッパーを務める、ジェフ・イェーガーを直撃。さらに、KALAUSIの必要性について、ハーフパイプからバックカントリーに至るまでフィールドを問わずAKを身にまとい、オリジナリティあふれるライディングを披露しているダニー・デイビスに話を聞いた。
ミニマルの極限にまで挑み誕生したシェル物語
「多くの人はどんなコンディションでライディングするかによって、そのパフォーマンスを最大化するためにボードのクィーバー(「矢筒」の意だが、ボードスポーツの場合は所有するボードラインナップを指す)をほしがるでしょう。手前味噌になりますが、AKのアウターウエアはどれも素晴らしく、それらをコレクションすることはクィーバーと同じことが言えます。豊富なラインナップの空いたスペースを埋めるため、超ミニマルで軽量な登山用ウエアを開発しました」
先出のジェフは、KALAUSIが誕生した背景について、このように説明してくれた。
3レイヤー、2レイヤー、ビブパンツ、アノラックなど、あらゆるシチュエーションに対応できるプロダクトを有するため、AKを身にまとっていれば、手つかずのバックカントリーから整備されたゲレンデに至るまで、どこでも快適に滑ることができる。昨今の日本もそうだが、空前のバックカントリーブームだ。スノーシューやスプリットボードを駆使して自分だけのラインを求めて冬山を登る、そういう人も少なくない。
「縫い目を最小限にすることで可動域を最大限に出せるようにし、ライダーのあらゆる動きに対応させることを目指しました。KALAUSI ANORAK(プロトタイプ)は1枚の生地で作られています。AKのクリエイティビティと未来に向けたプロトタイプなのです。このコンセプトはチームとして挑戦の始まりであり、開発を通じて、新しいコレクション全体に見られるキネティックコンストラクションへと発展しました」
さらっと“1枚”とジェフは言うが、ほかのAKのジャケットでは何枚の生地が使われているかを知れば、間違いなく衝撃が走る。およそ“30枚”だ。
キネティックコンストラクションとは、運動のために最適に作られた衣服の構造のこと。スノーボードにおける身体の動きに合わせて生地と形をデザインし、身体全体を前後左右どのように動かしても生地がその動きに連動するよう3D成型しているので、ウエアを身にまとっていることを忘れるほど自然に動けるのだ。そのため、これまで着ていたどのブランドのスノーボードウエアともまったく異なる、別次元の着心地を実現している。
こうした革新的な構造技術を生み出すことに成功したBURTON。ジェフが言うように縫い目を最小限にした結果、軽量でかさばることなく、最大限の可動域を実現した。この技術革新をもってして商品化されたのが、次章で紹介するKALAUSI GORE-TEX 3L JACKETとMEN’S KALAUSI GORE-TEX BIB PANTSだ。
“未来のウエア”を体感せよ
1枚の生地で作られているKALAUSI ANORAKは、クルマでいうところのコンセプトカー。自動車メーカーが今後のデザインや技術の方向性を表現するため、モーターショーなどで展示することを目的として製造している、あれだ。なので、購入することはできない。
当然、KALAUSI ANORAKも非売品。しかし、そのコンセプトに準じた超高機能ウエアを今シーズン、本記事を読んでくれているあなたも身にまとうことができるのだ。前述した2モデルについて、ジェフにたっぷりと語ってもらおう。
「KALAUSI GORE-TEX 3L JACKETは、登山に特化しています。機能面では、ボディ中央にポケットがあり、スナップを留めて短くすることも、スナップを外して長くすることもできるため、中に入れるものに応じて配置を選ぶことができます。なので移動中、アイテムの跳ね返りを軽減することができるのです。
開発におよそ1年かかったもっともエキサイティングな機能のひとつとして、新しいジッパープーラー(引き手)があります。従来のものと比べて、グローブをしたままでも非常に使いやすくなっています。CFジッパーにはグロープをつけた状態でも機能しやすくするためのタブがあり、ジッパーはアシンメトリーにあしらいました。さらにダンプポケット、非対称なふたつのチェストポケットを配しています。これらの機能は、このウエアのミニマルな性質に合わせて考え抜かれたものであり、そのようにデザインされているのです」
さらに、KALAUSI GORE-TEX C-KNIT BIB PANTSについては、次のように教えてくれた。
「ビブのアッパーには、AK MINIMALIST SHORTS(軽量でストレッチが効いたテクニカルショーツ)と同じくPERTEX素材を使用しています。登るときに必要とされる高い運動量を考慮して、伸縮性と通気性の必要性に基づき、ショーツ用に多くの時間をかけてテストしました。その結果、ビブ用に移行したときに素晴らしい機能性を発揮してくれるのです。このアッパーにより重量を分散させることに成功し、全体的な快適性が向上しました。
また裾口は、AKとして初めて採用したジョガースタイルになっており、パンツのその部分をシンプルにしています。HWポケットにはふたつのスライダーが装備され、ヒップベルトを使用しているか否かにかかわらず、2方向で開閉できるようにしました」
これらの説明から、キネティックコンストラクションで作られた革新的ウエア、KALAUSIがいかに優れているかがおわかりいただけるだろう。これらのジャケット、パンツともに、使用されている生地はたったの2枚。前章の話を踏まえると、身体の自由度が想像できるのではないか。
高価格帯のプロダクトだが、試着するのはフリーだ。ぜひ、お試しいただきたい。
ダニー、KALAUSIってぶっちゃけどうなの?
ここまでお読みいただいたパウダースノーを愛するスノーボーダーのみなさんは、今すぐ試着したい衝動に駆られていることだろう。しかしその前に、誰よりもメソッド・トゥイークが美しいからこそウエアの伸縮性にも強いこだわりを持っているに違いない、冒頭で紹介したダニーに聞いてみた。KALUASIってぶっちゃけどうなの?
「昨シーズンの春、KALAUSIコレクションを着る機会がありました。鮮やかなカラーリングで撮影に最適だし、登って滑るために特別にデザインされたジャケットとビブパンツはクールですね。
ハイクアップするときは快適性がとても重要。プロスノーボーダーにとって、体温調節は大切な一日の大部分を占めています。暑くても寒くても、ハイクアップ時に通気性が優れているのはうれしいかぎりです。
ライディング中も同様に、快適さが大切です。ターンをしたり、グラブを微調整したり、フラットな着地で踏ん張ったりと、操作性を必要とするときにストレッチや関節運動を行えることが重要なカギを握っています。
オレが注力し始めているバックカントリーライディングのためにデザインされたラインに、新鮮な機能が装備されていることは素晴らしいですね。パンツの裾にジョガースタイルを採用したのは、スライスしたパン以来の最高傑作だよ(笑)」
ダニーがオチとして表現している“スライスしたパン”とは、1928年に販売された、現在では当たり前の機械でスライスされパンのこと。わずか5年でアメリカのほとんどのパンがスライスされたものになったことを受けて、「スライスされたパン以来最高なもの」という人気の慣用句が生まれた。ダニーがこう表現するほど、AKにジョガースタイルが採用されたことは画期的だということ。
ボーナス片手に、全国に点在するBURTON FLAGSHIP STOREに足を運んでみては?