BACKSIDE (バックサイド)

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スノーボード業界を形成したパイオニアブランド「BURTON」が描くシーンの未来

2023.01.25

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環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる「B CORP(B CORPORATION)」をご存知だろうか。アメリカの非営利団体「B LAB」による国際認証制度であり、その称号をBURTON(バートン)は2019年にスノーボードメーカーとして初めて獲得した。
 
ダイバーシティ(多様性)という言葉が叫ばれ、世界中であらゆる社会問題が発生している時代だからこそ、会社の利益ばかりでなく社会貢献を促す企業を増やしていくための仕組みでもある。雪を必要とするスノーボードカンパニーだからこそ地球環境問題と真摯に向き合い、工場のスタッフからライダーに至るまでBURTONに関わるすべての人々を守り、そして、スノーボードシーンの明るい未来に向けて明確なビジョンを描く。
 
BURTONがB CORPを獲得した背景を紐解くことで、スノーボードシーンの未来の一端が見えてくるのではないか。ここでは、米バーモント州バーリントンに本社を置くBURTONのパーパス(企業としての存在意義)に迫るべく、ふたりのキーパーソンにインタビューした。

利益よりも大切なもの。それは地球と関わるすべての人々を守ること

BACKSIDE(以下BS): BURTONは2025年までにクライメートポジティブ(温室効果ガスの排出量よりも削減する量を多くすること)達成を目指しています。気候変動という見えない敵と戦っているだけに、忍耐や根気強さが必要になると思いますが、これらに立ち向かうためにBURTONはどのように社内の士気を高め、目標達成に向けてモチベーションを維持しているのでしょうか?
 
エミリー・フォスター(以下EF): 実のところ私たちは、気候変動が目に見えない脅威だとは考えていません。気候変動の兆候は私たちの身近にあり、特に最前線にいるコミュニティがもっとも深刻にとらえているのは、すでに壊滅的な影響を及ぼしているということ。もはや遠い脅威ではなく、今まさにその影響を感じていることなのです。BURTONはこの緊急性を理解しており、解決策の一端を担いたいと考えています。私たちの目標は野心的ですが、みなが前進することに意欲を燃やしているのです。
 
BS: プロダクト製作においてCO2の排出量を削減することが重要課題かと思いますが、よりよい製品づくりとは相反する部分があるのではないでしょうか。環境配慮型の素材を用いて最高級プロダクトを作るうえで、その難しさや苦労している点などがあれば教えてください。
 
EF: プロダクトの品質や性能を犠牲にすることなく、環境への影響を改善するために常に努力しています。その双方に対するお客様の期待感が増していることも十分に理解しています。私たちはどの分野に対してもっとも影響を与えるのかについて知り、それに向けて努力することから始まります。私たちが排出している二酸化炭素の90%以上は、原材料の調達や製造、流通に至るまでのサプライチェーンに起因しています。ですが、革新的なエコマテリアル(環境を意識した材料)に投資し、サプライヤーと協力してエネルギー効率を高め、再生可能エネルギーに切り替えることで、この課題に取り組むことができるのです。
 

Craigs

プロトタイプ開発ラボ「CRAIGS」でも二酸化炭素の排出量を減らす努力は怠らない

 
BS: プロダクトのライフタイム保証は、地球環境にとって素晴らしい取り組みだと思います。しかし、ニューモデルが売りづらくなることにもつながるでしょう。短期的な視点でみればビジネスとして利益を生み出すことが難しくなると推測しますが、BURTONは今後、このバランスをどのようにとっていくつもりですか?
 
EF: 正直なところ、これは非上場企業のよさでもあると言えます。私たちは常に、成功とは利益以上のものだと考えてきました。その成功とは、社員やスポーツ、そして、私たちが誇る素晴らしいプロダクトに関わることです。BURTONのプロダクトを少しでも長く使い続けたいと思うのは、それが地球にとってよりよいことであり、私たちの製品に投資してくれる人々にとって正しい選択だからです。そのために、私たちは長く使い続けることが可能なプロダクトを設計しています。どんなに優れた素材や部品だったとしても劣化は避けられないため、手厚い保証制度でそれらをバックアップするのです。さらに一歩踏み込んで、保証対象製品の50%以上を交換ではなく、修理で賄うことを目指しています。また、スペアパーツの販売を行うことで、お客様自身の手で修理できるように促しています。短期的な目先の利益よりも、長い時間をかけてお客様との信頼関係を構築してくことのほうが大切だと考えているのです。
 
BS: 2019年、BURTONはB CORP認証を取得しました。社員の意識や雰囲気など、会社はどのように変化したのでしょうか。
 
EF: B CORPの認証は、BURTONが根っからの目的志向の企業であることを、社員と世の中に示すものだと考えています。B CORPの認証を受けるには、「人」「地球」「利益」という“トリプルボトムライン”での成功が必要なのですが、これはBURTONが常に行ってきたことなのです。私たちはブランドが大きな成功を収めながら、責任ある行動をとることができるのだと証明したいと考えています。これはスタッフにとっても大きな誇りであり、このことが新たな才能の獲得にもつながるでしょう。この認証は、私たちのビジネスとオペレーションのあらゆる側面をカバーしているので、企業として全体的な健全性をチェックし、盲点がないことを確認するための素晴らしい手段なのです。また、この高い基準が設けられているからこそ、公正な報酬、環境への影響、正義、多様性、包括性などをめぐる将来の野心的な目標を設定するうえでも役立っています。B CORP認証を維持することは、私たちが正しい方向に向かっているのだと確認するうえで非常に重要なのです。

 

Emily Foster

エミリー・フォスター
環境・社会インパクト担当/シニア・マネージャー

 


世代・性別・人種を問わずスノーボードに“居場所”を作る

BS: Burton.comに書かれているチームライダーやアンバサダーにとっての「WE RIDE TOGETHER」を拝読していると、「スノーボード=人生」と読み解けます。スノーボードを通じてコミュニティが生まれ、フリースタイルを通じて自由を求め、そこで得られた経験をシェアすることにより、人間力が高まっていくと考えます。学校や会社など一般社会では学ぶことができない、横乗りカルチャーが人々のライフスタイルに与える影響について、BURTONはどのように考えていますか?
 
アシュリー・ラポルト(以下AL): “STANDING SIDEWAYS(横乗り)”には、実に多くのことが含まれています。身体を動かし、自らを追い込むことで自信につながり、そして、人々とつながることです。STANDING SIDEWAYSを愛する人々が世界中に集まっている──これには理由があるのです。
 
BS: 「US OPEN」から「MYSTERY SERIES」に移行したことは、ライディングスキルに関係なく全スノーボーダーが一堂に会する場を作りたいという思いであることは理解できます。また、全スノーボーダーの共通項である「ターン」を題材とした動画を展開するなど、御社の取り組みにはとても賛同できますが、レベルやジャンルが多様化している現在のシーンを踏まえ、今後、スノーボーダーたちとどのようなコミュニケーションをとっていくことが必要だと考えていますか?
 
AL: その根底にあるものとは、このスポーツがすべての人々にとって歓迎されるもので、さらに安全な場所であることです。私たちはそうした歓迎を受けるスポーツであるために努め、安全な空間を作り出すブランドになるべく歩み続けています。MYSTERY SERIESが、その一環であることは間違いありません。アンバサダーやプロチーム、広告にBIPOC(黒人・先住民・有色人種を指す言葉)ライダーを起用し、そうした表現を増やしている事実も好例です。私たちは、すべての人がスノーボードの中に自分自身の居場所を見出すことができ、このスポーツがすべての人々のために存在するのだということを知ってほしいのです。
 

YukaFujimori

スノーボードをするうえで国籍など関係ない。昨今の日本人ライダーたちの活躍が、それを証明している
rider: Yuka Fujimori photo: KentaRAWmatsuda

 
BS: 日本のような単一民族の人間からすると理解が難しいのですが、人種や性別の垣根を越えて開かれたコミュニティを作るためには何が必要でしょうか。そのうえで、どのようなコミュニティを形成していきたいですか?
 
AL: 繰り返しになりますが、このスポーツがすべての人々にとって歓迎され、安全な居場所にすることです。私たちは誰もが横向きに立つスリルを味わうことができるはずだと信じていますし、一部の人々にとって、それを難しくする障壁があることも知っています。そうした障壁を理解したうえで、私たちの資源を投入することでそれらを打破し、より多くの人々がスノーボードに参加できるようになるまで、我々が歩みを止めることはありません。
 
BS: 子供たちにスノーボードを体験する機会提供を行っている「CHILL」が誕生してから、四半世紀以上が経ちました。横乗り文化が人間形成に寄与していることが証明されている事例だと思いますが、BURTONにとってCHILLの存在をどのように考えていますか?
 
AL: BURTONは、スノーボードというスポーツに多くの人々を迎え入れているCHILLをお手本にしています。CHILLは各地域の青少年支援団体と協力することで、スノーボードの体験を通じて恩恵を受けることができる子供たちに手を差し伸べることができるのです。また、スノーボードへのアクセス(ギアやリフト券の購入など)を無料で提供することで、その障壁を取り除くことにも努めています。CHILLはプログラム開始以来、3万人以上の子供たちにサービスを提供し、年間約3千人の子供たちと関わってきました。
 
BS: BURTONで働き、スノーボードを生業としているスタッフたちも、横乗り文化から好影響を受けていると思います。BURTONで働いていたからこそ成長できたなど、何かエピソードがあれば教えてください。
 
AL: 子供の頃からスノーボードに乗っていて、今でも好きなことのひとつです。滑っているときは、そのことだけに没頭できる。その瞬間が好きなんです。例えば、滑りながらマルチタスクを行うことやスマートフォンを操作することはできません。ライディングだけに集中し、ラインを決め、自分の身体がどのように動いているのかに注意を払う。これほど素晴らしいことはありません。パーパスおよびインパクト担当のヴァイスプレジデントとして、私の本業はより多くの人々をライディングへと誘うことです。それを生業にできていることが、本当に幸運で光栄なことだと思っています。
 
BS: BURTONの一員として誇りに感じることを教えてください。
 
AL: パーパスを達成するためのリソースとフォーカスをしっかりと持っている会社の一員であることを、とても誇りに思っています。私たちは、この仕事にフォーカスした完全なチームを有しており、十分な資金も獲得しています。つまり、気候変動への貢献に取り組み、人々と地球にとってよりよいビジネスの在り方を模索し、スノーボードというスポーツにもっと多くの人を巻き込んでいくための体制が整っているのです。やるべきことはたくさんありますが、このように強力なチームとインパクトを与えることに情熱を注いでいる会社で仕事ができることに、とても興奮しています。

Ashley Laporte

アシュリー・ラポルト
パーパス・インパクト担当/ヴァイスプレジデント

 

riders: Mikey Rencz(eye-catch image)
photo: Colin Adair (eye-catch image)
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)

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