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“雪山を自由に滑る”無限の可能性をより引き出すボードたち。Burton「FAMILY TREE」
2022.01.14
プロスノーボーダーであれば、その主戦場はバックカントリーになるだろう。パウダースノーが敷き詰められた手つかずの大斜面には、スパインやクリフ、マッシュなどあらゆる自然地形がヒットポイントとして点在する。そこで華麗なトリックを繰り出すのだ。
一般スノーボーダーに置き換えて考えても、ゲレンデ内は圧雪されているもののあらゆる斜面が存在し、壁や斜度変化の起伏などを利用しながら自由に滑る。もちろん、パウダースノーが残された非圧雪コースもあり、サイドカントリーやバックカントリーにチャレンジすることも含め、これこそがフリーライディングの醍醐味であると言えよう。
Burton(バートン)から2012-13シーズンに登場した「FAMILY TREE」シリーズは、まさにフリーライディングの無限の可能性に対応するべく生み出されている。あらゆる斜面や地形が織り成すヒットポイントで繰り出される千差万別のライディングスタイルをさらに引き出すため、毎年新たなシェイプが登場。カービングターンにこだわったシェイプ、高速域での動きやすさを追求したシェイプ、フリースタイルなアクションをサポートするシェイプ、乗りやすさを重視したシェイプ……など、フリーライディングをカテゴライズすることは不可能に近く、それらのライディングスタイルは枚挙にいとまがない。
だからこそ、ゼロイチで誕生するボードもあれば、コンセプトやテクノロジーが脈々と受け継がれながら進化していくことで生まれ変わるボードもある。そうしたフリーライディングをひとつの家族として捉え、家系図のように枝分かれしていく。それがFAMILY TREEである。
パウダースノーでフリースタイルアクションを行うためのボード
パウダースノーでフリースタイルアクションを行うためのボード
Burtonでシニアプロダクトラインマーチャンダイザーのハードグッズを担当するレスリー・ベッツ氏は、FAMILY TREEについて次のように語る。
「“FAMILY TREEのデザインにルールはない”と私たちは謳っていますが、それは誰と一緒に開発するのか、またはコンセプトはどこから来ているのかが要点となります。ひとつだけ大切にしているルールは、このボードたちはフリーライディングに特化したものであること。私たちが定義するフリーライディングとは、開けた林の中、幅広くオープンなボウル地形、スティープなクーロワール、テクニカルなラインなど、そうしたエリアにパウダースノーが降り積もった場所を滑ることを意味しています。FAMILY TREEとは、どのような地形でも滑ることを可能にする、フリーライディングにフォーカスしたボードたちを指します」
大前提としてパウダースノーを滑ることに特化しているわけだが、いわゆるパウダーボードではない。パウダースノーでフリースタイルアクションを行うためのボードなのだ。
そうしたコンセプトを具現化する一本として「POW WRENCH」が挙げられる。ショート&ワイドなシェイプにしっかりとしたテーパーが入っているため十二分な浮力が得られ、太さを感じさせないターン性能の高さが特徴だ。
そのうえで、パウダー専用ボードではなくフリースタイル色が強い。テーパーが入っていながらもテールまでしっかりエッジを使えること、さらに極端にセットバックされていないためセンターに乗ってボードをコントロールできることが、その理由だろう。降旗由紀が愛用している事実が、ディープパウダーでフリースタイルな動きに適していることを裏づけてくれる。
一本一本の個性が際立つFAMILY TREEのボードたち
一本一本の個性が際立つFAMILY TREEのボードたち
ベッツ氏が言うように、各ボードにはチームライダーはもちろん、アンバサダーやインフルエンサー、はたまたユーザーの意見をもとに開発が推し進められている。ダニー・デイビスがビッグマウンテンを滑るために開発した「STRAIGHT CHUTER」、グルーミングバーンでもカービングターンの切れを求めた竹内正則が監修する「SENSEI」、そしてここで紹介する「WAVE TRACER」は女子ハーフパイプ界を牽引してきたケリー・クラークが開発に携わっている。
2002年のソルトレイク五輪ハーフパイプで金メダルを獲得するなど、2018年に競技生活から引退するまで78回表彰台に立ったケリーは、その重圧から解放され「スノーボードのさらなる可能性を探る時間が増える」として女性用フリーライディングボード「RISE」を共同CEOであるドナ・カーペンター氏とともに開発。2019年に世界で50本のみ限定販売を行った。そのRISEが原型となって誕生したWAVE TRACERは、性別を超えてプレイフルなフリーライディングボードとしてFAMILY TREEに存在している。
二酸化炭素の排出量を削減するための素材選びを慎重に行うなど、当時としてはBURTON史上もっともサステナブルなボードがRISEだった。その原点には、フリーライディングの無限の可能性を引き出すために幾多のチャレンジがFAMILY TREEの開発において行われているからにほかならない。
「ボードカテゴリーにおけるサステナブルな取り組みはすべて、FAMILY TREEから始まりました。FAMILY TREEを基盤としていろいろなコンセプトを試みることができます。そうした中で、リサイクル可能・再生可能なボードバッグ、Super Sap®エポキシ樹脂やReRez®などが、すべての商品に使用されるようになりました」とは、ベッツ氏の談。
ここまで述べてきたように、FAMILY TREEは型にはまることがない多種多様なボードの集合体である。だからこそ、どんなボードを作るのかというコンセプトが重要なのだとベッツ氏は説明してくれたが、次に綴るユニークなエピソードを教えてくれた。
「ビッグマウンテンにアクセスするヘリコプターやキャットを操縦するバックカントリーガイドたちと開発を進めた『GATE KEEPER』というボードが、これまでで一番印象に残っています。開発中に彼らが要望してきたのは、どんなコンディションでも滑ることができるボード。すなわち、簡単に滑ることができるボードがほしいということです。その理由は、ガイド中にどうしてもお客様が自分のギアとコンディションが合わずに、ガイドのギアと交換する必要性に迫られる場面があるから、ということでした。そのフィードバックをもとにして、最大の浮力を得ることができ、そしてターンが容易にできるボードを作りました。ただし、そのボードはスティープな斜面や険しい地形でのみ力を発揮するものです」
こうした現場の視点から、ビッグターン時にその性能が最大限に活かされるGATE KEEPERが生み出され、そのDNAは2017-18モデルの「DUMP TRUCK」に受け継がれていったのだ。
パウダーライディングに新感覚を提供する3Dシェイプボード
パウダーライディングに新感覚を提供する3Dシェイプボード
こうして決められたゴールや明確な目標に向かっていくのではなく、フリーライディング同様に無限の可能性に導かれるようにして進化していくFAMILY TREE。「3Dシェイプの開発がとりわけ進んでいますね」とベッツ氏が語るように、2020-21シーズンから登場した3Dプロジェクトにも注目したい。
その中でも特筆すべきは「3D DEEP DAYS」だ。チームライダーの協力によりライディングテストを繰り返し、シェイプとデザインの調整を重ねてきた。モダンなサーフボードのデザインにインスパイアされた立体形状のノーズ&テールが、パウダーライディングの際に新感覚を提供。立体的な溝をパウダースノーが流れることで、深雪でも湿雪でも安定感を保ち、滑り手の力を逃すことなく、新次元のレスポンスとエッジコントロールをもたらすのだ。
フリーライディングがより楽しいと感じられるボードを開発するために、新しいモデルのアイデアを創出し、チームライダーからユーザーに至るまでライディングスキルを問わず、多くの声に耳を傾ける。そこにもっとも時間をかけて、完成に至るまで何度もシェーピングが繰り返されたプロトタイプを少なくとも40時間以上かけて雪上でテストする。
こうして生み出されるFAMILY TREEのボードたち。あなたのスノーボードライフをこれまで以上に充実させてくれる一本が、必ず見つかるはずだ。