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スケートボードを通じて進化した平野歩夢の滑りを支えるBurtonの足回りに迫る
2021.10.29
そのため、歩夢のイメージを忠実に再現できるプロダクトの存在が欠かせない。ハイエアはもちろん、高回転スピンが求められるハーフパイプだけに、テイクオフ時のフレックスや回転力を生み出すトーションなどボードのテクノロジーが重要であることは言うまでもないが、そうしたアクションの源である足まわりの機能性はさらに大事なのだ。
足型に馴染みながらクッション性はヘタらない高級ブーツ
足型に馴染みながらクッション性はヘタらない高級ブーツ
歩夢が愛用しているブーツは、Burton(バートン)の「ION LEATHER」である。高級感漂うルックスもさることながら、機能性に定評あるIONだけに、毎シーズン完売必至のプロダクトだ。
「ハーフパイプを滑る機会が多いので、しっかりとホールドしてくれるION LEATHERは気に入っています。しばらく履き込んでいると、レザーなので足型に馴染んでフィット感が増すのがいいですね。パイプの練習で一日に5~6時間ハイクアップしても、足の裏が疲れるようなことはありません」
革の繊維がほぐれることで、個々の足に合わせるようにフィットしていく。幼少期から周囲が滑り終えても最後まで練習し続ける努力家だからこそ、その過程も早いのだろう。そして、疲労軽減の効果を生むクッション性の高さは歩夢にとって重要な要素だ。密度の異なる2種類のEVAを使用することで足を自然なポジションに導き、快適性が向上することで疲労を軽減させる効果にもつながっている。
“柔らかさ”と“素早さ”を兼備する究極の組み合わせ
“柔らかさ”と“素早さ”を兼備する究極の組み合わせ
そして、そのION LEATHERを覆うバインディングは「MALAVITA EST」を使用。こちらのベースにもブーツ同様のクッション性を発揮するAutoCANT SensoryBEDクッショニングシステムを採用している。これらの組み合わせを歩夢は次のように評価した。
「スノーボードはスケートボードと比べて、エアの滞空時間も高さも数倍になります。着地時の衝撃も大きいし、着地後のボードコントロール性もシビアに求められる。IONとMALAVITAは必要なクッション性を備えつつ、力を入れたときにしっかりとその動きをボードに伝えてくれるレスポンス力を持っているので、安心して滑りに集中できますね」
ブーツをサポートするサスペンションの効果により素早いレスポンスを提供するヒールハンモック、ブーツのツマ先をしっかりと覆うトウストラップにはスーパーグリップキャップストラップ2.0を採用。さらにアンクル部には、非対称のパッドとスパインがブーツに密着するように包み込むハンモックストラップを搭載。これら三位一体の相乗効果により、シームレスなフィット感と快適性をもたらし、柔らかさと素早さという相反する要素を兼ね備えているのだ
スケートボードの動きが雪上で再現可能に
スケートボードの動きが雪上で再現可能に
平昌五輪を終えた2018年のオフシーズンからスケートボード主体で活動してきたため、絶対的な練習不足により、北京五輪を目指すうえで苦境に立たされていると冒頭で述べた。スノーボードの大会に出場していなかったため、東京五輪の日本代表が決定する重要なスケートボードの一戦を目前にして、SAJ(全日本スキー連盟)が主催する全日本選手権で好成績を残すことが余儀なくされた。なぜなら、オリンピックに出場するためにはW杯でポイントを稼ぐ必要があり、それに派遣される資格を得なければならなかったからだ。
そのため2020年秋に雪上復帰を果たし、今年4月の全日本選手権で2位となりW杯への派遣資格を獲得。わずか半年の調整だったわけだが、その大会を現場で観ていて、成績以上に驚かされる場面があった。例年よりも融雪が早くハーフパイプの状況は芳しくなかったのだが、フロントサイド・ダブルコーク1260と1440の着地で大きくバランスを崩すも、減速させることなく次のヒットにつなげ、最後に繰り出したバックサイド900は大きくボトム側に弾かれるも見事にストンプしたのだ。完成度という点では評価に値しないわけだが、転倒することなくハイエアでつなぐことができた圧巻のリカバリー力に驚嘆させられた。
「スケートボードの場合はちょっとしたズレによって乗る位置も変わってくるし、膝の曲げ方などがスノーボードに比べると全然違うから、そういう意味ではこれまでよりもいろいろな状態で乗れるようになっています。たとえば、前に詰まったとしても調節できるというか」
足が固定されているがゆえに自由度が低かったスノーボードの乗り方が、スケートボードを通じて進化したということだ。そして、その進化をさらに促すテクノロジーが、バインディングに搭載されているHINGE。2013モデルから搭載されている機能だが、ベースプレートから独立したヒールカップとを結ぶ蝶番の役割を担っており、この側面部分がほどよくフレックスするのだ。
「硬めのバインディングではなく、ミッドフレックスのMARAVITAとIONを組み合わせることでライディング中に少しだけ“遊び”ができる。そこが自分に合っていますね。これ以上遊びがなかったり、反対にありすぎると、US OPENクラスのハーフパイプでは理想のラインが取りづらくなります」
やや硬めのフレックスを誇るION LEATHERと、ミッドフレックスに位置づけられるMARAVITAとの組合わせにHINGEの効果が相まって、歩夢のしなやかでありながら爆発力あるエアが生み出されるのだ。まさに唯一無二のライディングスタイルである。
一流は道具を大切にする
一流は道具を大切にする
さらに特筆すべきは、歩夢はすべての道具を大切に使うということ。与えられた新しいプロダクトをブランドのPRのために使用するのが契約ライダーの役割だが、MARAVITAに関して言えば、ストラップはいまだに昨シーズンのものを愛用している。語弊を恐れずに言えば、歩夢クラスのライダーになればプロダクトは使い放題だろう。しかし、取っ替え引っ替えということはなく、使い込んで馴染んだものに愛着が湧くそうだ。
「でも何よりも、MARAVITAは見た目がカッコいいし、ION LEATHERのデザインは特に気に入っています。履き込むと風合いが変わっていくので同じモデルでも人とかぶらないというか、オリジナルの一足に仕上がりますよ」