
CREW
長野五輪4位&TOYOTA BIG AIR初代王者のファビアン・ローラーと一緒に飛んだ「BACKSIDE SESSION #20」@栂池マウンテンリゾート
2025.03.24
「See you soon in Japan」というDMが弊メディアのInstagramアカウントに届いたのが、昨年11月下旬。「本当にやるのか?」と半信半疑のまま、話は進んでいった。1980年代にスケートボードとBMXの情報誌「MOVIN’ON MAGAZINE」を手掛けるなど日本に横乗りシーンを築き、東京ドームで行われていた国際大会「X-TRAIL JAM」のヘッドジャッジを務めるなど活躍、現在はJSBA(日本スノーボード協会)の国際委員委員長という肩書きをもつ石原繁さんから、「2月にファビアンが日本に来るんだよね。なんかできないかな?」という話をいただいたのがキッカケだった。そう、タイトルにも綴っているように、長野五輪ハーフパイプ4位、TOYOTA BIG AIR(以下、TBA)の第1回大会で優勝するなど、コンペティションを中心に活躍していたファビアン・ローラーと、弊メディアの読者コミュニティ「BACKSIDE CREW」とのセッションイベント「BACKSIDE SESSION」が実現したのだ。

スイスからやって来たファビアン(右)と息子・ジェレミーとのセッションが実現
2月中旬、長野・栂池マウンテンリゾートに足を運ぶと、そこにはファビアンと息子のジェレミー、繁さんの姿があった。そして、続々とFRESHFISH(有料会員)のメンバーたちも集合。冨内俊卓(トシ)さんは、会うや否や感極まったようで涙を流し、小林良和(コバちゃん)さんは昔ファビアンのシグネチャーに乗っていたことがあるようでサインを求め、ファビアンが長きに渡って搭乗しているNITRO(ナイトロ)信者である豊島雄樹(トヨ)さんも興奮を抑えられない様子。簡単に自己紹介を済ますと、早速ゴンドラリフト「イヴ」に乗り込んだ。

最初は緊張しながらも自己紹介するFRESHFISHメンバーたち

本セッションの仕掛け人である石原繁さん(右)
節目となる20回目の開催となったBACKSIDE SESSION当日は、ちょうど寒波の谷間。気温も高めで、SAJ(全日本スキー連盟)全日本ジュニア選手権大会のビッグエアが行われていた。まずは足慣らしということで、トップ・トゥ・ボトムでグルーマーを流す。13歳のジェレミーは高速でバターしまくり、ファビアンはサイドヒットを見つけては当て込む。親子でシンクロするシーンも度々あり、その後ろをFRESHFISHのメンバーたちが追いかける構図だった。

父の背中を追いながらジェレミーは上手くなったのだろう

セッション序盤から息が合っていた
唯一、ファビアンのことを知らなかった30代前半のノブは遅れていたのだが、ちょうどボトムまで下りたところでタイミングよく合流。ここからは、大会が行われているため「TG PARK」の一部でセッションすることになった。贅沢にも、トシとトヨとノブはファビアンとのコラボジャンプを実現。全員英語は苦手なようだが、ファビアンも親身になって耳を傾け、タイミングを図りながら画を残そうとトライしていた。



トシ(上)、トヨ(中)、ノブ(下)の3人はファビアンとの空中遊泳を楽しんだ
ちなにに筆者(編集長)は、2週間前の「BACKSIDE SESSION #19」で飛びすぎてしまい、古傷のヒザが悲鳴をあげていたため、ジャンプは断念。iPhoneグラファーとしてコラボジャンプの追い撮りに専念していた。
ジャンプセッションを終えると、カービングターンを得意とするコバちゃんがファビアンとのコラボターンで共演するひと幕も。こちらのリクエストに対して気持ちよく快諾してくれ、むしろ、いろいろなアイデアを出してくれるファビアンの姿を見ていると、地元スイスではTV番組を持つ有名人でありスノーボードシーンのレジェンドでありながらも、その物腰の柔らかい彼の人間性に惹かれていった。

湿雪だったが、切れ味鋭いカービングターンを刻むファビアン&コバちゃん

ファビアンとリフト上でいろいろな言葉を交わした
この日はパーク日和ということで、ハンの木第3クワッドリフトを利用して、林道コースのナチュラルヒットに当て込み、落ち系のジャンプを飛び、TG PARKを流すというルーティンを繰り返した。ファビアンは冒頭で述べたリザルトにあるように、ハーフパイプとビッグエアのイメージはあったが、レールも巧みに攻略。ジャンプは大小問わずすべてヒットし、ウェーブに近いポコジャンでも3連続フロントフリップを繰り出すなど、終始、CREWへのファンサービスに徹してくれていた。

想像力次第で遊び方は自由。これもナチュラルヒット(笑)

縦横無尽にゲレンデを駆け巡りながらダウンヒットにも当て込む

とにかく楽しそうに滑っている姿が印象的だった

ポコジャンだろうが全力で遊ぶファビアン

セッションも中盤を迎えると、FRESHFISHメンバーたちとも打ち解けていた
そして、最後は親子でのコラボジャンプ。ともにグーフィーフッターの彼らは、息の合ったエアを一発で繰り出したのだった。

息が合いすぎた親子のコンビネーション。ライディングスタイルからも良好な親子関係がにじみ出ている

FRESHFISHメンバーたちの表情を見れば、このセッションがいかに充実していたのかがわかるはずだ
今回のセッション、FRESHFISHのメンバーたちはどのように感じたのか。

「ファビアンに対してクールな印象を持っていましたが、実際にはすごくフレンドリーで、会えた瞬間に男泣きしてしまいました(笑)。ファビアンのほうから「誰か一緒にジャンプする? トシ、飛ぼう」って提案してくれたことは最幸でした。息子のジェレミーの上手さには驚かされましたね。TG PARKは無理なく入れるパークだったのでとてもよかったです。普通にスノーボードしているだけでは味わえない経験をBACKSDIEは可能にしてくれる!」──トシ

「はじめはピリピリした感じなのかと少し不安がありましたが、最初から気さくに話しかけてくれ、いろいろなスノーボードの話ができてうれしかったです。やはりカッコいい!が第一印象でしたが、パークやカービングなどすべてのジャンルを楽しんでいて、本当にフリースタイラーだと感じました。栂池はとても広く、初心者から上級者まで楽しめるゲレンデでした。セッションにも最適で、どんなスタイルのスノーボーダーにもオススメできますね」──コバちゃん

「ファビアンのことは今回のセッションを通じて知りました。輝かしいリザルトをお持ちの方ですし、海外からのゲストということでかなり緊張しましたが、とても気さくで素晴らしい方でした。実際にセッションが始まると、誰よりもフリースタイルなライディングを魅せていて、改めて年齢を言い訳にできないと痛感させられましたし、僕ももっと攻めなければならないと思い知らされました。季節外れの暖かさでしたが、パークセッションにはベストでした」──ノブ

「ファビアンはTBAで一世を風靡したCAB900を操る世界トップライダーのひとり。当時、札幌にいた僕はファビアン旋風の渦中にいました。実際に会ってみると、なんて気さくでいい人! ファビアンと一緒にジャンプできたこと、また、マックス・プロツェネダーやセス・ニアリーなど往年のNITROライダーたちの近況を聞けたことは、当時からNITROフリークの僕にとっては感慨深い出来事でした。栂池は相変わらず楽しいゲレンデですね」──トヨ
冒頭で述べたように、全日本ジュニア選手権のビッグエアが行われており、ジェレミーと同世代の日本人たちが高回転スピンを巧みに操るのを尻目にパークでのセッションに興じていた一行。ジェレミーはスイスチームにスカウトされるほどの腕前を持つのだが、コンテストには興味がないそうだ。

フリーライディング、ジャンプ、ジブ、バターと、何をやらせても上手かったジェレミー
父・ファビアンも同様の考えで、スピンの回転数を積み上げる練習ばかりするよりも、フリーライディングやパウダーライディングも含めたスノーボードのすべてを楽しむことが大切なんだ、と語っていた。数々の輝かしいリザルトを残しており、コンペティターとしてのイメージが強かったため、筆者はファビアンのことをこれまで誤解していたのかもしれない。しかし、ファビアンとセッションさせてもらったことで、その誤解は解けた。彼のライディングスタイルから、フリースタイルスノーボーディングの面白さを改めて再認識することができた有意義な一日となった。
セッションを終えると、ファビアン&ジェレミーのライディング写真がプリントされたサイン入りポスターにFRESHFISHメンバーたちの名前を書いてくれ、直々にプレゼントされた。そして、「ダイスケ、BACKSIDEのステッカーをもらえないか?」とファビアンから聞かれるも手持ちがなくて困っていると、トシがすかさず持っている分をファビアンに手渡してくれた。

わざわざプレゼントを準備してくれていたということ。ありがたすぎる

トシのファインプレー
スノーボード界の重鎮とこの距離感で滑ることができた本セッションは、FRESHFISHメンバーたちにとって一生忘れられない一日になったことだろう。ファビアン&ジェレミー、最高のセッションをありがとう!

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: ZIZO=KAZU
special thanks: Tsugaike Mountain Resort