
CREW
五輪メダリストと妙高ローカルのアテンドでフリースタイルに遊びまくった「BACKSIDE SESSION #19 with CALM & DANG SHADES」@妙高杉ノ原
2025.03.03
読者スノーボーダーのコミュニティ「BACKSIDE CREW」は発足から4シーズン目を迎え、19回目となる“滑ろう会”「BACKSIDE SESSION」はCALM(カーム)& DANG SHADES(ダン シェイディーズ)とのコラボイベントとして開催。2月上旬、言わずと知れたソチ五輪ハーフパイプ銅メダリストの平岡卓と、その卓の相棒であり妙高ローカルの武田誠をゲストライダーに招いて行われた。誠の庭である新潟・妙高杉ノ原でのセッションは、タイトルに綴ったようにこれまででもっともフリースタイルに遊びまくり、ゲレンデの奥深さを存分に味わえるセッションとなった。

ゲストライダーの平岡卓(中)と武田誠(右)

DANG SHADES × BLOTTO × 弊メディアのコラボサングラスをかけてくれているCREWたち。さすが!
まずは、ゲレンデのボトムでライダーたちからの挨拶やCREWの自己紹介を終えると、長蛇の列ができている杉ノ原ゴンドラに乗り込む一行。ゲレンデのトップまで誘ってくれる三田原第3高速リフトが準備中だったので、ライダーたちの提案でダイナミックコースを流すことに。朝イチのグルーミングバーンはエッジが噛みまくり、卓&誠を先頭に気持ちいいビッグターンを刻みながらウォームアップを済ませた。

今シーズンの本州はパウダー率高めなので、朝イチ面ツルのグルーミングバーンが最高だということを再確認
そして、三田原第3高速リフトがオープンするタイミングに合わせて、1,855mの標高を誇るゲレンデのトップを目指す。パウダーデイであればスーパーモーグルコースが埋まってロングパウダーランが楽しめるのだが、この日は天候に恵まれたものの、前日の降雪はなかった。というわけで、地形セッションがスタート。アプローチからはランディングがまったく見えないノールっぽい地形でCREWたちがスマホを構える中、卓は挨拶代わりとばかりにスタイリッシュなインディグラブを披露。このエアを皮切りに、みなの心にフリースタイルの火が灯った。

卓らしさあふれる空中遊泳はCREW全員のスマホに収められことだろう

憧れのオリンピアンとリフトで談笑できるのもBACKSIDE SESSIONの醍醐味
続いて、レギュラーのフロントサイドに位置する壁地形でセッションすることに。長いアプローチから誠がスタイリッシュなノーズグラブを繰り出すと、CREW一同拍手喝采。みながそのアプローチを参考にしながら、思い想いのエアを楽しんだ。CALMを取り扱っているビジュアライズイメージの大野雅幸さんがチームライダーに負けじとノーズグラブを決めると、CREWたちのテンションは最高潮に。

クールなライディングスタイルに加えて笑顔が印象的だった誠

チームライダーだけでなくスタッフも一丸となってセッションを盛り上げる
そうした中、卓は時が止まったかのようなシフティからレイトBS180を繰り出したのだ。アラフィフ世代が多いCREWたちからすると、90年代にノア・サラスネックらが操っていたレイトシフティスピンをビデオで観て育ってきただけに、「おー!」と野太い声が三田原ゾーンにこだましていた。

時空を制する卓のシフティは超絶スタイリッシュ
さらに、ナチュラルヒットでも飛びまくる。誠がスタイリッシュなタックニーのインディグラブで魅せると、卓はまるで猫かのように軽快なバックフリップをあっさりとメイクする。普段から行動をともにしているCALMライダーたちの滑りに、CREWたちはただただ興奮しまくっていた。

誠はオールドスクールな雰囲気を醸し出すエアを繰り出した

卓が繰り出したバックフリップにはCREW一同、雄叫びをあげていた
卓や誠の滑りにもっとも刺激を受けていたのは、初年度からFRESHFISH(有料会員)メンバーとして活動してくれている冨内俊卓(トシ)さん。アラフィフ世代なのだが年齢はただの数字とばかりにバックフリップを放つなど、常に攻める姿勢を崩さない。そのトシの言葉を皮切りに、本セッションをCREWのメンバーたちはどのように感じていたのか。聞いてみた。

後ろに小さく写っているCREWたちに見守られながら、トシは高さのあるシフティを繰り出す
「卓くんは爽やかで大人しい感じでしたが、滑りはめっちゃ上手かった! 誠さんのアテンドのおかげで、これまでの杉ノ原のイメージが180°変わりました。こんなにも楽しいロケーションやキレイな景色、自然を感じながら滑るところがあるんだと思い知らされ、誠さんには感謝しかないです。卓くんが簡単にバックフリップをビタメイクしていたポイントで、僕は撃沈。でも、そのチャレンジに卓くんがグータッチで迎えてくれてうれしかった! 改めて卓くんたちのすごさを実感できました」──トシ

90年代から雪上を駆け抜けてきたリアルスノーボーダー、佐藤潤一(サトジュン)さんは。

ハーフパイプを得意とするサトジュンはキッカーもお手の物
「US OPENの覇者、平岡卓さんと滑れて感動でした。やっぱりパイプライダーは上手い。卓さんの、なんというかマイペースなスタイルで、気負いのない滑りからヒットポイントでの攻めのエア。そのギャップが意外でしたね。武田さんは山をよく知っている。イマドキのストリートスタイルなマウンテンライダーだなぁと感心しました。ふたりとも滑りからスタイルが滲み出ていましたね。朝イチのピステンバーンもウネリがあって、滑っているだけで楽しかった」──サトジュン

現在、ドローンパイロットを目指して修行中の星貴浩(ホッシー)さんは。

ゲレンデクルージング中にさりげなくレイバックを繰り出すホッシーが搭乗するボードは、日本では激レアなFORUM(フォーラム)
「(ゲストライダーの)ふたりともフリーライディングが速い! 卓くんの脱力系だけどスタイルがある滑りが個人的に好きでした。人柄はシャイで温和な感じが、とても親しみを持てましたね。誠くんの滑りはストリート感があってカッコよかった。ジャンプセクションでも飛ぶというよりもバターで抜けていくようなスタイルが、スノーボードを楽しんでいると強く感じられました。今回のセッションを通じて、パークの印象が強かった杉ノ原のイメージがまったく覆されました」──ホッシー

僕(編集長)と同い年で、CREWのご意見番的な存在の岩倉宏徳(イワクラ)さんは。

朝イチから切れ味鋭いカービングターンを刻むイワクラ
「平岡さんはバリバリのパイプ選手で、武田さんは杉ノ原ローカルのリーダーのような印象を抱いていました。実際に会ってみると、ふたりとも玄人ウケするフリースタイラーでしたね。なのに、会話をすると優しい話し方のナイスガイでした(笑)。杉ノ原は妙高を訪れたときは必ず滑るゲレンデでしたが、自然の地形で遊べるゲレンデだと再確認。本セッションのハイライトは、平岡さんと同じポイントでバックフリップ(4分の3回転)にチャレンジしたトシですね。まさにフリースタイルでした(笑)」──イワクラ

「冬スポ!! WINTER SPORTS FESTA」のアンバサダーとして活躍している小林良和(コバちゃん)さんは。

本記事のトップ画像を撮影した杉ノ原の御神木「しなの木」をバックにオーリーを決めるコバちゃん
「イメージよりも気さくに話してくださり、いろいろな会話も楽しむことができました。当たり前ですが、ふたりとも上手い! ウエアの着こなしも滑りのスタイルも、すべてがカッコよかったです。どんな地形でも軽々と技を決めて、一つひとつが強烈でした。さすがオリンピアンだと改めて感じることができました。杉ノ原はバーンのコンディションもよく、ロングランや地形遊びがすごく楽しめました。あまり知らないコースもあったので、また遊びに行こうと思います」──コバちゃん

サトジュン、ホッシー、イワクラ、コバちゃんもトシと同じく、初年度からFRESHFISHメンバーとして活動してくれている。そして、昨シーズンの終わりからFRESHFISHにジョインしてくれた、奇しくも学生時代の後輩(笑)、成瀬岳史(ナル)さん。

シーズン中はバックカントリーばかり滑っているナルは、ゲレンデクルージングをする仲間がほしくてFRESHFISHに加入してくれた
「平岡さんも武田さんも滑りがカッコよく、フリースタイルな感じでとても刺激を受けました。初めて杉ノ原を滑りましたが、今まではスキーヤー向けのゲレンデという印象でした。でも、ライダーたちのアテンドでいろいろなポイントを滑ることができ、その印象は覆されました。フリースタイルに楽しめる体験ができたので、ライダーの方たちに感謝したいです。ライダーやCREWの人たちが楽しみながらジャンプにチャレンジしている雰囲気の中、自分もトライできて楽しかったですね」──ナル

昨シーズンまでは編集スタッフだったが退職し、今はCREWの窓口係を務める西村悠友(ユウト)さんは。

レールの法面にレイバックで当て込むユウト
「地形でもパークでも同じチルなテンション感で滑っているおふたりの姿にしびれました! CALMっぽい、同じオーバーサイズの着こなしなのに、滑りはそれぞれ全然違うスタイルが滲み出ていてシブかったです。杉ノ原はジブメインのパークゲレンデだと勝手に思っていたんですが、圧雪の調子がいいのか、ちょうどいい斜度も相まって、CREWのみなさんとのフリーライディングがすごく楽しかったです! ほぼすべてのセッションに参加しているんですが、過去イチフリースタイルでハードだったと思います(笑)」──ユウト

ハードな地形セッションを終えてもなお、これでもかとパークを流す卓&誠と、その仲間たち(CREW)。すでに時計の針は15時を指そうとしていた。この日の深夜にFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ解説の仕事が控えていた僕は1分1秒でも早く帰りたかったのだが、みんな、フリースタイルスノーボーディングが大好きなのね。仮眠は諦めることにした。

眼下に野尻湖を臨みながら卓は空中遊泳を楽しむ

“遊び上手”な誠はレールをこのように攻略する
本セッションには弊メディアのインターン生2名が参加していた。僕も含め、大学3年生の彼らにとっては親と同世代に近いメンバーが多かっただけに、その滑りとエネルギッシュさを見て大きな刺激を受けたことだろう。現在、リアルスノーボーダーたちのジュニア世代が競技を中心にシーンで活躍しているわけだが、BACKSIDE CREWというコミュニティを介しても、世代を越えてカルチャーが受け継がれていくのだ。

卓との会話を楽しむことができたインターン生の竹内大くん(写真左)と、積極的にインターン活動に精を出している板橋楓くん(写真右)はコバちゃんとウエアがどんかぶっていた(笑)

パークセッションを終えると、ボトムまでパーティーランを楽しんだ一行
オープニングの挨拶の時点では、古傷の左ヒザが痛みを伴っていたのであまり滑れない宣言をしていた僕は、結果、卓や誠からの強すぎる刺激を受けて、ここ数年のエアタイムを塗り替えたのではないかくらい飛びまくった。

やっぱスノーボードは飛んでナンボ(笑)
おかげで、いまだヒザの痛みは癒えることなく……(笑)。でも、フリースタイルスノーボーディングってやっぱこうだよなと、改めて感じさせられた。自然地形からパークに至るまで、グルーミングバーンも含めて、杉ノ原の隅から隅まで滑り尽くしたセッション。最高に面白かった。
卓&誠、ありがとう!

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Gaku Hiramoto
special thanks: Myoko Suginohara