FEATURE
真夏の避暑地で大の大人たちがはしゃぐ最高のセッション。「BACKSIDE SESSION #17」@カムイみさか
2024.08.28
一般スノーボーダーのコミュニティ「BACKSIDE CREW」は発足から3シーズンを終え、これまで16回に渡って“滑ろう会”「BACKSIDE SESSION」を重ねてきた。3シーズン目にして“スノーボードの神”と崇められているテリエ・ハーカンセンを招いて行った#15、長野・野沢温泉名物の沢を滑り倒した#16は秋口に公開予定だが、3年連続となるオフシーズンのBACKSIDE SESSIONとして、山梨が世界に誇る屋内ハーフパイプ「カムイみさか」で#17を行った。
2024年7月下旬。毎年真夏に訪れているのだが、この日も屋内はキンキンに冷えており、ハーフパイプのシェイプは美しいのなんのって。パイプの高さは4mあり、6.7mが基準とされるスーパーパイプに比べれば小さいものの、僕たちBACKSIDE CREWのオジサンたちにとってはかなり手強い。しかし、朝イチは超絶アイシーなので恐怖心がつきまとうものの、シェイプがキレイだからこそトライできる。そのうえで、近年のうだるような暑さから現実逃避できる、スノーボーダーにとって最高の避暑地だと改めて感じた。
昨シーズン、筆者(編集長)はバックサイドウォールに当て込もうとするも逆エッジでふっ飛ばされてしまい、顔面から流血&右手小指を骨折してしまったのだが、今年もまさかの展開に。ウォーミングアップがてら滑っていたはずなのに、カッコつけようとフロントサイドのリップをまたぐようにしてテールで当て込もうとすると……思いきりエッジを引っかけてしまってバランスを崩すと、超カチコチのトランジションに腰から落下。激痛が走り、とても滑れる状態ではなくなってしまった。打撲と確信していたので痛みが引くのを待ちながら、およそ2時間半ほど見学することに。
ハイエアや720などのスピンを操るキッズスノーボーダーたちと、オジサマ世代のローカルスノーボーダーたちに混ざって、後者と同世代のCREWたちも物怖じすることなく楽しんでいる姿が印象的だった。僕はほとんど滑ることができなかったので、今回は有料会員であるFRESHFISHメンバーたちの目線から本セッションをお届けしたい。
3年連続して秋田から参加してくれたクマ(三熊直樹さん)は、「最初はこの歳(40代)でハーフパイプデビュー?とビビっていましたが、3回目の参加でようやく板がリップに届きそうです(笑)」と、確かな上達を感じているようだ。「来年はドロップインできるようになりたい」と、さらなる飛躍を目論んでいる。
「CREWのみんな、本当にスノーボードが好きなんだなって思います。オフシーズンにも時々、FRESHFISHのメンバーと会って遊んだりするのですが、何をしていても結局、スノーボードの話ばかり。そんなスノーボードがめちゃくちゃ好きな人たちと会っていると冬が待ち遠しくなるし、自然環境のことを考えるいい機会になったりして面白いなぁ、と思います」と、当CREWの特徴について語ってくれた。クマは第1期からFRESHFISHメンバーとして活動してくれている中心人物だけに、多くのCREWからの信頼を集めるムードメーカー的存在だ。
初年度からFRESHFISHのサトジュン(佐藤潤一さん)は、前日に同メンバーたちと登山したことで筋肉痛だったそう。気負わずに参加したといいながらも、昨年はメソッドトゥイークを決め、今年は見事なハンドプラント(下写真)を決めた。さすがは元パイパーだ。
サトジュンは、3シーズンともにしたCREWについて、次のように話してくれた。
「この歳になると、同じ志をもったしがらみのない関係性がとても心地いいと、CREWのみんなと会話しているときに感じますね。話している内容は、シーズン中の出来事や来季ギア、若手ライダーやコンペシーンについて、雪山の情報交換などなど。身体はここが痛いだとか(笑)、常日頃から思っていることを話して意見交換できるのは、とても楽しいしリラックスできる貴重な時間です。ありそうでない関係性が、CREWにはあると思います」
「カムイみさかに初めて行ったのは1990年代半ば頃ですが、私のオフトレといえば、今も昔もみさか一択です」と言うのは、CREW発足2シーズン目からジョインしてくれているサトシ(坂井賢さん)。本セッションのみさか編には初参加だった。「夏にCREWの仲間たちに会うのは不思議な感じがしますね。夏服を着ているだけで違和感だけど(笑)、ひとつ言えることは、BACKSIDE CREWで結ばれた絆のおかげで、素晴らしい仲間たちと巡り会えて充実したスノーボードライフを過ごせています。これからもいい関係でいたいですね」と、CREWについて語ってくれたサトシ。うれしいこと言ってくれるじゃないの!
FRESHFISHに加入して2シーズン目、誰よりもスノーボードを楽しんでいる姿が印象的なネモ(根本清さん)は、メンバー最年長。パイプ整備のために室内で重機を稼働させているのだから、みさかで滑るとソールが汚れることは否めないが、今回のセッションであえてニューボードをおろしていたネモ。「CREWのみんなに会えると思うと、テンションが上がっちゃって(笑)」とのことだ。
「CREWのみんなとは住んでいる場所も職業、年齢も違うけれど、会うたびにいい刺激をもらっています」と語るネモは、高い頻度でセッションに参加してくれている。みさかでパイプランにトライしたり、昨シーズンはプライベードでFRESHFISHのメンバーたちとともに、バックカントリーにも挑戦していた。このように、新たなライディングに挑戦できる環境がBACKSIDE CREWにはあり、また、その背中を強烈に押してくれるのだ。
クマに負けじと岩手から参加してくれたケケ(小倉精太さん)は、サトシやネモと同様に、FRESHFISHに加入して2シーズン目。僕と同い年で、フリースタイルマインドを忘れないスノーボーダーのひとりだ。とはいえ、移動距離も含めてこれまでのみさかセッションは見送ってきたそうだが、意を決して今回参加してくれた。この日、ほぼ滑れなかった僕とは対照的に、まったく休むことなく滑り続けている姿が印象的だった。
「30年前のパイプはボコボコで、オーバーハングが当たり前。みさかのパイプは当時の倍くらいの高さがあるものの、トランジションがゆるくてバーチカルからリップにかけてスムースにつながる素晴らしいシェイプでした。何よりもこのクソ暑い中、冷蔵庫の中で過ごせる時間が快適でしたね」とは、ケケの談。この日は後半にかけて確実にコツをつかんでいたようで、笑顔がこぼれていた。
サトジュンの紹介でFRESHFISHにジョインしてくれたマコっちゃん(原本真さん)とも、3シーズンの付き合いだ。谷川岳ローカルでフリーライディングのイメージが強いが、もちろん、フリースタイルマインドを忘れないイケオジである。「最近は自分が劣化していくだけで上手くならないので、みさかセッションは毎年恒例のシーズンオフの顔合わせ会になってます!」と言いながらも、スムースなパイプランを刻んでいた。
またCREWについて、「仕事や生活スタイルが違っても、スノーボードが好きというだけでいろいろと話が盛り上がる。私はBACKSIDE CREWとして貢献度は軽いんですけど(笑)、少しでも関わっているだけで満足しています」と話してくれた。軽いなんてことは一切なく、マコっちゃんの存在がCREWのモチベーションを高めていると言っても過言ではない。
そして、3年連続3回目の参加となったイワクラ(岩倉宏徳さん)は、初年度からFRESHFISHメンバーとして活動してくれているアニキ的存在、いわゆるご意見番だ。僕と同世代で長きに渡ってスノーボードシーンを見てきているだけに、常に的確な意見をCREWに提供してくれる。
そんなイワクラが題した本セッションのタイトルは、「野上編集長の運動会のお父さん状態」。頭は若い頃の感覚だが、身体は衰えていてケガする状態のことなんだとか(笑)
話を戻そう。2時間半ほど休んでいたのだが、痛みはあまり引かず、13時までのファーストは残り30分を切った。まだ写真を残せていない筆者は、2、3本くらいだったらいけるだろうと踏んでスタート位置まで登った。
BACKSIDE CREW専属(?)フォトグラファーのZIZOと綿密な打ち合わせをして一発で仕留めたかったのだが、情けないほどまったく飛べず……。痛みと時間の限界まで数本滑ったのだが、まったくと言っていいほど思うように滑ることができなかった。悔しさを残しながら、マイカーで来ていたのでクルマのキーをZIZOに託し、個人的にはメインイベントだったBBQ@河口湖で肉を喰らい、ビールを飲みまくりましたとさ。
オチとしては、数日経っても痛みが引かなかったのでレントゲンを撮りに行くと、腰椎横突起を2箇所骨折していた。BBQ中に痛みがなかったのは、やはり、アルコールで麻痺していただけだったということなのか(笑)
というわけで、2年連続して骨折するほどはしゃぎすぎたみさかセッション。みさかの屋内パイプが危険なのではなく、筆者がヘタクソなだけなので、あしからず。来年こそ、媒体名に恥じないバックサイドエアで写真を残すぞ!
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: ZIZO=KAZU
special thanks: Kamui Misaka
一般スノーボーダーのコミュニティ
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スノーボードコミュニティ「BACKSIDE CREW」とは
スノーボード専門メディア「BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE」が、トップダウンではなく“ボトムアップ”型の媒体を目指し、フリースタイルスノーボーディングの世界を読者のみなさまと共創していくために始動したスノーボードコミュニティです。全国津々浦々に点在している熱量の高いスノーボーダーたちが集まり、生涯を通じてスノーボードを楽しむことを目的に活動しています。