FEATURE
プロライダー・バックカントリーガイド・ストアスタッフら三者三様のヘルメットへのこだわり。そしてAnonを選んだ理由
2024.12.11
そこで、プロスノーボーダーとしてヘルメットの普及に声を上げている藤田一茂、群馬・みなかみでガイドカンパニー「ONEDROP」を営む宝利誠政氏、BURTON FLAGSHIP STORE NAGANOでストアマネージャーを務める塩川健氏ら、立場が異なる御三方を突撃取材。それぞれが考えるヘルメットの重要性、そして、こだわりについて話を聞いた。
機能性だけでなく一日中かぶっていられる超快適なヘルメット
「手応えは十分にありますね。様々なブランド側からの発信もありますし、撮影でも内容によってはヘルメットの着用をマストにするケースも増えてきたし、お客さんからも『ヘルメット買いました』という声を数人という単位ではなく、けっこうな方々からもらっています。フリースタイルの若い子たちも、ヘルメットをかぶっているケースが増えていますよね。これからもさらに増えていくと思います」
昨シーズン公開したAnon(アノン)の記事で、「ゲームチェンジできると考えています。この遊びを広める側として自分が先頭に立ち、ヘルメットの必要性を広める役割を担っていきたい」と語っていたのは、多彩な才能を発揮して人気を博するプロスノーボーダー・藤田一茂。バックカントリーに限らず、どこでも常にヘルメットを着用してライディングに明け暮れている。
「安全性についての議論は当然の話なので、もう必要ないと感じています。僕の場合は毎日かぶるのが当たり前になっているから、色で選んでいますね。キャップやビーニーもそうですが、服装に合わせて選ぶ。それと同じような感覚でヘルメットをかぶるようになれば、楽しくなると思っています。みんな黒のヘルメットばかりではなくて、もっと違う色を選べばいいのにと、いつも思っています」
言うまでもなくケガを防ぐための機能性は重要だ。しかし、プロとしてあえてそこではなく、ファッションアイテムのひとつとして普及させようと目論んでいるのだ。確かに、藤田はあえて目立つ色のヘルメットをチョイスし、クリエイティビティあふれる自身のライディングスタイルを彩るように、その一部として溶け込ませている。そのために重視している点は、ストレスなくかぶることができる快適性だ。
「新しいテクノロジーが好きなので、WaveCelが搭載されているLOGAN WaveCelとOSLO WaveCelを併用して使わせてもらっています。WaveCelは機能性ばかりがフォーカスされていますけど、使い心地がめちゃくちゃいいんですよね。僕の場合はヘルメットの下に帽子をかぶるときもあればかぶらないときもあるんですが、頭への当たり心地が優しい。穴が空いているから通気性がとてもいいので、自宅を出るときからヘルメットをかぶっていて、ハイクアップするときもかぶっているし、一日中かぶっていても気になりません。そういうヘルメットって、ほかにあまりないんじゃないですかね」
WaveCelの機能性によって救われた経験はまだなく、これからもないほうがいいに決まっている。ただし、万が一を想定すると最高級の機能性が備わっていることは重要であり、そのテクノロジーが抜群の快適性をもたらしてくれると、太鼓判を捺してくれた藤田。
「バックカントリーでもゲレンデでもライディング中は、なるべく無駄な行動はしたくありません。ヘルメットの脱着も必要ないし、脱いだところで荷物が増えるだけ。ずっとかぶっていられるんだったら、それがベストですよね」
通気性がよくフィット感抜群のヘルメット
前述したようにみなかみに拠点を構え、群馬・新潟エリアを中心に、バックカントリー未経験者から上級者までのツアーを幅広く展開している宝利誠政氏。
「細かくカウントしているわけではありませんが、印象としては8割程度の方がヘルメットを持ってバックカントリーツアーに参加してくれています。上級者やリピーターになるとほとんどの人たちがかぶっているのに対し、初めてバックカントリーに入るという人たちのヘルメット着用率はかなり低いですね。ヘルメットもビーコンと同じように、バックカントリーに入るときは絶対にかぶるものという意識にまで変えていければいいなと思っています」
確実にヘルメット着用者は増えてきていると、宝利氏はほくそ笑む。自身ももちろん、常にヘルメットを着用しているスノーボーダーのひとりだ。
「ハイクアップ中に頭部に汗をかくときは脱ぐ場合もありますが、基本的には常にかぶっています。特にAnonを使うようになってからは通気性がとてもよく、同時に保温性も非常に高いので、リフトに乗っているときもかぶっているほうが快適です。私が愛用しているMERAK WaveCelはベンチレーションがあり開閉ができるので、より換気機能に優れています」
余談になるが、宝利氏はオフスノーの時期にプライベートでMTBに乗る機会が多いそうだが、夏でもヘルメットのインナーを外してAnonを愛用することがあるそうだ。ラフティングの川下りの際にも使っているんだとか。換気システムに優れているからこそ、多様性があるということなのだろう。
「Anonのヘルメット全般に言えることですが、BOAでフィットの微調整をできるところがいいですね。足と同じで頭の形は人によって違いますし、ヘルメットの下に何をかぶるのか、またはかぶらないのかよってもサイズ感が変わってくるじゃないですか」
頭にしっかりフィットするからこそ、藤田と宝利氏が口を揃えるように、快適性が高まっているのかもしれない。
「繰り返しになりますがヘルメットの通気性がとてもいいので、頭部が快適なだけでなく、ゴーグルが曇りづらくなるのはうれしいポイントです」
最後に言い残したことはないかとたずねると、Anon特有の機能ではないことを前置きしたうえで、ガイド業やバックカントリーの行動において非常に使い勝手がいいポイントを教えてくれた。マグネット式のストラップがかなり重宝するとのこと。
「ハイクアップ中だったりストックを持っているときなど、片手で脱着できるのはとてもいいですね。すごくラクです」
ラウンドフィット採用ヘルメットが日本人の頭部を快適に包み込む
「本当に必要だと思ったときにはすでに遅いです。スノーボードはとても楽しいですが、僕は命をかけてまで滑ることはできません。悲しい事故の話を聞いたり見たりしていると、まわりの人間や家族のためにヘルメットで防げるならかぶってもいいんじゃないか、と考えるようになりました」
BURTON FLAGSHIP STORE NAGANOのストアマネージャーを務める塩川健氏は2014年、国内で2店舗目のFLAGSHIP STOREとしてオープンした当初から同店と関わってきた。お客様やストアスタッフたちと長野エリアを中心にライディングに明け暮れている。息子と滑る機会も多いそうだ。だからこそ、ヘルメット着用に対して積極的なのだろう。
もちろん自身がヘルメットを愛用しているだけでなく、ストアマネージャーとしての啓蒙活動も忘れない。
「本気でヘルメットを普及させたいと考えるのなら、店舗のスタッフやメーカーの社員が率先して着用すべきだと考えています。スノーボードにおいてカッコよさは大切な価値観だということは十分に理解していますが、ヘルメットをかぶることがカッコ悪いという話は、もうやめませんか?」
スケートボードから多分のインスパイアを受け、ストリートでの遊びの延長線上に誕生したフリースタイルスノーボーディングだけに、そうした文化価値が定着しているのは事実だ。ヘルメットの普及率が上がらないひとつの要因でもあるだろう。
「安全性はもちろん大切ですけど、暖かさや快適性もヘルメットをかぶるメリットだと思います。リフトに乗っているときにヘルメットの上にゴーグルをのせておけば、レンズが曇ることはありません。また、ツリーランをしていても小枝など気にならなくなりました。今では、ヘルメットをかぶらないと不安になりますね」
逆に言えば、ヘルメットをかぶることでライディングのスイッチが入るということなのかもしれない。このようにヘルメットに対する熱き想いを抱いている塩川氏が選ぶのは、OSLO WaveCel ROUND FITだ。その理由についてたずねてみると。
「もちろんMERAKやLOGANという上位モデルもいいですが、価格と性能、重さなど全体のバランスを考えると、OSLOのコストパフォーマンスはとても高いですね。今シーズンからラウンドフィットになり、日本人の頭の形に合うようになりました。ご存知のとおり、日本人は欧米人に比べて頭のハチが張っている人が多く、Anonのヘルメットも通常のフィットだと縦長の欧米人の頭の形に合わせて作られているので、サイズをワンサイズ上げないと合いませんでした。そこで、日本人の頭の形に合わせやすいように、OSLOは今シーズンからラウンドフィットに変更されました。なので、今までよりもサイズを下げてかぶることができます」