BACKSIDE (バックサイド)

BACKSIDE (バックサイド)

https://backside.jp/backside-session26/
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CREW

オフシーズンにパイプを滑れることは、当たり前じゃない。存続の岐路に立つカムイみさかで、今年も仲間と雪で戯れた「BACKSIDE SESSION #26」

2026.10.28

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10月12日、山梨・カムイみさかに、今年もBACKSIDE CREWのFRESHFISH(有料会員)メンバーたちが集まった。
 
オフシーズンに雪のハーフパイプを滑り、仲間と再会し、セッション後は恒例のBBQを楽しむ。そんなBACKSIDE SESSIONをみさかで開催するのは、5年連続となる。
 
これまでは夏に開催してきたが、今回は初めて10月に変更。秋のほうが外気温が下がるためか、パイプのコンディションがよくなるという情報があったからだ。実際、パイプのサイズは例年より小ぶりだったものの、いつもの氷のような硬さではなく、比較的滑りやすい雪面に仕上がっていた。
 

日本が世界に誇る室内ハーフパイプ。オフシーズンに雪の上で滑れる環境は、間違いなく貴重だ

 
そして、今年のみさかは、施設存続の危機という大きな課題に直面していた。
 
 

思いどおりに滑れなくても、やっぱり楽しい

ハーフパイプにひさしぶりに入ると、スノーボードという遊びの難しさを思い知らされる。トランジションに合わせて板を踏み込み、スピードをつなぎ、リップへと向かう。頭では覚えていても、身体がついてこない。ましてや、年に一度しかパイプを滑らないとなれば、なおさらだ。
 
それでも、サトジュン(佐藤潤一さん)とトヨ(豊島雄樹さん)は、今年も楽しそうにトランジションを駆け上がっていた。ふたりとも、かつてパイプを滑り込んできたスノーボーダー。ブランクがあっても、身体に染み込んだ感覚はそう簡単には消えないのだろう。
 
「やっぱり楽しい。怖さと楽しさ。板が思うようにコントロールできない歯痒さを感じながら、上手くいかないなって、仲間とワイワイやりながら滑れるのがホント楽しかった」
 
サトジュンは、こう振り返る。
 

「発見は、スピードに対する老い」。そんな自虐的なコメントを残しながらも、今年もパイプで存在感を放ったサトジュン

 
トヨは次のようにコメントを寄せた。
 
「毎年4、5回はみさかに行くのですが、BACKSIDE SESSIONの日がなぜか一番飛べます。ハーフパイプは、姿勢や目線など、すべてが揃わないとリップから出ることすら叶わない。僕にとってもっともこだわりたいスノーボーディングです」
 

「夏に本格的なハーフパイプを滑れる施設は日本でみさかだけ。しかも家から近いという幸福」。トヨは、日本のハーフパイプ競技を支える施設として、国や県による支援も望んでいる

 
同じパイプには、かつてオリンピックの舞台にも立ったヒカル(大江光さん)の姿もあった。幼少期からみさかで練習してきた彼女の滑りは、当然ながら別格。それでも、トップレベルのライダーと一般のスノーボーダーが同じ場所で滑れるのが、みさかの魅力でもある。
 

「新しい場所でのシーズンになるので、とにかくワクワクしてます!」。平昌五輪ハーフパイプの出場経験を持つヒカルの新天地は、長野・白馬。次の冬を心待ちにしている

 
年に一度のパイプを楽しみにしているトシ(冨内俊卓さん)は、緊張からか、1本滑っただけで脚が生まれたての子鹿のように震えていたという。それでも、仲間たちから滑りを褒められ、背中を押された。
 
「仲間にプッシュされ、絆を深める場所でもある。楽しい楽しい滑りのセッションもトークセッションも、最高でした」
 

仲間からは「伸びしろがあるから年1回じゃもったいない」との声も。本人の緊張とは裏腹に、そのライディングは周囲を楽しませていた

 
今年7月まで残雪を求めて滑り続けていたというケケ(小倉精太さん)も、約3ヶ月ぶりの雪上を楽しんだ。
 
「気心知れたCREWや、たまたま来ていた若者たちと、いろいろ話しながら滑れる環境に感謝しかなかったです」
 

「競合するエアマット施設が充実する中で、オンシーズン同様にパイプの練習ができる施設は、本当に素晴らしい」と、岩手から本セッションに参加したケケ

 
オフシーズンのブランクでスピードやエアの感覚が鈍っていることも実感したというが、「まだまだフリースタイルを貫くモチベーション向上の素晴らしいキッカケになりました」と、力強いコメントを残してくれた。
 

滑るだけでなく、仲間のライディングを眺めたり、何気ない会話を交わしたり。パイプ下でも、セッションならではの時間が流れていた

 
そして、今回のセッションを陰で支えてくれたのが、ホッシー(星貴浩さん)だ。前半は自らカメラマンを買って出て、BACKSIDE CREW専属フォトグラファー(?)のZiZOをサポート。後半はパイプに入り、わずかながら滑りを楽しんだ。
 
「短い時間で集中して滑ったけど、まぁまぁ滑れてたと思う。フォトセッションは、お笑い担当ポジションだったかなと(笑)」
 

「次シーズンは、春に戻った実家周辺の山歩きしてみようと思う」。ホッシーは、すでに次の遊びを思い描いている

 
撮る側にも滑る側にも回りながら、仲間たちとの時間を楽しんでいた。
 
上達することだけが目的ではない。お互いの滑りを見て、声を掛け合い、笑いながらまたスタート地点へ向かう。その繰り返しがセッションの醍醐味だ。
 
 

滑れることは、当たり前じゃない

実は筆者にとって、今年のみさかセッションには個人的に大きな意味があった。
 
2012年に粉砕骨折した左ヒザの古傷が悪化し、昨年2月には関節内で骨片が剥がれ、ズレていることが判明。昨年5月から再起をかけてリハビリを始めたものの、2ヶ月後のみさかでは5本ほど滑ったところで痛みがひどくなり、ライディングを断念した。
 
そもそも、それ以前の3年間も無事ではなかった。若い頃にハーフパイプを滑り込んでいたこともあり、年に一度のみさかで少しずつ感覚を取り戻していた。誰にも求められていないのに(笑)、どうしても画を残したくなる。
 
その結果、小指の骨折、顔面の負傷、腰椎横突起の骨折。3年連続でケガをしていたのだから、我ながらアホだ。それでも、昨年の挫折から1年あまり。リハビリを重ねてきた身体が、どこまで動くのか確かめたかった。
 
序盤は昨年よりも滑れた。ひさしぶりにパイプの壁を駆け上がり、リップに向かう感覚も少しずつ戻ってきた。
 
しかし、後半になると左ヒザが痛み始める。リフト代わりのムービングベルトを降りた瞬間、ヒザがガクンと折れるほどの痛みが走る。
 
それでも諦めきれず、軽いスクワットで痛むヒザを動かしながら、無理を承知で何本か滑った。なんとかライディング写真を残すことができ、満足感は高かったが、その代償として、セッションから2週間あまり経った今もヒザは痛む。
 

古傷も含め、身体は若い頃のようには動かない。それでも、年に一度のみさかで残したかった、バックサイド・アーリーウープのステイルフィッシュ

 
決して褒められた話ではない。ただ、思いどおりに動かなくなった身体と向き合いながら、それでも滑りたいという気持ちが消えないことを、改めて思い知らされた。
 
そんな葛藤を抱えていたのは、筆者だけではなかった。ネモ(根本清さん)は、首の不調を抱えながら参加。今回はわずか2本だけの滑走となった。
 
「ひさしぶりに雪の上に立ち、改めてスノーボードの楽しさを感じるいっぽうで、もっと滑りたいというもどかしさもありました」
 

「みんなの滑りを見たり、話をしたりするだけでも、参加できてよかった」。ほとんど滑ることはできなかったが、仲間と再会した時間には大きな意味があった

 
その姿を見ていたサトシ(坂井賢さん)は、こう振り返っている。
 
「ネモさんがヘルニアを患いながら参加し、ずーっと見学されておりましたが、途中で2本だけ滑り、とてもいい表情をして『雪の上滑るのって楽しいね!』と語っていたのが胸アツでした」
 
マコっちゃん(原本真さん)も、病み上がりで参加したものの、2本目でギックリ腰に。思うように滑れないまま、セッションを終えることになった。
 
「パイプを存分に味わう前に不完全燃焼で終わってしまった」
 

「自分の衰え具合を測る上でも」。思わぬ負傷で十分に滑れなかったものの、今回のセッションは自身の身体と向き合う機会にもなった

 
それでも、ほかのCREWの滑りに刺激を受け、「1月にはキレキレの滑りを取り戻すぞ!」と気持ちを新たにした。
 
また、ネモの言葉が強く印象に残っている。
 
「長く続けてきたからこそ、滑れることが当たり前ではないと感じています」
 

ライディングの合間に記念撮影。CREW結成から6シーズン目。長年ともに滑ってきた時間を感じさせる

 
年齢を重ねれば、若い頃のようにはいかなくなる。それでも、同じ雪の上で仲間と過ごす時間がある。思うように滑れなくても、次こそはという気持ちが生まれる。
 
BACKSIDE SESSIONが続いてきた意味は、そんなところにもあるのだろう。
 
 

この場所を、次の世代へ

今年7月、カムイみさかは室内ハーフパイプの存続を目指すクラウドファンディングを開始した。人工雪を造り、冷房設備を24時間稼働させながらシェイプを維持するには、莫大な電力が必要となる。施設側によれば、この10年間で電気料金は約1.4倍に上昇。設備の維持管理にかかる負担も重く、営業を続けることが難しくなっているという。
 
目標金額は800万円。9月30日の募集終了までに327人から528万円の支援が集まったが、目標達成率は66%にとどまった。施設側は目標未達でも計画を実行する方針で、集まった資金を電気料金や雪面整備、安全管理、施設維持に充て、2026年12月6日までの営業継続を図るとしている。
 
長年この施設に通ってきたミツタカ(河尻崇高さん)も、クラウドファンディングに参加したひとりだ。1990年代からみさかを訪れているという彼は、その魅力をこう語る。
 
「オフシーズンに人工雪で造られた、整備が行き届いたハーフパイプがあること。これに尽きます。しかもハイクアップ不要」
 

「これがあるから、シーズン初めから安心して板を踏んでいけます」。春からみさかに通い続けるミツタカにとって、オフシーズンも雪上で滑れる環境は欠かせない

 
ミツタカはみさかについて、トップを目指すライダーたちが育ってきた場所であり、一般スノーボーダーにとっても貴重な練習環境であることを強調する。
 
ヒカルにとっても、みさかは幼少期から滑ってきた場所だ。
 
「カムイみさかは昔から多くのライダーや選手が練習してきた場所で、そこで今も上を目指して練習する子がたくさんいます。日本にとって、なくしちゃダメな場所で、守っていかなきゃいけない場所だと思います」
 

今も変わらずみさかでブッ飛ぶヒカル。だからこそ、次の世代にこの場所を残したいという思いも強い

 
その言葉には、トップアスリートとしての視点だけでなく、この場所で育ったひとりのスノーボーダーとしての思いがにじむ。
 
だが、施設の存続には、思い入れだけで解決できない現実もある。
 
みさかの開業初期から通うサトシは、練習環境としての功績を評価しながらも、施設の老朽化や光熱費の上昇、利用者の減少などを挙げ、クラウドファンディングにとどまらない経営面での改革が必要だと指摘する。
 
「一部のスノーボーダーにどんなに価値があっても、利益にならなければ存続はできない」
 

次のシーズンに向けた言葉は「無事是名馬」。長年みさかで滑っているサトシだからこそ、滑り続けることの価値も、施設を維持する難しさも知っている

 
その言葉は重い。これからも雪のない季節にハーフパイプを滑れる環境を守るには、利用者が足を運ぶことはもちろん、施設の運営を持続可能にするための取り組みも欠かせない。
 
ただ、今回のセッションで改めて感じたのは、みさかの価値がトップライダーの育成だけにとどまらないということだった。何十年も滑り続けてきた大人がいる。身体の不調で2本しか滑れなくても、笑顔になれる人がいる。シーズンを前に自分の衰えを感じながらも、もう一度上手くなりたいと願う人がいる。
 
そうしたスノーボーダーたちにとっても、ここはかけがえのない場所なのだ。
 
 

滑ったあとも、続くセッション

みさかでのライディングを終えたあとは、恒例のBBQ。セッションに参加できなかったコバちゃん(小林良和さん)も合流し、近況やスノーボード談義に花が咲く。滑っていたときの真剣な表情とは打って変わって、笑い声が絶えない時間だ。
 
今年はケケがギターを手に弾き語りを披露。スノーボードの話から脱線しながら、それぞれが気の向くままに会話を楽しんだ。
 

雪上のセッションが終われば、今度はギターセッション。滑ったあとのBBQも、BACKSIDE CREWに欠かせない時間になっている

 
「滑りとBBQを通した気心知れたクルーや編集長との対面でのディープなトークセッションは、回を重ねるほどに魅力倍増!」
 
ケケはそう話す。
 
雪の上で滑りを共有し、滑り終わったら肉を囲んで語り合う。いつも一緒に滑れるわけではないからこそ、この時間が大切になっていく。
 

「スノーボードは滑ることだけでなく、仲間とのつながりも大きな魅力のひとつ」。ネモの言葉が、この一枚に宿っている

 
来年も、ここで仲間たちと再会したい。その願いは、みさかの存続を願う気持ちとも重なっている。
 
スノーボードが好きだから、滑る。パイプを思うように滑れなくても、また滑りたくなる。
 
そんな当たり前のようで当たり前ではない時間を、これからも大切にしていきたい。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)
photos: ZiZO

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スノーボードコミュニティ「BACKSIDE CREW」とは

 
スノーボードを愛する仲間たちが、世代や滑走スタイル、活動するフィールドを超えてつながるコミュニティ。BACKSIDE SESSIONをはじめ、国内外のライダーとの交流やブランドとの特別企画など、スノーボードをもっと深く楽しむための機会をつくっています。滑ることを通じて生まれるつながりを大切にしながら、スノーボードのある人生をともに楽しんでいく。それがBACKSIDE CREWです。
 

 

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