BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

X GAMES初の冬季ドラフトで日本人スノーボーダー6人が指名、平野歩夢はフリーエージェントに。その中身に迫る

2026.09.20

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X GAMESが、大きく変わろうとしている。

2027年から本格始動する「X GAMES LEAGUE(XGL)」のウィンターシーズンに向け、史上初となるウィンタードラフトが9月16日に米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催。ドラフト対象となった180人を超える選手の中から、スノーボードとスキーを合わせて40人が4つのクラブに指名された。

日本人スノーボーダーでは、村瀬心椛、戸塚優斗、清水さらがXC Park City、荻原大翔と深田茉莉がXC Golden State、長谷川帝勝がXC New Yorkに加入。世界のトップシーンで活躍する日本勢から、6人が選ばれた。

いっぽうで、平野歩夢や平野海祝らは40人のドラフト枠には入らず、フリーエージェント(FA)として新シーズンを迎える。

ただし、ここで重要なのは「ドラフト外=X GAMESに出場できない」という意味ではないことだ。

XGLでは、クラブに所属していないFAもX GAMESに出場し、個人としてポイントを獲得することができる。実際に先行して行われたサマーXGLでも、FAの選手たちが大会で活躍している。また、クラブに故障者などが出た場合には、FAが補強候補になる可能性もある。

では、なぜ世界トップクラスの実績を持つ選手がFAとなり、10代の若手たちが次々とドラフトで指名されたのか。今回のドラフト中継を追っていくと、XGLが選手に求めている新しい価値観が見えてくる。

各クラブのロースターは10人、男女5人ずつで構成される。その限られた枠の中で、GMたちが繰り返し重視していたのが、ひとつの種目で圧倒的な強さを誇ることだけではなく、複数種目への出場可能性や3大会を通した安定性、決勝進出の可能性、将来性、そしてチームとの相性だった。そのため、スロープスタイルとビッグエアの両方に出場できるライダーなど、複数種目でポイント獲得を狙える選手が価値を持つことは想像に難くないだろう。しかしチームには、スーパーパイプのライダーを最低3人入れなければならないというルールが定められている。

そうしたなかで象徴的なのが、男子スーパーパイプで圧倒的な実績を誇るスコッティ・ジェームス(オーストラリア)だ。X GAMESで数々の金メダルを獲得してきた彼でさえ、2巡目まで指名されなかった。中継ではその理由のひとつとして、スーパーパイプという単一種目を主戦場にしていることが挙げられていた。

XGLでは、個人の順位だけではなく、それぞれの選手が獲得したポイントがクラブの成績につながる。そのため、先述したとおりスロープスタイルとビッグエアなど複数種目で決勝に進める選手は、それだけクラブにポイントをもたらす機会が増えるからだ。長谷川帝勝がXC New Yorkから指名された際にも、ビッグエアでの圧倒的な能力だけでなく、スロープスタイルでもポイントを獲得できる可能性が評価されていた。

また、XC Park Cityに指名された戸塚優斗については、3大会すべてへの出場について「心配していない」と中継で語られている。強さだけでなく、シーズンを通してクラブに貢献できることが重要なのだ。

さらに興味深いのが、若手への投資である。今回のドラフトでは14歳や16歳といった選手たちも指名された。契約期間は指名順位などによって異なるものの、複数年に及ぶケースもあると説明されており、GMたちは今シーズンの成績だけでなく、2年後、3年後、その先まで見据えてロースターを組んでいる。

つまり、今回選ばれた40人は単純な「世界トップ40」ではない。XGLというリーグ戦において、どの選手を10人のチームに組み込めば最大のポイントを獲得できるのか。その視点から構成された40人なのである。

だからこそ、平野歩夢がドラフトで指名されなかった理由を、競技力だけで説明することはできない。実際、その理由についてX GAMES側から明確な説明はされなかった。ただ、今回の中継を通して、複数種目への対応力や3大会を通した出場可能性、ポイント獲得力、将来性などがドラフト戦略に大きく影響していたことはわかる。

女子スーパーパイプの絶対的存在であるクロエ・キム(アメリカ)についても、中継では「パイプの女王」と評価しながら、今シーズンどこまでコミットするのか、実際に出場するのかがわからないことに言及。対する、XC Whistlerに指名されたチェ・カオン(韓国)については、3大会でポイントを獲得できる可能性が評価されていた。

これまでのX GAMESであれば、大会当日に誰がもっとも高いパフォーマンスを発揮するのかが最大の焦点だった。しかしXGLでは、そこに「シーズンを通してチームにどれだけ貢献できるか」という新しい評価軸が加わることになる。

そして、この変化は競技フォーマットだけにとどまらない。先行して行われたSummer XGLでは、クラブに所属する選手たちに報酬が支払われ、健康保険への補助や遠征費の負担なども用意されたと、X GAMES CEOのジェレミー・ブルームがドラフト中継で説明している。

さらに、サマーXGLで総合優勝したXC New Yorkには、50万ドルの賞金が贈られた。個人競技として発展してきたアクションスポーツに、クラブという新しい経済圏を作る。それがXGLのもうひとつの狙いなのだろう。

変化は選手同士の関係にも表れている。Summer XGLを振り返る中で、これまで個人として戦ってきた選手たちが、同じクラブの仲間を応援し、互いにアドバイスを送り合う光景が生まれたことも紹介された。ライバルでありながら、チームメイトでもある。スノーボードやフリースキーという個人競技に、これまでとは異なる関係性が持ち込まれようとしている。

2027年のウィンターXGLは、1月のアメリカ・アスペンを皮切りに、2月のカナダ・カルガリー、4月のフィンランド・ルカという3大会で争われる。競技種目は男女のスノーボードとスキー、それぞれスーパーパイプ、スロープスタイル、ビッグエア。さらに2027年からは予選が導入され、決勝に進出した選手たちがクラブのためのポイントを争うことになる。

X GAMESが始まったのは1995年。30年以上にわたり、個人のスタイルとパフォーマンスを競う最高峰の舞台としてアクションスポーツを牽引してきた大会が、今度は「リーグ」と「クラブ」という仕組みを持ち込もうとしている。

その最初のウィンタードラフトで、日本のスノーボーダー6人がクラブへの所属を決めた。これまでは、誰がもっとも難しいトリックを決めるのか。誰がもっとも高くクールに飛ぶのかに注目が集まっていたわけだが、これからは、誰がシーズンを通してポイントを稼ぎ、誰がチームを勝利へ導くのかという視点も加わる。

XGLが変えようとしているのは大会の形式だけではない。プロスノーボーダーの「価値」そのものが、これから変わっていこうとしているのだ。

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

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