COLUMN
10年後、夏に滑れる氷河は残っているのか。欧州熱波が突きつけるサマースノーボーディングの現実
2026.06.27
欧州アルプスが、今夏2度目となる熱波に見舞われている。
冬の雪不足や暖冬は、ここ数年で何度も語られてきた。だが、雪山が直面している変化は冬だけのものではない。夏に残る雪と氷、すなわち氷河にも、その影響は確実に及んでいる。
英スノースポーツメディア「PlanetSKI」によると、現在アルプスでは凍結高度が4,500mを大きく上回っており、夏季営業を行っている氷河リゾートにも影響が出ている。フランスのティーニュでは、グランド・モット氷河が夏のスノーボード・スキー営業を開始したばかりだが、氷河上には100cmの積雪があるとされるいっぽうで、今回の熱波により融雪が進んでいる。
さらに同記事では、ティーニュのリフト運営会社のCEOであるクレモン・コリン氏の発言として、10年後には氷河がほぼ完全に融けている可能性にも触れられている。現在40mの厚さがあるとされる氷河でさえ、長期的には楽観できない状況にあるということだ。
影響はティーニュだけではない。モンブラン山群から流れ下るシャモニー近郊のボソン氷河でも、後退の兆候が新たに確認されている。氷の上を融水が流れ、2025年に氷河下部に現れた大きな穴も残ったままだという。
高山環境の変化は、滑走エリアの縮小だけにとどまらない。シャモニーの山岳安全団体は、高山のコンディションが日ごとに悪化しているとし、4,000m付近まで夜間の再凍結がほとんど起きていないこと、さらには雪のブリッジ崩落が報告されていることを指摘している。これは登山者やガイドだけでなく、夏の氷河エリアに関わるすべての人にとって安全上の問題でもある。
氷河は、サマースノーボーディングの舞台である。フリースタイルスノーボーダーやスキーヤー、レーサーたちのトレーニング環境であり、ブランドやサマーキャンプを支えてきた場所でもある。冬を待たずに雪上に立てることは、ヨーロッパのスノーボードシーンにおいて長い間、ひとつの文化を形づくってきた。
しかし、その足元にある氷そのものが、毎年確実に削られている。
もちろん、ひとつの熱波だけで氷河の未来を語り切ることはできない。アルプスでは春にまとまった降雪があった地域もあり、各リゾートの状況も一様ではない。だが、北アフリカ・サハラ砂漠から北上する熱気によってもたらされた今回の熱波は、近年頻発する異常高温のひとつでもある。フランスの国家気象機関「Météo-France」によると、1947年以降に52回の熱波が記録されており、その3分の2が21世紀以降に発生している。
ヨーロッパは、世界平均の約2倍の速さで温暖化が進んでいる地域とされる。気温上昇は夏の熱波を増やし、氷河の融解を加速させる。スノーリゾートにとって、それは冬季営業だけでなく、夏の滑走環境そのものを見直す問いにもなっている。
スノーボーダーにとって、氷河の変化は単なる環境問題ではない。
雪の上で滑るという行為は、気候や地形、季節と切り離せない。夏に滑れる場所が減っていくことは、トレーニング環境の問題であると同時に、カルチャーの舞台が失われていくことでもある。
氷河が融けるということは、雪山の風景が変わるということだけではない。スノーボーダーが滑ってきた場所そのものが、少しずつ失われていくということだ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photo: Unsplash / Tim Arnold
location: Glacier de la Grande Motte, Champagny-en-Vanoise, France




