COLUMN
リフト係が必要ない時代へ。AI索道運営は人手不足に悩むゲレンデを救うのか
2026.06.21
ゴンドラに乗り込もうとしても、リフトから降りようとしても、係員の姿が見当たらない。そんな光景が、すでに欧州のスノーリゾートでは現実になっている。
索道メーカー最大手のドッペルマイヤーが開発した「AURO(Autonomous Ropeway Operation)」は、AIやセンサー技術を活用した自律運行システムだ。乗降場に配置されたカメラや各種センサーが利用者の動きを監視し、異常を検知した場合には減速や停止などの対応を自動で行う。運行状況はROC(Ropeway Operation Center)と呼ばれる遠隔監視センターから常時確認されており、従来より少ない人員での運営を可能にしている。
同システムは2020年12月、スイス・ツェルマットの10人乗りゴンドラ「キューム」で初導入された。その後、オーストリアのシルヴレッタ・モンタフォンが誇るメインゴンドラ「ヴァーリセラ」でも運用が始まり、現在は導入が広がりつつある。
さらに注目すべきは、ゴンドラだけではなくリフトにも同様の技術が実装されている点だ。AIによる画像認識技術を活用した「AURO-CLD」は、スイスとオーストリアで運行認可を取得。リフト降り場に係員を配置しない運営を実現している。
もちろん、完全な無人化ではない。複数の索道はROCから遠隔監視されており、人とテクノロジーが役割を分担することで安全性と効率性の両立を図っている。ドッペルマイヤーによれば、このシステムにより人件費を最大35%削減できる可能性があるという。慢性的な人手不足に悩むスノーリゾートにとって、大きな選択肢となり得る技術だ。
日本でも人材確保は深刻な課題となっている。営業期間の短縮やリフト運行本数の削減など、その影響はすでに各地で表面化している。
いっぽうで、雪山には効率だけでは測れない価値もある。乗り場や降り場で交わされる何気ない会話や、ローカルゲレンデならではの人とのつながりもまた雪山文化の一部だ。それでも、人手不足が深刻化するなかで、これまでと同じ運営体制を維持することが難しくなりつつあるのも事実である。
人とテクノロジーは、これからどのように役割を分担していくべきなのか。欧州で始まっているAI索道運営は、日本のゲレンデの未来を考えるうえでひとつのヒントになるのかもしれない。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




