COLUMN
90年代にスノーボーダーだった人の実家の押し入れは、今の世界とつながっている。
2026.05.22
世界中のトップライダーたちが、ヴィンテージを掘り始めている。
スノーボードメディアの仕事を続けて四半世紀。全身をメーカーの最新モデルで固めたライダーの姿を、業界の常識として見続けてきた。スポンサーがあるからライダーは滑れる。それはわかっている。
ただ、その「当たり前」に、今の若いライダーたちが揺さぶりをかけている事実が面白い。
彼らは、あえてヴィンテージのギアを手元に引き寄せているのだ。90年代のBURTON(バートン)のアウター、Y2K期のOAKLEY(オークリー)のサングラス、バギーでルーズなシルエットのパンツ。コンペの現場に混ぜてくることもある。
彼らにとって、それは「古着」ではない。新興ブランドがいくら予算を積んでも、絶対に買えないものがそこにある。それは歴史だ。スノーボードカルチャーが爆発的な熱量を持っていた時代の、本物の空気感。コピーしようとした瞬間に、ウソになってしまうもの。
だから彼らは掘る。eBayを漁り、古いショップのデッドストックを探す。あの時代の空気は、どこにも売っていないから。外国人スノーボーダーは日本から取り寄せるというウワサも耳にする。日本のあの時代のギアは、保存状態がいいものが多いから、とつぶやきながら。
思い出してほしい。初めてBURTONのカタログを手に入れたときの興奮を。裏原宿のショップに並んで、限られた予算をはたいて買ったゴーグルを。ウエアのサイジングを、わざとワンサイズ大きく選んでいたあの感覚を。それはトレンドに乗っていたのではなく、スノーボードという文化が持つ固有の美意識を、身体で理解していたということだ。
バブルが弾けて、ブームが去って、ゲレンデからスノーボーダーの姿が減っていくなかで、あの時代のギアたちは押し入れに眠り続けた。消費されて、消えていく。そのはずだった。
しかし今、世界中の若手ライダーたちがそれを「お宝」と呼んでいる。あなたが青春を捧げたスタイルは、間違っていなかった。時代が追いついていなかっただけだ。
今週末、実家の押し入れを開けてみてはどうだろう。色褪せたタグ、少しくたびれたジッパー、懐かしいグラフィック。捨てられずにいたのは、センチメンタルな理由だけじゃなかったのかもしれない。
あなたがかつて愛したスタイルは、今も世界を沸かせる若者たちと、地続きでつながっている。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
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