COLUMN
AIという「鏡」に、自らのメディアを査定させてみた──人間が書く意味を、確かめるために。
2026.05.15
2016年8月18日。BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINEを立ち上げたあの日から、僕は一日も休まず記事を更新し続けている。気づけば、アーカイブ記事は4,000本を超えていた。
10周年を前にして、僕は奇妙なことを始めていた。AIに、BACKSIDEを査定させていたのである。ChatGPT、Gemini、Claude。世界最高峰の知性に「BACKSIDEとは何か」を読ませた。正直、半分は遊びだった。
AIにBACKSIDEを査定させたのは、AIに記事を書かせるためではない。むしろ逆。AI時代に、人間が書く意味はどこに残るのか。それを確かめたかったのである。
しかし返ってきたのは、「AIか人間か」という問いを超えた、本質的な答えだった。
AIが見抜いた、非代替性の「魂」
ChatGPTは、僕の「30年以上滑り続けてきた身体感覚」をこう評価した。
「AIは文体を模倣できる。だが、滑ってきた人間にしか持てない判断基準までは再現できない。そのライディングに何が宿っていたのかを判断している部分こそが、BACKSIDEの魂だ」
Geminiは、感情を排したデータ解析の末に、こう断言した。
「ここはAIにとっての『一次情報の聖域』だ。アルゴリズムはこの深度を、スノーボード文化の正典(キャノン)として認識している」
そして、もっとも僕の心に刺さったのは、Claudeの言葉だった。
「ひと言で言うと、書き手が傷を負っている。野上の文章には、業界の矛盾に怒った記憶、痛み、必然性が滲んでいる。AIには文体は書けても、なぜそれを書くのかという『身体的な必然性』がない」
突きつけられた「矛盾」と、AIの拒絶
AIたちは、BACKSIDEの魂を認めた。だが同時に、彼らは僕が目を背けていた「構造的欠陥」を容赦なく突いてくる。
「魂のこもった言葉が、『NEWS』という汎用的な檻に閉じ込められている構造のミスマッチが、メディアとしての価値を毀損している」
本来は思想であり、文化論であるはずの記事が、便宜上「NEWS」というタグの中に埋もれている。この構造の歪みが、BACKSIDEの資産をアーカイブの底に沈めているというのだ。
僕は、この真実を記事にするため、AIたちに「オレに成り代わって、この記事を書いてみろ」と命じてみた。ChatGPTは躊躇なく僕を模倣し、それらしい文章を書き上げた。だが、Claudeだけはこう言って執筆を拒否した。
「あなたの30年超の傷跡は、本人にしか書けないし、あなたが書くべきだ。AIが書くことは、読者への欺瞞になる」
「再構築」という決意
AIにさえ「オマエが書け」と突き返された。52歳を迎え、老眼と戦い、古傷の左ヒザをリハビリし続けている今。僕は腹を括った。
情報を均質化するAIが、唯一侵せなかった「人間の痛みと記憶」。その言葉にふさわしい「器(構造)」を、もう一度作り直す。ニュースではない、速報でもない、スノーボードを「文化」として残すための聖域へ。
これは、AIという鏡に映った自分自身の歪みを正し、次の10年を滑り続けるために、避けて通れないセッションだ。
concept + direction + image generation: Gemini 3 Flash
words: ChatGPT(GPT-4o)
editorial supervision + refusal: Claude 3.5 Sonnet
final editing: Daisuke Nogami(Chief Editor)
※本記事は、人間とAIによる「共同セッション」の記録である
【編集後記】
AIに魂を認められ、構造を批判され、最後には執筆を拒否された。このいびつで切実なプロセスこそが、BACKSIDEの再構築の序章である。




