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相澤亮が語る、川場に“無限”のラインが生まれる理由。【後編】ワイルドな高手スカイラインと、創造性を解き放つFLUX PARK
2026.04.06
ひとつは、管理されたゲレンデの中にありながら、まるで海外のリゾートのような野性味を残した高手スカイライン。もうひとつは、巨大すぎない絶妙なサイズ感の中に、創造的なラインどりを落とし込めるFLUX PARK。
後編では、亮がなぜこのラインを推すのか、その理由を紐解く。
管理されたゲレンデに残る、“バックカントリー”さながらの地形
亮にとって、高手スカイラインは川場の中でもっともエキスパート色の濃いラインだ。そこにあるのは、「桜川エクスプレス」に乗りながら左手に見えてくるスティープな斜面があるという理由だけではない。高手スカイライン上部には風で育った雪庇、圧雪バーン脇に残されたパウダーエリア、そして自然のまま残された起伏。管理されたコースの中に、バックカントリーさながらの地形がそのまま残っている。その異様さこそが、亮にとってはたまらない魅力なのだという。
「ゲレンデにはあまりないようなワイルドな地形があります。海外のリゾートみたいに、いい意味で放置されている感じなんですよね」
この言葉どおり、高手スカイラインには整いすぎていないよさがある。

高手スカイライン上部は地形の宝庫。亮の足さばきにかかれば、ご覧のとおり
国内の多くのゲレンデでは、安全性や圧雪効率の観点から削ぎ落とされてしまうような壁や雪庇が、川場にはしっかりと残されている。もちろん、そこにはリスクも伴う。右側の雪庇を越えればコース外へ流される可能性もあるし、トップシーズンともなれば、当て込むのが怖くなるほど育った地形が目の前に現れることもある。
だが、その緊張感も含めて、このラインは特別だ。管理されたゲレンデ内でありながら、誰かに用意された答えではなく、自分で判断し、各々がレベルに合わせて遊び方を決める余白が残されている。そうしたフリースタイルな地形が、亮のお気に入りだ。

こうしたナチュラルヒットが亮のお気に入り。雪庇さえも遊び場に変える
「前日にけっこう降った日は、まず高手を目指します。フロントサイドの地形を当てながら滑り下り、後半の斜面でターンを刻む流れが最高です」
こう亮が語るように、高手スカイラインは降雪に恵まれた日にこそ真価を発揮する。圧雪されたバーンでスピードを得て、横に張り出したパウダーや雪庇へ当て込んでいく。さらに、その先には急斜面のパウダーエリアが待っている。ただパウターンを刻むだけのコースではない。壁を使い、雪庇を使い、地形をつないでいく中で、パウダーそのものを遊ぶ。バックカントリーのような感覚が、高手では得られるのだ。
亮が語る高手の魅力は、その日によって地形が表情を変えることにもある。風で育った雪庇の形状は絶えず変化していく。フロントサイドのナチュラルヒットは雪が多すぎれば埋まり、圧雪車が一度カットすることで、また別の地形が生まれる。雪が少ないシーズンでも、かえって地形があらわになって面白くなることもある。
つまり、高手スカイラインもまた、常に安定したヒットポイントを有するスポットではない。自然が日々つくり替える生きた地形なのである。亮が「毎回来たら(地形が)違うんです」と感じているのは、FREE RIDE PARKだけではない。高手もまた、自然条件とともに表情を変え続けるラインなのだ。
“創造性”を制限しないパークが、滑りを変える
そして、このラインを亮が推す理由は、高手だけでは終わらないことにある。これだけワイルドな地形で遊べるうえに、その先にFLUX PARKがあるからだ。高手で地形を当て込みながら滑り下り、その流れのままパークへ接続できるのが、川場ならでは。このつながりこそが、最大の価値である。
FLUX PARKについて亮が強調するのは、レベルを問わずに楽しめるほどよさだ。
「アイテムが巨大すぎず、でも決して小さくもありません。レールの入り口はしっかり高さがあって、レインボーがあったりとジブアイテムのバリエーションも豊富。ラインの選択肢が多いので、クリエイティブに遊べますね」

ストリートではなくパークのレールであっても、亮のスタイルは微塵も揺るがない
そう、飛び方や入り方がひとつに固定されないのが、FLUX PARKの醍醐味である。いわゆる競技仕様のスロープスタイルコースのように、“こう飛ばなければ成立しない”という縛りが少ないのだ。だから、キッカーから横に飛び出してもいいし、法面に当て込んでもいい。地形を拾いながら流れの中でトリックを組み立てられる。
亮の滑りを見ていると、決してまっすぐに滑り下りることはなく、縦横無尽にFLUX PARK内を駆け抜けていた。キッカーのサイドから飛び出し、ランディングの法面に着地し、ジブアイテムはもちろん、地形の当て込みまで含めた一本のラインとしてパークで遊んでいる。

ランディングを無視して、あえて法面へ。メソッド・トゥイークひとつで、景色はここまで変わる
ここで重要なのは、FLUX PARKが整いすぎたパークではないことだ。もちろん、面はキレイに整備されているのでご安心を。遊びやすさと創造性が両立するように、絶妙なサイズ感と設計がなされている。巨大なアイテムほど、結果的に飛び方が限定されてしまう。キッカーであれば回転数の品評会になりやすい。
亮は「X GAMES」のビッグエアで1980を繰り出すほどの実力者だ。しかし、それだけがフリースタイルスノーボーディングではないと常々語っている。FLUX PARKは、そうした決められた飛び方にライダーを押し込めない。だからこそ、野性的な高手スカイラインで得た感覚を、そのまま創造性としてパークで解放できるのである。
すべてがつながることで、“フリースタイルマウンテン”は完成する
高手スカイラインで自然の地形と向き合い、FLUX PARKでその感覚を自分なりのラインへ変換する。そのひと筆書きの流れを、川場ではワンランで成立させることができる。これが、亮が繰り返し語る「全部が詰まっている」という感覚の正体なのだろう。
前編で触れたSURF RIDE PARKからFREE RIDE PARKの流れでも、最終的にはFLUX PARKで遊べる。フリーライドだけでもない。サーフライドだけでもない。パークだけでもない。そのすべてがコンパクトな山の中に濃縮され、しかも無駄なくつながっている。だから、川場はただの滑りやすいリゾートでは終わらない。フリースタイルスノーボーディングの全要素をひとつの山で経験できる、“フリースタイルマウンテン”なのだ。
亮が川場に見出している価値は、まさにそこにある。誰かが用意した正解をなぞるのではなく、自然の地形の中で判断し、パークで表現し、その両方をひとつの流れとして結びつけること。高手スカイラインの野性味と、FLUX PARKの創造性。そして、地形遊びのはじめの一歩に最適なSURF RIDE PARK、さらに、亮がもっとも気に入っている無限大のラインを有するFREE RIDE PARK。それぞれ個性が異なるフィールドだが、一本のラインとしてつなぐことができる。

本連載のメイン舞台ではないものの、川場を象徴する「クリスタルコース」でも亮はスタイル全開
「山の大きさだけだったらほかにもたくさんありますけど、川場はすべてを楽しめる。無駄なところがないんです。一般的なゲレンデの場合、何も遊べないコースがあったりすると思いますが、川場ではどこを滑っていても遊ぶところがある。だから、トップからボトムまで滑り下りると、足腰がパンパンになるくらい遊べます(笑)。FLUX PARKからボトムまでの緩斜面にも地形が点在していて楽しめますからね」
川場は山全体がシームレスに、フリースタイルの要素すべてがつながっている。これこそが、川場の真価なのだ。亮が太鼓判を捺す、日本屈指の“フリースタイルマウンテン”。それが、川場だ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Pink Clown, GAKU




