BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

相澤亮が語る、川場に“無限”のラインが生まれる理由。【前編】SURF RIDE PARKからFREE RIDE PARKへのつなぎが面白い

2026.04.03

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先の記事「相澤亮が『川場』をホームに選んだ理由。ストリートを経てたどり着いた、表現の原点」では、亮がなぜ川場で滑り込んでいるのか、その理由を掘り下げた。ストリートで自らの表現を磨いてきた彼が、最終的に通い続けるゲレンデとして川場を挙げるのは、単に首都圏からのアクセスがいいからでも、雪質がいいからでもない。そこに、フリースタイルスノーボーディングの要素が濃密に凝縮されているからである。
 
川場といえば、クリスタルコースに長く広がるレギュラーのバックサイドウォールが有名だ。しかし、亮が選んだラインには含まれていない。そこを抜きにして川場がフリースタイルマウンテンたる理由を、大きくふたつの記事に分けてお届けしよう。
 
まずは前編として、「SURF RIDE PARK」から「FREE RIDE PARK」へ続く、亮のお気に入りのラインからご紹介。

“無限に遊べる”理由は、流れの中にある

亮が語る川場の魅力を紐解いていくと、何度も同じ言葉に行き着く。
 

「無限に遊べる」という彼の感覚である。

 
特に、その本質が色濃く表れているのが「SURF RIDE PARK」から「FREE RIDE PARK」へとつながる一連の流れだ。それは、ただヒットポイントが多いという意味ではない。決められたラインをなぞるのではなく、その日の雪質、その時々の地形、そのときの気分やライディングスタイルによって、滑り手自身がいくらでも遊び方を変えられるということだ。
 
川場でフリースタイルに遊ぶためのフィールドは、整備された「FLUX PARK」の完成度だけではない。むしろ、その手前に広がる自然地形や流れの中に、フリースタイルスノーボーディングの本質が宿っている。
 
その入口に位置するのがSURF RIDE PARKだ。ここは林間コースのうねりを活かしながら設計されたラインで、派手な一撃を狙うというよりは、スピードを殺さず、壁から壁へと当て続けていく気持ちよさに真価がある。コース自体が湾曲しており、フロントサイドの壁や両サイドにバンクが連続する。その流れの中で、減速せず、リズムよく面をつないでいく。
 
亮がSURF RIDE PARKを好む理由も、まさにそこにある。
 
「バンクに当て込むだけじゃなく、バンクとバンクの間にあるフロントサイドの壁には、ヒットポイントがたくさんあります。春先の今時期だったら、枝や草が露出していると思いますが、それらを利用しても遊べるんです」
 
斜面をただ滑り下りるのではなく、断続的に続くフロントサイドウォールには、カービングしながら自然に当て込み続けられる。その遊び方が、彼にとって心地いいのだ。
 
「減速せずにスムースにヒットし続けられるのがいいですね。ジャンプもできますが、アーリーウープなど、ハードなトリックじゃなくても楽しめます」
 
SURF RIDE PARKが優れているのは、上級者だけの場所ではないという点にある。亮の言葉をたどると、彼のイチ推しであるFREE RIDE PARKや後編で語る「高手スカイライン」と比べても、もっとも入りやすいラインとして位置づけられている。
 
斜面は比較的なだらかで、視認性も高い。初中級者でも、まずは“壁に当てる”という感覚を覚えるにはちょうどいい。しかも、ただ流すだけで終わっても成立するし、そこにフリースタイルの要素を差し込むこともできる。つまり、サーフライドだけで終えてもいいし、サーフライドの延長としてトリックを混ぜてもいい。遊び方の正解がひとつに定まっていないのである。

 

フロントサイドだけでなく、もちろんバックサイドにも当て込む

 

「滑り方の振り幅が大きいので、どんなライディングスタイルの人でも楽しめると思います」
 
実際、亮自身もここではテクニカルな技を詰め込むのではなく、流れを重視している。彼が言うようにアーリーウープなどシンプルなトリックを入れ込みつつも、主眼は、どれだけスムースに当て続けられるかに置く。
 
ひとつの大技で印象づけるのではなく、ライン全体で魅せる。SURF RIDE PARKには、そうした価値感が詰め込まれている。


正解のない地形が、“スタイル”を引き出す

そして、その流れの先にあるのがFREE RIDE PARKだ。亮が「一番気に入っている」と語るのが、このラインである。理由は明快だ。毎回、地形の表情が違うからだ。
 
FREE RIDE PARKの面白さは、自然地形と人工的な痕跡が複雑に混在しているところにある。雪の下には川が流れているため、その地形が生み出す天然の壁が育つ。そこに、SNOWBOY PRODUCTIONS主宰のイベント「MOCHIYORI」が開催されたことによるアイテムの土台が残っている。そのセンターを圧雪車が通れるように一度壊したことで、人工的な段差が生まれた。そうした複数の要素が重なり合うことで、このエリアは固定されたパークにはならない。訪れるたびに形が変わるため、遊び方も変わる。亮が“無限ライン”と表現するゆえんは、そこにある。

 
「時期によって形状が大きく変わるので、毎回課題が出てきたり、新しい発見があるので新鮮です。だから、まったく飽きることはありません」

 

ここで重要なのは、飛べる人だけのフィールドではないということ。フロントサイド720を狙ってもいいし、フロントサイド360に落としてもいい。飛ばずに当て込むだけでもカッコつけられる。横から入ってもいいし、サイドへ逃がしてもいい。雪解けによりブッシュや草が出ていればそれも遊びに使えるし、雪のつき方によってはまったく違うラインが現れる。
 
つまり、あるヒットポイントに対して“こう遊ぶべき”という正解が決められていない。ビッグキッカーのように、もっとも効率のいい飛び方があらかじめ共有されている世界ではなく、滑り手ごとに異なる解釈が生まれるフィールドなのだ。
 
「アプローチからヒットポイントまで、すべてが自由なんです。Rのように遊んでもいいし、キッカーっぽく飛んでもいい。スケートライクにもサーフライクにも滑ることができます」
 
亮がこのラインを高く評価するのは、そこにスタイルが宿るからである。同じヒットポイントを滑っても、滑り手が違えばラインが変わる。アプローチも違えば、当て込み方も違う。どう見ても正解がひとつに収束しないからこそ、その人らしさがそのまま表れる。
 
コンテストのように整備されたコースで、完成度の高い一本を競うこととは別次元の面白さがあるのだ。FREE RIDE PARKは、滑り手に選択が委ねられている。だからこそ、スノーボーダーそれぞれの個性がそのまま浮かび上がるというわけ。
 
しかも、このラインはリスクの取り方まで自分で調整できる。サイドの法面が整備されていることで、無理に正面から飛ぶ必要がない。怖ければ横から当てればいいし、地形をなめるだけでもいい。一般的なパークでは、入った瞬間に“飛ぶしかない”状況に追い込まれることも少なくないが、ここではそうした圧が少ない。だから、レベルやジャンルを問わず遊びやすいのだ。
 
結果として、「自然にフリーライドのスキルも磨かれていく」と亮は語る。滑るたびに新しい地形が現れ、毎回違う課題が与えられるから、亮が言うように飽きることがないのだ。もし飽きてしまったとすれば、それはまだFREE RIDE PARKを遊び切れていないだけ──そう言わんばかりの懐の深さがある。


つなぐことで生まれる、川場という“フリースタイルマウンテン”

そして何より、SURF RIDE PARKとFREE RIDE PARKの価値は、それぞれが単体で面白いことだけではない。つながっていることに大きな意味がある。

SURF RIDE PARKで流れをつかみ、FREE RIDE PARKで創造力を解放する。さらに、その先にはFLUX PARKが待っている。川場では、サーフライド、フリーライド、ジャンプ、ジブといった要素が断絶せず、ワンランの中でシームレスにつながっていく。どこか1箇所だけが突出しているのではない。最初から最後まで、常に何かしら遊ぶべき場所がある。その密度こそが、川場の特異性である。

 

ピンポイントでレールをとらえたうえで、亮スタイル全開

 

亮が川場をホームに選んだ理由も、結局はそこへ戻ってくるのだろう。
 
「フリースタイルのすべてが詰まっている」

ひとつの技を決めるためだけに山へ行くのではない。ターンし、当て込み、飛び、流し、また当てる。そのすべてがひとつの線としてつながり、その中で自分なりの表現ができる山であること。SURF RIDE PARKからFREE RIDE PARKへ。その流れには、川場という山の思想がはっきりと表れている。
 
決められた正解をなぞるのではなく、自分でラインを見つけ、自分の感覚で遊びを組み立てていく。川場に無限のラインが生まれる理由は、地形の豊富さそのものではない。滑り手の創造力に、きちんと余白を残しているからである。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Pink Clown, GAKU

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