BACKSIDE (バックサイド)

BACKSIDE (バックサイド)

https://backside.jp/kawaba_article23/
43760

FEATURE

相澤亮が「川場」をホームに選んだ理由。ストリートを経てたどり着いた、表現の原点

2026.03.12

  • facebook
  • twitter
  • google

世界を舞台にストリートやコンテストでその名を轟かせてきた相澤亮が、今シーズンから群馬・川場をベースとして活動している。ここ数年、亮は特定の拠点を持たず、ストリートを中心とした撮影の現場を軸に活動してきた。その彼が、川場を“ホーム”として滑り込み始めた。
 
亮はこれまで川場で滑ったことがなかったが、シーズン初頭から滑り込みながら、こう感じたという。
 

「川場はリゾート全体が、UZUMAKIを大きくした感じ」
 
UZUMAKIとは、2022年に“ボウル×ジブ”をコンセプトに亮がプロデュースしたセッションイベントだ。
 
本記事では、すでに開催されたSNOWBOY PRODUCTIONS主宰のイベント「MOCHIYORI」を題材に、亮が川場をホームにする理由と、川場が有するフリースタイルのポテンシャルについて掘り下げる。
 

亮が創造した「UZUMAKI」のコース一部
photo: YUI

 

なぜ、今「川場」なのか

今シーズンの初頭は降雪に恵まれず全体的にスロースタートだったが、亮は12月に初めて川場を訪れた。人工降雪機の拡充により川場は、周囲をよそにすでにトップ・トゥ・ボトムでライディングできる環境が整っていた。滑り始めてから短期間で「10回くらいは来ている」というほどの頻度で通っている。
 
その背景には、ここ数年の活動スタイルの変化があった。
 
「去年まではストリートを中心に撮影ばかりでした。ゲレンデを滑ること自体、3、4年くらいほとんどなかったですね」
 
ストリート偏重で積み上げてきた亮のキャリア。そうした矢先に、彼は「もう少しスノーボーディングに向き合いたい」と考えるタイミングだった。そこへ縁が重なり、川場へ足を運ぶことになった。
 
初めての川場で強く印象に残ったのは、ゲレンデ全体に点在する地形の豊富さだった。
 

川場には至るところに壁がある。これら豊富な地形が亮の創造力を掻き立てる

 
「ゲレンデが川みたいになっているのが印象的でした。だだっ広い感じじゃなくてコンパクトなんですけど、どのコースにも壁があって面白い」
 
山自体は巨大ではないが、壁地形、ジャンプ、ジブ、多彩なコースバリエーションなど、フリースタイルに必要な要素がコンパクトに詰まっている。亮はそこに、自身の礎が築き上げられたインドアゲレンデの感覚を重ねる。
 

非圧雪コースからツリーエリアが開放された「OFF THE PISTE」、さらにコースサイドの壁で遊べる

 
「スノーヴァ羽島を大きくしたようなイメージがあります。あらゆるフリースタイルの要素を複合的に楽しめる感じです」
 
さらに、地理的な理由もあった。亮は拠点を固定せず、撮影や企画に合わせて国内外を移動する。その合間に滑りに行ける“手軽さ”が、川場にはあるのだ。
 
「最近は東京にいることも増えています。行こうと決めたら3時間以内で移動できるから、スケジュールの合間に予定が空いている日があったら川場に行く、みたいな感じですね。そんなリズムが自然にできあがり、今の僕の動きに完璧にフィットしました。屋根付きの立体駐車場があって調子いいし、思い立ったらすぐに行けるのがいいですね」
 
ストリートという枠を越えて、スノーボーディングそのものに深く向き合おうとしていた亮。そんな彼にとって川場は、絶好のフリースタイルマウンテンだった。


イベント「MOCHIYORI」に見る、川場の設計思想

2月下旬、川場で開催されたSNOWBOY PRODUCTIONS主宰のセッションイベント「MOCHIYORI」。SNOWBOYといえば、あの芸術的なボウルイベント「HOLY BOWLY」を開催していることで有名だ。
 
亮はこれまで、HOLY BOWLYのパーク跡地を軽く滑ったことがあった程度。SNOWBOYのイベントへ正式に参加するのは、今回が初めてだった。
 
参加のキッカケはカメラマンからの誘い。だが、それ以上に、亮はこのイベントにもともと興味があった。
 
「UZUMAKIみたいなイメージを持っていたので、とても興味があるイベントでした。実際に滑ってみると、ボウルだけじゃなくジブもあって、若い女性やメーカー、ショップの関係者たちも楽しんでいました。レベルやジャンル関係なく、みんなが楽しめるイベントでしたね」
 

亮スタイル全開のメソッド・トゥイーク。「飛ぶのもありだし、ジブも楽しめる。遊び方は自由だった」と亮は語る

 
亮が2022年にプロデュースしたイベント「UZUMAKI」は、レベルやジャンルを問わず、誰もがフリースタイルに遊べる場として強い印象を残した。MOCHIYORIにも、その“根っこ”があったという。
 
そのうえでUZUMAKI同様に象徴的なのは、ラインの自由度だ。MOCHIYORIのパークレイアウトは、テイクオフやランディングのポイントが明確に決められているわけではない。途中で落ちてもいいし、入らなくてもいい。どんなスピードでも成立する。そうした“許容”が、結果として遊び方の幅を増幅させていた。
 
「決められたラインがないんです。レールの両サイドにランディングがついてるので、わざと落ちてもラインをつなぐことができる。どんなスピードで入ってもいいし、途中で落ちてしまってもいい。ミスを恐れずにラインをつないでいける。まさに無限に遊べる設計でした」
 

「レインボーレールをコスってもいいし、当てるだけでもいい。横にランディングもついてるので、ラインどりは自由」と亮は振り返る

 
この思想は、川場のレギュラーパーク「FLUX PARK」にも通ずる、と亮は言う。MOCHIYORIパークの土台を造成する段階で、FLUX PARKのノウハウが活かされた結果である。
 

失敗してもラインをつなぐことができるパークレイアウト。だからこそ、フリースタイルな滑りをより解放してくれる。それが川場のパーク思想だ。


川場という「地形の宝庫」だからこそ、相澤亮が活きる

亮は、川場を“地形の宝庫”だと捉えている。しかもその地形は、雪のつき方、整備、季節によって表情を大きく変える。
 
亮のInstagramをフォローしている人であれば、すでに見たことがあるかもしれない。川場で滑り出したばかりの12月、ナチュラルヒットで仕掛けたフロントサイド720のポストが、大きな反響を呼んだ。トップシーズンになるとこのスポットは姿を消す。そんな一期一会の地形を見つけて遊ぶのが、スノーボード本来の楽しみ方である。
 
その地形でのライディング映像は60万回以上再生され、今では海外から「同じラインを滑りたい」と川場を訪れるファンもいるという。自然地形をどう料理するか。その遊びが、遠くの誰かを動かした。
 

画像をクリックして、亮のInstagramに投稿されているムービーをご覧いただきたい

 
 
「聖地巡礼じゃないですけど、そのスポットを撮りに来る人がいるという話を川場のスタッフから聞きました。特別なパークじゃなくても、ちょっとした地形でもこれほどまで盛り上がる。ちょっと飛べるだけでいいんです。デカければいいわけじゃないし、雪が多ければいいわけでもない。雪が少ないなら少ないなりの遊び方がありますから」
 
だからこそ、亮を起用した一般向けのセッションは、ぜひ実現させたい。
 
「たしかに、川場の地形を活かしたセッションイベントは面白そうですね。みんなで一緒にゲレンデを流しながら、『ここの壁はこうやって当てると面白いですよ』ってアドバイスしながら滑るような、そんなセッションができたらスノーボードの可能性が広がると思う」
 
難易度を上げるのではなく、地形の当て込み方をシェアしながら一緒に遊ぶ。ここに、フリースタイルスノーボーディングの本質が宿っているような気がしてならない。
 
本記事の続編では、亮とともに川場の地形とパークをさらに深掘りしていく。春から始まる無限の遊び方が、川場にはあるのだ。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: SNOWBOY PRODUCTIONS

KAWABA RESORT | 公式ページはこちら

RECOMMENDED POSTS