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村瀬心椛が悲願のオリンピック金メダル。北京の悔しさを越えて、気迫とスタイルでつかんだ頂点
2026.02.10
ミラノ・コルティナ五輪ビッグエア女子で、村瀬心椛がついに頂点に立った。北京五輪で獲得した銅メダルを塗り替え、悲願の金メダルを獲得。日本女子スノーボーディング史に、またひとつ大きな到達点が刻まれた。
大会は、3本のランを行い、回転数の異なるベスト2本の合計で争われるおなじみのフォーマット。序盤から波乱含みの展開となる。
伏兵として存在感を放ったのが韓国の新星、ユ・スンウンだった。1本目にBSトリプルコーク1440ミュート、2本目にFSトリプルコーク1440インディを成功。24-25シーズンからFISワールドカップに本格参戦したばかりとは思えない完成度を見せたが、いずれも着地でテールに乗るウィリー気味のランディングとなり、難易度に対して得点は伸び切らず。BSが87.75、FSが83.25と、ジャッジは冷静だった。
優勝候補筆頭と目されていたニュージーランドのゾーイ・サドウスキー・シノットは、1本目でまさかの転倒。しかし2本目、BSトリプルコーク1440ミュートをヒールで耐えながら成功。とにかく滞空時間が長く、ジャンプのスケールは群を抜いていた。88.75ポイントをマークし、一気に優勝争いへ復帰する。
そんな中、心椛は1本目から別次元の完成度を見せる。BSトリプルコーク1440ミュート。グラブしていない右手を天にかざしながらの特大ジャンプは、力強さとスタイルが高次元で融合した一本だった。着地ではストンプ気味になるも耐え切る。フィジカルの強さも示された。記録された89.75ポイントは、この大会における最高得点となった。
2本目、心椛はFSトリプルコーク1260インディを選択。着地でややヒールエッジに乗る形となり、72ポイントと伸び悩むが、致命傷にはならない。
いっぽう、イギリスのミア・ブルックスも優勝戦線に食らいつく。1本目にCAB1440スイッチメロンで80.75ポイント。2本目はBS1260メロンを確実にまとめ、78.75ポイント。安定感はあるが、突き抜けるには至らなかった。
迎えた運命の3本目。2本目終了時点で下位のライダーからスタートする。
まずはゾーイ。伝家の宝刀、スイッチBS1260インディ(スイッチメロン)を特大ジャンプで成功させ、83.5ポイント。この時点でトップに躍り出る。
あとがなくなったミアは、心椛が世界で唯一操れる4.5回転技、BS1620メロンに挑む。男子でも1980が限界だったジャンプ台の大きさだけに、大きく会場をどよめかせたが、回転を抑え切れずボードが180ドライブ。得点は伸びなかったものの、この舞台で挑戦した姿勢には大きな拍手が送られた。
そして、心椛の最終ラン。スタート台に立つ表情は、画面越しにも伝わるほどの集中力と気迫に満ちていた。選んだのはFSトリプルコーク1440インディ。特大のジャンプで放ち、前足をしっかりとポーク。完璧な着地だった。ポイントは89.25。ゾーイとスンウンを逆転し、金メダルに大きく近づく。着地直後、ガッツポーズとともに浮かべた表情は、涙をこらえているようにも見えた。
最終走者のスンウンは、逆転を狙いFSトリプルコーク1620ミュートに挑戦するも、回転が足りず失敗。この瞬間、村瀬心椛の金メダルが確定した。
日本勢はほかにも存在感を示した。オリンピック初出場の鈴木萌々は、2本目にFS1440メロンをクリーンに成功させ6位入賞。深田茉莉は3本目で攻めたが着地に嫌われ9位。岩渕麗楽も果敢に挑戦を続け、11位で大会を終えた。
心椛の滑りは、高難度化が進む現代コンペティションの中にあっても、スノーボード本来の“カッコよさ”を失っていなかった。スタイル、完成度、そして気迫。そのすべてが噛み合った滑りに、世界中が心を打たれた。
北京での悔しさを胸に刻み続けてきた心椛は、ミラノ・コルティナで、その物語を完結させた。
ミラノ・コルティナ五輪
女子ビッグエア結果
1位 村瀬心椛(日本)
2位 ゾーイ・サドウスキー・シノット(ニュージーランド)
3位 ユ・スンウン(韓国)
4位 ミア・ブルックス(イギリス)
5位 ジャン・シャオナン(中国)
6位 鈴木萌々(日本)
7位 テス・コーディー(オーストラリア)
8位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
9位 深田茉莉(日本)
10位 メイラ・ストーカー(オーストラリア)
11位 岩渕麗楽(日本)
12位 ハンナ・カラー(オーストリア)
全結果はこちら
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: FIS SNOWBOARDING




