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なぜルスツは「JAPAN’S BEST SKI RESORT」に選ばれ続けるのか。世界が認めた、“何度でも滑りたくなる”日本一の雪山
2026.02.04
この賞は、世界中の旅行専門家や業界関係者、そして実際にリゾートを訪れたスノーボーダー・スキーヤーによる投票で決まる。つまり、ゲレンデ単体の良し悪しだけではなく、滞在全体の体験価値が問われる賞なのだ。
なぜルスツは、これほどまでに選ばれ続けているのか。その理由を、4つの視点から紐解いていく。
三山を遊び尽くす「自由度」──なぜルスツは“サイドカントリー天国”なのか
ルスツのスケールは数字で語れる。三山、37コース、総滑走距離42km。ゴンドラ4基、クワッド7基、ペア7基。だが、ここで本当に語るべきは「広い」という事実だけではない。スノーボードの遊び方そのものが、山の設計として成立している点だ。
北海道を代表するプロスノーボーダー・植村能成(ウエ)は、ルスツを「スノーボーダーに最適なゲレンデ」と言い切る。
「北海道の中でもトップレベルでスノーボードが楽しめる山。三山あってゲレンデが大きいから、一日中滑っていても面白い」

14時を過ぎてもまだまだ遊べる
rider: Yoshinari Uemura
この言葉の背景にあるのは、ルスツが“滑走体験の幅”を、コースの本数や斜度だけで作っていないことにある。象徴的なのが、サイドカントリーの自由度だ。危険箇所はロープで明確に区切る。そのうえで、それ以外の多くのツリー内は自己責任エリアとして開かれている。
「ルスツのように自由にサイドカントリーに入れるゲレンデは、北海道でもほとんどありません。それでいて、よほど変なところに行かなければコースに戻ることができる」
“入れる”だけではなく、“戻れる”地形が多い。この安心感が、ルスツを“サイドカントリー天国”と言わしめている理由だ。そして、ルスツの雪は遊び方の解像度を一段引き上げる。
「雪質がいいから、ファーストトラックを狙おうと焦らなくても大丈夫。ドライパウダーだと、ラインが多少入っていても全然気になりません。ルスツはそのままスパーンって抜けられるイメージ」

雪が軽いのでトラックがまったく気にならない
rider: Yoshinari Uemura
さらに、ルスツの面白さは“深い日”に限らない。むしろ、コンディションに左右されないほど遊びの幅が広い。それが滞在の質を変える。
ウエが挙げるのは、最大斜度40°を誇るスーパーイースト脇の沢地形「シュガーボウル」だ。斜度や木々の間隔がほどよく、バンクで加速できる面白さもある。
「ルスツはこうした沢地形が多いから、その両サイドに当て込んで加速しながら遊べる。加えてマッシュもたくさんあるので、ジャンプも楽しめます」

パウターンを刻むだけでなく、フリースタイルに楽しめる
rider: Yoshinari Uemura
ルスツはゲレンデ全体がフリースタイルの素材になっている。それは圧雪バーンも例外ではない。リフト効率のよさに加え、コース内に点在するノールやうねりが面白い。
「ちょっとオーリーしたら飛べるようなノールの地形があったり、コース自体がウネウネしているので、いろいろと遊べるポイントが多く点在しています」
ルスツがベストリゾートに選ばれる理由の一端は、ここにあるのかもしれない。当たり前の圧雪バーンが、すでに遊びの入口になっているのだ。
わずかな段差も許さない「職人圧雪」と、計算し尽くされた攻略動線
「グルーミングされたコース内でも地形が見えてくる。薄っすらとウネっているポイントを緩いバンクのように見立ててみると、気持ちよく滑れるラインを見つけることができます」

グルーマーのわずかな起伏に己をアジャストさせる
rider: Yoshinari Uemura
地形を読み解く滑りがコース内でできる。だからこそ、サイドカントリーの面白さも増幅するのだ。ルスツで30年以上滑り続けているクリエイター、ニール・ハートマンの証言で輪郭がさらに明確になる。
ルスツのコース設計は海外の会社が、斜面の起伏を3Dマップで起こしてから伐採・設定している。その結果、斜度変化が連なり、滑り応えのある斜面が続く。
そして、それを成立させるのが圧雪の精度だ。
「つなぎ目で段差ができてしまうと、カービングターンをしていて引っかかる。ルスツのオペレーターは、そのつなぎ目へのこだわりが強くて、ものすごく上手い」

パーフェクトに圧雪されたグルーミングバーンの気持ちよさは、面ツルパウダーにも匹敵する
削ってフラットにするのではなく、斜度変化を残したうえで、ターンが途切れない質に仕上げる。ルスツの圧雪が評価されるのは、そのためだ。
そして、ここに小川凌稀の視点を重ねると、ルスツは“攻略できる山”として立ち上がってくる。雪が降った朝はイゾラを目指す。ヘブンリービューから森へ抜け、イゾラ第4高速クワッドを軸に、森→コース→森の流れで回す。非圧雪のヘブンリーキャニオンも狙う。ヘブンリーキャニオンは沢筋で雪が溜まりやすく、1,850mのロングパウダーが楽しめる。競争率は高い。だからこそ“動線”が価値になる。
さらに見落とされがちなのが、ウエストの価値だ。凌稀はナイターも含めてウエストを推す。
「ウエストもオススメ。ファミリーや初中級者が多いから、パウダーが残っていることが多い」

ナチュラルなライディングスタイルから豪快なスプレーを巻き上げる
rider: Ryoki Ogawa
朝イチの競争が苦手な人にも、ルスツは逃げ道を用意している。これが、滞在のストレスを減らす。つまり、ルスツの面白さは「広いからどこでもいい」ではない。狙い方が具体的で、しかも複数ある。攻略の余白が、そのまま楽しさになっているのだ。
そのうえで、ルスツが面白いのはトップシーズンだけではない。3月以降も魅力だ。北向き斜面が多く、雪が解けにくいため、コンディションが長く保たれる。春に向かうほど、コース内の地形が浮かび上がり、パークも仕上がってくる。
トップシーズンだけでなく、長く滑れる山としての評価が、リピーターの層を作ってきた。ルスツは、パウダーだけの山でも、圧雪だけの山でもない。「スノーボードで楽しめる要素がすべてある」──国内外のプロスノーボーダーやメディアからも高い評価を得ている理由が、ここにある。
羊蹄山がフィルターになる。極上の“走るパウダー”を生む気象の奇跡
ルスツの雪は、ただ軽いだけではない。踏みごたえがあり、とても走る。この感覚を説明するには「降雪量」だけでは足りない。ポイントは、雪の降り方と湿度の抜け方にある。
ニールが語るのは、ニセコとルスツの「天候の差」だ。両者は車で30分程度の距離にあるが、その間に羊蹄山がそびえる。西高東低の冬型が強まり北西風が吹くと、ニセコには水分を含んだ雪が強く入る。いっぽうで、ルスツは同じ降り方をしない。
南岸低気圧や西からの寒気の入り方次第で、ルスツに雪が当たることがある。さらに、ルスツ南側の洞爺湖と海も関係している。
「海と湖からの水蒸気が雪雲を発達させて、それが山にぶつかって大量の雪を降らせる」
いわゆる“レイクエフェクト(湖水効果雪)”のことだ。こうした気象の話を理屈で終わらせることなく、ルスツの雪が「走る」という体感に落とし込むべきだろう。
ニールは、北海道の極端な冷え込みが生む“走らなさ”にも触れる。マイナス15~20℃まで冷え込むと、結晶がソールに刺さって板が走らなくなることがあるという。しかしルスツは、標高が極端に高くないぶん、雪質がややしっとりしているため、パウダーでもグルーミングでも走るのだ。
「ルスツの場合、15cmくらい降ってくれれば十分にパウダーを楽しめる量。標高が高いエリアより少ししっとりしているから、スピードも出ます」

スピード感あふれるパウターン
rider: Ryoki Ogawa
ここがルスツの強みだ。軽さだけを誇るのではなく、気持ちよさに直結する“走り”を実現してくれる。そして、雪質のよさはサイドカントリーの自由度と結びつく。ラインが多少入っていても、焦らなくていい。だから、結果として“遊び”が長く続く。
ルスツのJAPOWは、単なるブランドではない。地形・雪質・降り方・走破性が噛み合った“滑りの設計”として成立している。
ここまで読み進めると、ルスツは上級者限定のリゾートに聞こえるかもしれない。だが、どんなレベルのスノーボーダーでも楽しめるコース設計が魅力である。ファミリーや初心者でも楽しめるやさしい斜面も多い。ヘブンリービューは全体的に斜度が緩く、面がキレイに保たれているとニールも太鼓判を捺す。

眼下に広がるのがヘブンリービュー
さらに、イーストビバルディとイーストティーニュは、留寿都村を眼下に羊蹄山を拝みながら滑ることができる。西向きゆえ、午後の光が入る時間帯の景観が美しい。

右手が尻別岳、左手に羊蹄山を臨む
rider: Yoshinari Uemura
極上のパウダースノーから初心者に適したグルーマーまで。この懐の深さが、「JAPAN’S BEST SKI RESORT」に選ばれ続けている理由のひとつである。
滑りの質は「滞在」で決まる──ウェルネス、食、圧倒的な利便性
ルスツはライディングだけで終わるリゾートではない。滑ったあと、どう回復し、どう整え、翌日また気持ちよく滑るか。そこまで含めて滞在が設計されている。
ウエは雪上ドリフトで思わず「ひさしぶりに面白いなぁ」と言葉を漏らした。雪上ドリフトはスノーボーディングの代替ではない。雪山で遊ぶ感覚を、別の角度から再点火させる装置だ。そして面白いのは、その遊びがウェルネスへ滑らかに接続されていること。ドリフトのあと、彼はウェルネスルームへ戻っていく。

ライディング同様かそれ以上に、雪上ドリフトを楽しむウエ
「ここまでウェルネスに特化したホテルに泊まった経験はありません」
バレルサウナ、暖炉、ブランコのようなベンチ。部屋にいながらアウトドアの感触がある。彼が言う「最高級の状態を身体で覚えておきたい」は、贅沢自慢ではない。車中泊も含め、過酷なコンディションで滑り続けてきた人間が、最高に整った身体を基準として知っておくという感覚だ。「絶対に気持ちよく滑れるし、メンタルも整えられる」という言葉は、滞在型リゾートとしての説得力を一気に上げる。

広さ66㎡を誇る、12部屋完備されたウェルネスルーム・スイート
さらに、食でも整えるという発想がルスツらしい。「寿司割烹 雪花亭」は、ギルトフリーをテーマに砂糖やみりん、小麦粉を使わず、身体の内側からリセットする発想で組み立てられている。ウエが「罪悪感なく完食できました(笑)」とコメントを残しているように、この軽さがいい。ストイックを押しつけず、しかしコンセプトが強い。アフタースノーが付録ではなく、滑りの質を上げる工程として語れる。

カウンター8席のみの予約制。寿司が中心の創作割烹
そのほかにも、北海道の食材を使った本格ディナーから気軽に楽しめるブュッフェ、和食から洋食、居酒屋まで。バラエティ豊かな食体験が、滞在価値をさらに引き上げている。

北海道の味覚をビュッフェスタイルで楽しめる「オクトーバーフェスト」
そして、ルスツを語るうえで外せないのが、快適な滞在を後押しする環境のよさだ。ゲレンデ直結の3つのホテルはスキーイン・スキーアウトが可能で、移動のストレスが少ない。客室タイプも幅広く、ファミリー、グループ、アクティブシニアまで受け止める。

ホテルに入るまで遊び尽くせる
rider: Ryoki Ogawa
アクセスもいい。ニセコからはクルマで約40分、新千歳空港、札幌から約90分。新千歳空港と札幌からはシャトルバスも運行しており、雪道運転が不安な人でも安心だ。
ライディングの自由度、雪質のよさ、滞在の快適さ。この三拍子が揃っているからこそ、ルスツは「また戻りたい」リゾートとして支持されている。
世界が認める「JAPAN’S BEST SKI RESORT」に選出され続けている理由は、その“滑りたくなる感覚”が、滑り手の心に宿っているからだ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: Neil Hartmann, Jimmie Okayama




