COLUMN
平野歩夢、オリンピック3大会連続メダルの軌跡。15歳の銀、19歳の銀、23歳の金、そして27歳の挑戦
2026.01.02
いよいよ2月に開幕する4年に一度の祭典、ミラノ・コルティナ五輪。スノーボードが最大級の注目を集める舞台がやってくる。そこで、4大会連続出場をほぼ確実とし、オリンピック2連覇を目論むハーフパイプ王者・平野歩夢の、これまでの歩みを振り返りたい。以下の動画には、ソチ、平昌、北京五輪と続く3大会の軌跡が収められている。
無心で滑った15歳が、世界を動かした
2014年2月、ソチ五輪ハーフパイプ。15歳で挑んだ歩夢は、日本人スノーボーダーとして初のオリンピックメダルを銀で獲得した。さらに、冬季五輪史上最年少のメダリストとなり、瞬く間にスターダムへとのし上がった。
そのルーティンは、BSメロン→FS1080テール→CABダブルコーク1080ミュート→FS900テール→BS900メロン→FSダブルコーク1080トラックドライバー。ナイターにもかかわらず気温が高く、パイプのコンディションは芳しくなかったが、テイクオフやラインどりの正確性など、ベーススキルの高い歩夢はものともせず、素晴らしいパフォーマンスを発揮した。
五輪後のインタビューで、「とにかく楽しかった」という言葉を連発していたのが、今でも強く印象に残っている。中学3年生の歩夢は無我夢中でオリンピックを目指し、3大会連続のメダルがかかっていた憧れのショーン・ホワイトを表彰台から陥落させたのだった。
正しさが報われないことを、19歳で知る
2018年2月、平昌五輪ハーフパイプ。19歳で迎えた2回目のオリンピックは、4年前とは正反対だった。追われる立場となり、精神面で苦しめられた。それに拍車をかけるように、五輪開幕まで1年を切った2017年3月に行われた「BURTON US OPEN」で、肝臓と左膝内側側副靱帯を損傷するという重傷を負いながら、孤軍奮闘した。
戦いはショーンとの一騎打ち。歩夢のルーティンは、BSメロン→FSダブルコーク1440インディ→CABダブルコーク1440ミュート→FSダブルコーク1260インディ→BSダブルコーク1260ミュートという素晴らしい内容だった。
当時の限界トリックとされていたダブルコーク1440をバック・トゥ・バック(連続)で決めたうえに、ダブルコーク1260も両サイドで成功。大技を4連発したのだ。「息継ぎができないほどのルーティン」と歩夢は語っていた。そのうえで、ファーストヒットはあえてスピンではなくグラブトリックを投入し、高回転スピン時代へのアンチテーゼを投げかけながら、優雅に宙を舞ったのだ。
対するショーンは歩夢の4連コンボができなかったため、中間でFS540を挟む作戦に出た。呼吸と体勢を整えるためだ。オリンピック前まではショーンもファーストヒットでBSエアのグラブ技を放っていただけに、プライドを捨てて勝ちにきたのである。
ショーンの2ヒット目、CABダブルコーク1440のグラブはボードに届いておらずブーツグラブだったが、その点はジャッジに考慮されなかった。あえてグラブ技を入れたのちに4連続の高難度トリックをつなげるルーティンは評価されず、銀メダルに終わる。歩夢にとっては悔しいオリンピックとなった。
悔しさを力に変え、金をつかんだ23歳
2022年2月、北京五輪ハーフパイプ。記憶に新しいだろう、スケートボードとの二刀流で目指したオリンピックだった。コロナ禍の影響により、2020年に開催予定だった東京五輪が2021年へ順延。歩夢は2021年8月まで、スケートボードに集中する生活を余儀なくされた。
スケートボーダーとして生活する中でスノーボードのことを考えると、就寝中に寝汗を大量にかいてうなされることもあったと吐露していた。それほど極限まで追い込まれた状態だったにもかかわらず、スケートボードに集中した3年あまりの月日が、歩夢のスノーボードにおけるアクションをより研ぎ澄ませた。もともと高かったテイクオフやボトムラン、着地時のリカバリー力といったベーススキルが、さらに磨かれたことで超大技を習得したのだ。
さらに、平昌五輪で苦しめられた「追われる立場」から、自らスケートボードに挑戦することで「追う立場」となり、2大会連続メダリストでありながら、チャレンジャーとして頂点を目指すことになった。
2021年12月の「DEW TOUR」で先述した超大技、コンテスト史上初となるFSトリプルコーク1440に成功。その勢いのまま北京五輪に乗り込み、2本目のランでトリプルコークを含むルーティンを五輪の大舞台で決めるも、首位に立っていたスコッティ・ジェームスのポイントに届かなかった。ハーフパイプシーンの先駆者であるトッド・リチャーズは、アメリカのNBCで解説を務めていたが、放送中、このポイントに怒りをあらわにした。それほどの衝撃ランだったということだ。
その悔しさと怒りを集中力に転換し、あとがなくなった最終ランでは、あえて同じルーティンで勝負に挑む。FSトリプルコーク1440トラックドライバー→CABダブルコーク1440ミュート→FSダブルコーク1260インディ→BSダブルコーク1260ミュート→FSダブルコーク1440テールを、2本目を上回る精度でパーフェクトに決めたのだ。驚異の精神力。逆転劇を演じ、金メダルを手中に収めた。
幼き頃からの夢だったオリンピック金メダルを歩夢が初めて手にした大会で、ショーンが引退するというのも、どこか運命なのだろう。
金メダリストとして、再びスタートラインに立つ27歳
そして歩夢は、2026年2月に開催されるミラノ・コルティナ五輪で、オリンピック2連覇を目指すと公言したうえで臨む。
オリンピックイヤーとなる今シーズン、歩夢は絶好調だ。憧れの存在からライバルへ、そして心の友となったショーンが主宰するハーフパイプのプロリーグ「THE SNOW LEAGUE」で優勝し、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)初戦でも優勝を飾った。SAJ(全日本スキー連盟)が定める派遣推薦基準を満たしたことから、W杯2戦目はキャンセル。「まだ大会で出していない技がある」と公の場で発言しているだけに、現在はそのトリックに磨きをかけていることだろう。
27歳となった平野歩夢は、ハーフパイプ王者として再びスタートラインに立っている。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




