MOVIE
自然と滑りを“調和”させる、古き新しき表現方法。西村俊貴が雪山で描いた『HARMONIZE』
2025.12.19
米カリフォルニア州ベアマウンテンを舞台にしたパークムービー『SUNDAY IN THE PARK』などでの活躍から、西村俊貴に対して「パークライダー」というイメージを抱いている読者も多いだろう。
いっぽうで、ストリートでの撮影にも挑戦してきたものの、拠点とするカナダ・ウィスラーの街中は近年、十分な積雪に恵まれなかった。そこで俊貴が選んだのは、いわゆる“ストリート”に固執することではなく、雪山そのものへと視線を戻すアプローチだった。
本作『HARMONIZE』では、整備されたパークや人工物ではなく、雪山に点在するナチュラルヒット、雪解けによって露わになった岩、倒木といった自然の造形を舞台に、創造的なライディングを展開している。タイトルの“HARMONIZE”が意味するのは「調和」。それは単なる自然礼賛ではなく、雪山のあらゆる要素と自らの滑りを噛み合わせていくという意思表明のようにも映る。
コンテスト、ストリートを問わず、フリースタイルスノーボーディングは今なお著しい進化の途上にある。回転数や完成度を突き詰めることで、シーン全体がある種の均質さへと向かっていくのも事実だ。
だが俊貴は、その流れから一歩距離をとり、自然と向き合う選択をした。そこでは、技術の誇示以上に、地形を読み、雪を感じ、瞬間的な判断で身体を合わせていく創造力が試される。
その姿勢は、フリースタイルスノーボーディングの原点回帰とも言えるだろう。黎明期、パークやハーフパイプの環境が整っていなかった時代、ライダーたちは岩や木、地形そのものを使って遊び、滑りを拡張してきた。『HARMONIZE』に映る俊貴のライディングには、そうした記憶と現代的なスキルが重なり合っている。
フィルマーは、弊メディアでインターンを務めていた近藤碧音だ。現在は俊貴の専属フィルマーであり、彼自身もフッテージを刻んでいる。大学生からスノーボードのキャリアをスタートさせた碧音が急成長を遂げていることについても追記しておきたい。
これは近代スノーボーディングへのアンチテーゼなのかもしれないし、あるいは、その先に進むための別解なのかもしれない。少なくとも言えるのは、西村俊貴がいま、フリースタイルの可能性を“別の角度”から更新しようとしている、ということだ。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




