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ミラノ・コルティナ五輪への序章。W杯ハーフパイプ開幕戦で平野歩夢が優勝、日本勢男子が表彰台を独占
2025.12.12
ミラノ・コルティナ五輪代表を懸けた重要な戦いが始まった。FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)ハーフパイプ開幕戦が、中国・シークレットガーデンで行われた。1週間前にショーン・ホワイト主宰の「THE SNOW LEAGUE」が行われた同じ舞台だ。
そのSNOW LEAGUEを制した平野歩夢が、W杯初戦も優勝。ハーフパイプ王者の風格を漂わせる滑りを披露した。2位には戸塚優斗、3位に平野流佳が入り、日本人が表彰台を独占した。
今大会は14名が決勝に名を連ね、ひとり2本のランからベストポイントで争われる。近年、高難度化を極めるルーティンが勝敗を分けるだけに、2本しか滑ることが許されないというのは、ライダーたちにとって非常に厳しい条件だ。
そうしたなか歩夢は1本目、SNOW LEAGUEで公式戦では初となったスイッチバックサイドスピンを繰り出したが、その回転数をさらに上げて1260から入ると、CABダブルコーク1440→FSダブルコーク1260→BSダブルコーク1260→FSダブルコーク1440で93.5ポイントをマーク。スイッチBS1260の高さもさることながら、3ヒット目に投じたFSダブルコーク1260は、ジャパングラブを加え、グラブしていない反対の手を天高くかざしながらも、高回転スピンを巧みにコントロールした。表現力と独創性あふれる回転軸を生み出していた。降雪によりスピード調整に苦しむライダーが目立つなか、ラン全体を通して歩夢のエアの高さは際立っていた。
2本目はラストヒットでFSトリプルコーク1440を放つも、着地で大きく後傾となりポイントを塗り替えることはできず。結果的に1本目のポイントで逃げ切った形となった。
2位の優斗は、SNOW LEAGUEでは常軌を逸した高難度ルーティンを組み立てていたが、降雪の影響か、今大会ではそのルーティンを封印した。スイッチBS1260→CABダブルコーク1440→FSダブルコーク1620→BSダブルコーク1260→FSダブルコーク1260で90.25ポイントを記録した。
1本目に転倒して後がなくなった流佳は、予選トップ通過のため2本目も最後滑走となった。ファーストヒットで公式大会では史上初となるスイッチBS1440から入ると、BSダブルコーク1260→FSダブルコーク1440→CABダブルコーク1440→BSアーリーウープ540をクリーンにメイク。高得点が期待されたが、89ポイントと歩夢と優斗を上回ることができず、3位に滑り込んだ。
SNOW LEAGUEはハーフパイプのプロリーグ戦であり、世界中のトップランカーが招待されるが、スコッティ・ジェームスは出場していなかった。その理由は定かではなく、真の実力はベールに包まれたままだった。どのような滑りを魅せるのか注目されたが、ファーストヒットでCABダブルコーク1260からスイッチBS1080につなげるルーティンで勝負に出るも、やはりスピードに乗り切ることができず、これまでのようなエアの高さはなかった。2本とも制裁を欠き、10位に甘んじた。
女子は、1本目で決勝進出者10名のうち、わずか2名しかルーティンを完遂できない厳しい状態だった。
そんな中、16歳の工藤璃星は1本目からバック・トゥ・バック(連続)900を含むルーティンで88ポイントを叩き出した。トップで2本目を迎えるとさらにギアを一段階上げ、ラストヒットでFS1080をクリーンにメイク。自身の1本目を上回る90.25ポイントを記録した。予選2位通過のため、チェ・カオン(韓国)を残してトップに立っていた。
最終滑走となったチェは、スイッチBS720→BS900→FS1080→CAB720→FS720というルーティンを超絶クリーンにメイクした。女性ライダーではほとんど操ることができないスイッチBS720から、バックサイドスピンの最高峰である900につなげ、さらにFS1080へと展開する。彼女のポテンシャルの高さを示すルーティンだった。ポイントは92.75で璃星を抜き、優勝を飾った。
W杯ハーフパイプは、ミラノ・コルティナ五輪まであと3戦続く。熾烈なパイプ決戦は、まだ始まったばかりだ。
男子結果
1位 平野歩夢(日本)
2位 戸塚優斗(日本)
3位 平野流佳(日本)
5位 山田琉聖(日本)
7位 村上広之輔(日本)
12位 平野海祝(日本)
13位 重野秀一郎(日本)
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女子結果
1位 チェ・カオン(韓国)
2位 工藤璃星(日本)
3位 ツァイ・シュートン(中国)
8位 大橋空奈(日本)
9位 小野光希(日本)
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text: Daisuke Nogami(Chief Editor)




