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スー・イーミンと木村葵来が極限の1980バトル。表現者レネ・リンネカンガスは唯一無二の1440&1260で3位に。W杯ビッグエア詳報
2025.12.07
FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)ビッグエア第2戦が、中国・北京で開催された。舞台は北京五輪と同じビッグエア首鋼。同五輪のビッグエア金メダリストとして、そして地元の英雄として名を轟かせているシャオミンことスー・イーミンが、開幕戦に続く2連勝を飾った。その勝ち方には、ビッグエア王者としての風格が漂っていた。
シャオミンは1本目にBS1980ノーズグラブを完璧に決めて89ポイント、続く2本目もスイッチBS1980メロンで88.5ポイントを記録。回転方向の異なる2トリック合計177.5ポイントとし、早々に優勝争いの主導権を握った。
その牙城に迫ったのが木村葵来だ。1本目にBS1980メロンで87ポイント、2本目にはスイッチBS1800ミュートを成功させ、合計175ポイントでわずか2.5ポイント差。シャオミンより180回転数を抑えたスイッチBSスピンで食らいつき、勝負は最終3本目へともつれ込んだ。
3本目は下位選手からの出走となるため、2位につけていた葵来が先にドロップイン。選んだのは、巨大なスイッチBS1980インディ。完璧に雪面をとらえ、91.25ポイントを叩き出して逆転。トップに躍り出た。
それでもシャオミンは揺るがない。スタート直後に手を打ち鳴らし、気合いを込めて自らを鼓舞すると、2本目よりも放物線の大きさが明らかに増したスイッチBS1980メロンをパーフェクトストンプ。92ポイント。圧巻の強心臓ぶりで葵来を突き放し、2連勝を飾った。着地後にボードを大きく放り投げた姿には、王者としての重圧から解放された素直な喜びがにじんでいた。
トップ争いに目が奪われがちだが、今大会でもっとも特筆すべき存在は3位に入ったレネ・リンネカンガス(フィンランド)だ。現在のW杯は、高回転の完成度を磨き続けなければ勝てない領域に突入している。しかしレネは、競技者であると同時に映像作品を中心とした“表現者”としても活動し、その両立を世界最高レベルで体現している稀有なライダーである。
1本目に放ったノーリーBSロデオ1440テールグラブ(公式記録はノーズバター・ロデオ1440)は、95ポイントという今大会トップの得点を叩き出した。まるで彼にしかできない、創造性と技術力が融合した一撃だった。
さらにスイッチBSダブルロデオ1260ステイルフィッシュというオリジナル性の高いトリックも成功させ、合計176.25ポイント。1980以上がないと勝てない近代ビッグエアバトルに、4回転で殴り込んで存在感を示した。表現力が技術力を超えうる場面を、レネが作り出した。
もうひとりの日本人ファイナリスト・宮村結斗は、1本目にBS1980メロンで89.5ポイント、2本目のFSトリプルコーク1800インディでも着地をまとめ、表彰台圏内に迫った。しかし3本目、FSトリプルコーク1980は惜しくも着地が決まらず、表彰台には届かず。バックサイドスピンが主流となる1980の中で、フロントサイドの1980を投じた姿勢には大きな価値がある。世界のトップレベルに肩を並べる滑りを披露した。
女子は第1戦に出場していなかったミア・ブルックス(イギリス)が圧勝。1本目はBS1260メロンを、2本目にはCAB1440ステイルフィッシュを完璧にまとめ、2位のハンナ・カラー(オーストリア)に約30ポイントの大差をつけた。彼女特有のスリーピースタイルと高回転スピンが融合した、圧倒的な完成度を誇っていた。
3位には鈴木萌々が食い込んだ。1本目のBSダブルコーク1080ミュートは着地が乱れたが、2本目にFS1080ミュートへ切り替えて成功。3本目には再びBSダブルコーク1080に挑み、見事メイク。失敗を引きずることなく、場面に応じた戦略的なトリックチョイスで最後に取り返した。18歳とは思えない試合巧者ぶりだった。
鬼塚雅は1本目のCAB1260ミュートを完璧に決めて首位に立ったものの、2、3本目のBSダブルコークで転倒。村瀬心椛は3本目にFSトリプルコーク1440ミュートという超大技を投じたが、着地はわずかに合わなかった。
W杯ビッグエアは、12月11日開幕のアメリカ・コロラド州スティームボートで最終戦となる第3戦を迎える。息をのむハイレベルな戦いが続くなか、さらなる日本勢の躍動に期待したい。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
男子結果
1位 スー・イーミン(中国)
2位 木村葵来(日本)
3位 レネ・リンネカンガス(フィンランド)
4位 宮村結斗(日本)
18位 国武大晃(日本)
19位 荻原大翔(日本)
37位 木俣椋真(日本)
56位 木村悠斗(日本)
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女子結果
1位 ミア・ブルックス(イギリス)
2位 ハンナ・カラー(オーストリア)
3位 鈴木萌々(日本)
5位 鬼塚 雅(日本)
6位 村瀬心椛(日本)
11位 村瀬由徠(日本)
27位 深田茉莉(日本)
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