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オールカーボンボードの進化が止まらない。誕生30年のYONEXが切り開く、次なるステージ
2025.10.31
トップ画像: (左から)戸塚優斗、清水さら
誕生から30年。進化し続けるカーボンボード
「世界初。全身カーボン。」──そのキャッチコピーを掲げ、Yonex(当時はGATTA)がスノーボード業界に参入したのは1995年。バドミントンやテニスのラケット、ゴルフクラブの開発で培った独自のカーボン技術を結集して誕生したオールカーボンボードは、「優れた反発性としなやかさ」「圧倒的な軽量性と耐久性」という一見相反する特性を両立。発売当初から大きな話題を集めた。
 

 
あれから30年。新素材の開発やナノ技術の応用、そして何よりカーボンテクノロジーの進化によって、Yonexのボードは今や世界的に高い評価を確立している。特に近年のハーフパイプシーンでは、「X GAMES」やワールドカップをはじめとする国際大会で、チームライダーたちが輝かしいリザルトを残してきた。
 
では、カーボンボードの何が優れているのか。
 
昨年の記事でも触れているが、要点を簡潔にまとめるとこうだ。まず、人の手によって作り出されるカーボンボードは、ウッドボードに比べて個体差が生じにくく、常に高い品質を一定に保てること。そして、特性の異なるカーボンの配置や組み合わせを変更することで、「ある方向には硬く」「ある方向には柔らかく」といった具合に、フレックスやトーションを精密に設計できる自由度の高さを備えていることである。
 
結果として、あらゆるスノーボーダーが求めるフィーリングをモデルごとに明確に設計できる。カービング、グラウンドトリック、パーク&ハーフパイプ、そしてパウダーに至るまで、Yonexのボードが多様なスタイルに対応し、ハイレベルなライディングをサポートできるのは、こうした設計思想にあるわけだ。
 
そしてこの冬は、4年に一度の大舞台を迎えるシーズン。ここからは、その頂点を狙うチームライダーふたりの、それぞれの相棒に迫っていく。
清水さらの相棒「SLEEK(スリーク)」
15歳を迎え出場が許されたワールドカップ2戦目で、いきなり優勝。「X GAMES」では銅メダル、世界選手権では銀メダルを獲得。昨シーズンの主な戦歴を挙げるだけでも、清水さらの強さが本物であることがわかる。高さのある放物線を描く900や1080を美しいスタイルでメイクする姿は、高校1年生と思えないオーラを纏っている。そんな彼女の相棒が、女性用オールラウンドボードの“SLEEK”だ。
 
「SLEEKは、柔らかくてすごく乗りやすいんです。もう3年くらい乗っていますが、他モデルも試しても、23.5cmのブーツを履く私には、幅が少し広かったり、硬さが気になったりして……。ボードの幅が太くなると、ツマ先とカカトが雪面から遠くなって感覚が鈍くなっちゃうから、ハーフパイプでは柔らかめで細身のモデルが私には合うんです。SLEEKは女性の筋力や骨格を考えた設計だから、本当にバランスがよくて、めちゃくちゃ乗りやすいんですよ」
 

15歳とは思えない貫禄の滑りを支えるSLEEK
 
先にも述べたとおり、Yonexのカーボンボード最大の強みは、カーボンの配置や組み合わせにより、フレックスやトーションを精密かつ微細にコントロールできること。それに加えてSLEEKには、従来よりも高い振動吸収性と粘り強い強度を持つカーボン素材のナノメトリックが使われている。その効果は、次の清水の言葉に耳を傾ければ合点がいく。
 
「柔らかくて扱いやすいのに、カーボンならではの反発力の強さで飛びやすく、エアの高さも格段に上がりました。トランジションでボードを踏み込んでスピードに乗せるときも、その反発力がすごく活きていると思います」
 
そして、SLEEKにまたがる清水が急成長を遂げた理由が、スイングウエイトの大幅な軽量化に成功したCRIC(クリック・遠心力軽減コア)にある。これは、耐性・反発性・安定性を損なわないようにカーボンチューブで補強しつつ、ノーズとテールの先端ギリギリまでアラミドハニカム(コア材としてもっとも重要な高強度と軽量性を併せ持った蜂の巣状の素材。曲げ弾性率が小さいため、ヘタリも発生しにくい)を敷き詰めた特殊なコアのこと。SNSで大きな話題を集めたFSダブルコーク1080成功の背景には、2022年に登場したこのテクノロジーがあるのだ。
 
「確かにスピンしているとき、ボードがめっちゃ軽いんです。スピンだけじゃなく、普通に滑っているときのターンの切り返しでも軽さを感じるかも。手で持ったときも軽くて、友達が私のボードを持ったときビックリしてました」
 
柔らかさと反発力を両立し、手にした際の軽さと乗ったときの軽快さを兼ね備えるSLEEK。ボード自体の進化とともに、彼女の飛躍を支える一本だといえる。
戸塚優斗の相棒「REV(レブ)」
2017年、ワールドカップ初出場で初優勝を飾って以降、常にハーフパイプシーンの最前線で戦い続けてきた戸塚優斗。2020-21シーズンには、「X GAMES」を含む出場した全大会で優勝するという快挙を達成。昨シーズン、ショーン・ホワイト主宰の「THE SNOW LEAGUE」でも初代王者に輝いた。名実ともにトップランカーである彼の相棒は、Yonexが誇るハイパフォーマンスボード“REV”だ。
 
「中学2年くらいまではSMOOTHに乗ってましたが、コーチだった(青野)リョウくんに『一度、REVを使ってみなよ』と勧められ、借りて滑ったら調子がよすぎて。何がよかったかというと、一番は反発力。リップからパンって跳ね上がる感覚があって、エアの高さが一気にアップしたのを今でも覚えてます。それからはREVひと筋ですね」
 
SMOOTHがノーマルキャンバーなのに対し、REVはキャンバーのたわみを30%アップさせたアルティメットキャンバーを採用。その効果により、リップでのスナップ力を格段に向上させている。さらに、高強度と高弾性を両立する次世代カーボン繊維のトレカ®M40Xや、ボックスチューブ両端に高弾性カーボンを複合することで自在な操作感はそのままに、反発性をさらに高めるポップランチャーなど、最先端カーボン技術を注ぎ込んだ。
 

圧倒的なエアの高さを生み出すREV
 
「身体の成長とともに筋肉がついてきたので、もっと頼れるボードを探してました。SMOOTHよりフレックスもトーションも硬めだったので、ピッタリだったんだと思います。ボードの反発力を活かした高いエアが連発できるようになっただけでなく、着地の安定感も大幅にアップしました」
 
また、戸塚はヨネックスの工場(新潟県長岡市)を訪れ、自らフィードバックを細かく伝えてきた。
 
「使用するカーボンの素材や配置位置などを細かく変えてもらいながら、部分的に硬さを増してもらったりなど、ライダーが求めているもの、今のコンテストシーンに必要な性能を伝えてきたことで、ボード自体も進化していると思います。あと、REVはこれまでより、さらに軽くなっている。手で持っても乗っても軽いのに、安定性もアップしているのはすごいですよね」
 
これまで磨きをかけてきた最先端のカーボンテクノロジーと、熟練の職人が一本一本を丁寧に作り上げるクラフトマンシップの融合。その結晶といえる仕上がりだ。
 
さらに、REVにもCRICを搭載。「反発が強くてエアの高さを出しやすい分、回転数を増やせるというのもあるけど、スピン自体のキレが以前より増したと思います」と、戸塚もその効果を実感している。
 
加えて、デザイン面でも戸塚のこだわりが反映されている。「好みのアウトラインにしてもらうために、ノーズやテールの形状を少し角張った感じにしてもらいました」とのことだが、ここにもYonexの技術が潜んでいる。テニスラケットのスウィートエリアを拡大する際に用いられる、Yonexの独自理論が応用されているのだ。結果、REVもノーズとテールのスウィートエリア(ボードをもっとも効率よくコントロールできる、ライディング中にバランスがとりやすい立ち位置のこと)が拡大。着地時のさらなる安定性に繋がっている。
 
「きちんと扱うためのパワーが必要だったり、コントロールはシビアですが、しっかり制御できればものすごいパフォーマンスを発揮してくれるボード。F1マシンみたいなイメージですね」
 
FSトリプルコーク1440を組み込んだルーティンでリザルトを残し、SNSにアップしたようにFSダブルコーク1620にも自信をにじませる。REVの進化が、戸塚のライディングを未知なる領域へと誘う。
SLEEK 142
SLEEK 142

▷全長: 142.5cm
▷有効エッジ長: 108.5cm
▷ウエスト幅: 23.4cm
▷サイドカーブ半径: 6.9/7.3/6.9m
▷セットバック: 1cm
▷サイズバリエーション: 138、146cm
▷プロファイル: ノーマルキャンバー
▷シェイプ: ディレクショナルツイン
▷価格: 104,500円
細部まで日本人女性にジャストフィットするよう徹底的にバランス調整された、高性能オールラウンドモデル
REV 153
REV 153

▷全長: 153.5cm
▷有効エッジ長: 119.5cm
▷ウエスト幅: 24.4cm
▷サイドカーブ半径: 8.45/8m
▷セットバック: 1cm
▷サイズバリエーション: 150、156、159cm
▷プロファイル: アルティメットキャンバー
▷シェイプ: ディレクショナルツイン
▷価格: 119,900円
強度と弾性を両立した特殊カーボンを内蔵した、世界の頂点に挑むためのハイパフォーマンスボード





 
        