BACKSIDE (バックサイド)

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気候変動、デジタル化の遅れ、世代交代。世界のスノーリゾートがいま直面している現実とは?

2025.07.04

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世界のスノーリゾートが抱える課題と展望をまとめた「国際スノー&マウンテンツーリズムレポート2025」が、観光産業ニュース「トラベルボイス」によって紹介された。内容を見ていくと、世界68カ国、2,000以上のゲレンデを調査対象とした同レポートからは、地球規模の気候変動や社会経済の変化、デジタル化の遅れといった、現代のゲレンデが直面するリアルが浮き彫りになっている。
2023-24シーズンのゲレンデ訪問者数は、世界全体で約3億6,600万回。過去20年の平均を維持したが、訪問回数の7割以上が、世界730の大型ゲレンデに集中している。また、日本は世界5位の規模を誇るにもかかわらず、訪問者数の減少がもっとも顕著で、コロナ前の水準には戻っていない。これは、国内スノー業界にとっても見逃せないデータだ。
注目すべきは、ゲレンデに訪れる動機の1位が「晴天」である点。雪質の良し悪しよりも、気持ちのいい青空が人を呼ぶ傾向が強まっており、ゲレンデ運営サイドは新たなアプローチが求められている。
気候変動の影響はすでに現れており、たとえばスイスでは過去15年で訪問者数が減少。その約4割はシーズン短縮によるもので、残りは中産階級の減少やレジャーの多様化など、社会的要因が関係している。
さらに、業界全体のデジタル対応も遅れが目立つ。オンラインでの予約・決済体制が不十分なゲレンデが多く、スノーボーダーが気軽に旅の計画を立てづらい現状がある。API連携による柔軟なパッケージ化が、今後の鍵を握る可能性が高い。
そして、アメリカでは物価高やアクセス難を理由に、国内よりもヨーロッパや日本のゲレンデへの関心が高まっている。米国内の1日リフト券が300ドル超という現実も、海外志向を後押ししているという。こうしたニーズに対して、日本のスノー産業がその受け皿となる可能性も十分にある。
世界的に見ればスノー人口は増えているが、リピーターの育成や若年層への訴求といった世代交代の課題も指摘された。特に欧米では、長年業界を支えてきたベビーブーマー世代の減少が影響しており、新たなカルチャーの担い手が必要とされている。
いま、世界のゲレンデは大きな変革期にある。それは日本に暮らすスノーボーダーにとっても、他人事ではない。

photo: Neil Hartmann

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