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ショーン・ホワイトが未来のスノーボーダーたちに託した想い。強いアメリカよ、再び
2025.06.21
1980年代、スノーボードがまだ“アウトロー”だった時代。その中心にいたのは、アメリカ西海岸をはじめとする自由なマインドを持った若者たちだった。ゲレンデでは滑走が許可されないなかで、彼らはバックカントリーや自作のハーフパイプでトリックに挑み、フリースタイルスノーボーディングというカルチャーを育んでいった。
やがて90年代に入り、そのムーブメントは世界へと広がり、1998年にはついにオリンピック正式種目としての扉を開く。以降、アメリカはスノーボードの本場として進化を続けてきた。特に男子ハーフパイプでは、2002年ソルトレイクシティ五輪での表彰台独占に象徴されるように、世界を牽引する存在だった。
だが、あれから20年──現在では、日本人ライダーたちがFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップや「X GAMES」で躍動し、圧倒的な存在感を放っている。90年代には予選突破すらままならなかったことを思えば、その進化スピードには驚きを隠せない。こうした進化の背景には、世界に先駆けてエアバッグ施設を開発・普及させた、日本独自の育成環境があったのだ。
こうした流れのなか、アメリカ・オレゴン州のWindell’s Campに、北米最大規模となるエアバッグ施設が完成した。プロジェクトを牽引したのは、オリンピック3連覇を果たしたショーン・ホワイト。彼が出資するWy’East Mountain AcademyやHigh Cascade Snowboard Campといった育成機関が一体となり、U.S. SKI & SNOWBOARDチームの育成プログラム「PROJECT GOLD」の一環として、この施設を完成させた。
オーストリア製の「BANGER BAG」を導入したこのエアバッグは、ショーン自らがセッションに参加し、スーパーマン・フロントフリップで完成を祝福。その姿には、現役時代と変わらない遊び心とパッションが宿っていた。
「ここは本当に特別な場所。かつて僕がバンで寝泊まりして、ロッジで歯を磨いていた頃から、すべてが始まったんだ」と語るショーンの言葉からも、この施設にかける想いがにじみ出ている。
エアバッグは、限界突破のための“道具”であると同時に、次世代の才能が開花する“舞台”でもある。日本がいち早くこの環境を整備したことで、世界のトップシーンに多くの若手ライダーを送り出したように、アメリカの再興も、この新たな施設を起点に加速していくのかもしれない。
そして、その動きの先頭に立つのが、現役引退後も変わらずスノーボードの未来を見据えるショーン・ホワイト。いまもなお、コンペティションシーンの“裏側”で、大きな存在感を放っている。