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ローカルと滑りで言葉を交わす、春の西海岸トリップ。亡き仲間に捧げるBOARDSLIDE WORLDWIDE最新作『Pour One Out』
2025.06.07
カメラを回すのはメディアのためじゃない。自分たちのために、仲間のために。BOARDSLIDE WORLDWIDEの最新ムービー『Pour One Out』は、そんな純度の高いスプリングセッションを映し出す。
本作の舞台は、アメリカ西海岸のスノーリゾートを北上していくロードトリップ。パウダースノーを求めて大斜面に挑むトップシーズンとは異なり、陽光とザラメ雪、そしてローカルコミュニティとのセッションに重きを置く。プロスノーボーダーのオースティン・スウィーティンがトリップに興じる姿を、映像作家のショーン・ルーシーがスノーボーダーのために撮る、リアルな旅の記録だ。
幕を開けるのは、カリフォルニア州マンモスマウンテンで行われた「WORLD QUARTERPIPE CHAMPIONSHIPS」に向けたミニパイプでのウォームアップセッション。オースティンのサーフライクなラインと、往年のスノーボーダーにはたまらないライディングスタイルが光る。さらに、アクションの一つひとつに「こう滑ってみたい」と思わせる説得力が宿っている。カムイみさかのインドアハーフパイプに通うような読者にとっては、間違いなく見応え抜群のフッテージの数々だ。
続く「RALLY FOR ROCKER BACKCOUNTRY BANKED SLALOM」では、ドナーサミットの残雪に刻まれたクォーターを、ダニー・デイビスや片山來夢らとともに駆け抜ける。さらに、ワシントン州マウントベイカーではマックス・ワービントン主宰の「BRAIN BOWL」、マット・ウェインハウス主宰の「SESH UP」にも参加。春特有のコーンスノーを楽しみながら、ローカルスノーボーダーたちと滑りで語り合う姿が描かれている。
ムービーの概要欄に綴られているとおり、BOARDSLIDE WORLDWIDEが映像に込めた想いが明かされている。今年の春、尊敬する仲間であるジェフ・キーナン、アレックス・パシュレー、ジェイソン・レムプルの3人がこの世を去った。だからこそ、亡き仲間たちに酒を捧げるべく、タイトルは『Pour One Out』を銘打たれたのだ。
「スノーボードコミュニティは強い。深いルーツがあり、そんな春に立ち返れたことは、僕たちにとって必要な時間だった」と綴られているオースティンとショーンの言葉は、観る者の胸にも響くだろう。コアなライディングが詰まった映像作品であると同時に、スノーボーダーが何に突き動かされて滑っているのか──その本質に触れることができる作品でもある。