BACKSIDE (バックサイド)

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いま、日本のスノーリゾートが直面しているリアル。倒産ゼロの背景に見え隠れする希望と課題

2025.06.03

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24-25シーズン、日本全国のスノーリゾートを運営する企業において倒産件数が7年ぶりにゼロだったと、帝国データバンクから発表された。しかし、その背景には一時的に恵まれたシーズンであったことと、継続性に対する不安が同居している。
レポートによれば、24-25シーズンは全国的に降雪に恵まれ、平均営業日数は101.5日と、23-24シーズン(100.8日)より0.7日延びた。シーズンを通して営業が実現できたスノーリゾートも多く、香港・台湾・東南アジアからの訪日客によるインバウンド需要も後押しとなった。
 

「『スキー場』の倒産動向(2024 年度)」より

 
また、地域連携による共通シーズンパスの導入や、ファミリー層・若年層をターゲットにした取り組みなど、工夫を凝らしたゲレンデも目立ち、好調を支えた一因となった。
いっぽうで、中小規模のスノーリゾートではいまだ課題が山積みである。たとえば、リフトや設備の老朽化、それに伴う修繕・更新コストの問題、慢性的な人手不足、そしてなにより、若者のスノーボードやスキー離れが深刻だ。
さらに、雪不足の懸念が常につきまとう暖冬傾向のなかで、持続可能な運営体制を築くことの難しさも無視できない。実際に来シーズンの営業継続を断念するスノーリゾートの話もある。
こうした状況のなかで、新たな打ち手として注目されているのが、夏でも滑走可能な人工ゲレンデの導入である。特殊マットを敷いた人工雪面によって、ウィンターライクな環境を年間通して提供しようという試みだ。実際にこのような動きはすでに始まっており、「一年中雪のあるライフスタイル」を叶える一歩としても注目されている。
倒産ゼロという事実は、確かに喜ばしい結果である。しかしそれは、降雪に恵まれたシーズンだったからこそ実現できた、一時的な安定に過ぎないのかもしれない。だからこそ、いま問われているのは、この人気と活況を、どう持続可能な形に転換していくかということだ。
スノーボーダーやスキーヤーにとって“雪のある日常”が今後も続いていくために、リゾートをどう存続させるかという問いは、決して運営者だけのものではないはずだ。

photo: Marshall Ho(Unsplash)

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