
COLUMN
リフトが動いているのは当たり前じゃない。私たちスノーボーダーを支える者たちの朝に思いを馳せて
2025.05.26
「当たり前」に見えるものほど、その裏には想像以上の努力が隠されている。
早朝、まだ夜が明ける前から山に入り、凍てついたリフトタワーの点検と処理にあたるリフトメンテナンスクルー。彼らの仕事は、誰よりも過酷で、誰よりも目立たない。
米カリフォルニア州に位置するマンモスマウンテンが公開した、リフトメンテナンスを題材とした動画では、こんな声が聞かれる。
「湿気を含んだ嵐が金属を凍らせる。タワーのすべてを回って処理しなければならない。1基ごとに1分半から2分かかる」
たとえ1基につき数分の作業でも、それが何十、何百と積み重なる現実。それでも彼らは、自分たちの仕事に誇りを持っている。
「だからこそ懸命に働くのさ。ゲストに楽しんでもらいたいと願っているからこそ」
リフトが動くのは、雪があるからでも、電力が通っているからでもない。それ以前に、動かすための人間の手と、そのために費やされる朝があるからだ。
そしてこの光景は、マンモスマウンテンに限らない。日本を含む世界中のスノーリゾートで、こうした作業が地道に行われている。
リフトに乗るたびに歓声は上がらない。だが、私たちのライディングは、彼らの誇りによって確実に支えられている。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)