BACKSIDE (バックサイド)

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半世紀の歴史に幕が下ろされる。降雪量に恵まれたニュージーランドのマウントドブソンが売却へ

2025.05.25

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ニュージーランド南島の内陸部、マッケンジー盆地に位置するマウントドブソンが、50年にわたる家族経営の歴史に幕を下ろす。運営を続けてきた創設者、82歳のピーター・フット氏がゲレンデの売却に踏み切ったと、地元紙である「New Zealand Herald」など複数のメディアが報じている。
マウントドブソンは、標高1,740mという南半球でも屈指の高所にあるゲレンデの駐車場を起点に、乾いた雪質と開けた斜面、そして南アルプスとマウントクックに連なる景色の美しさで知られている。ゲレンデ面積はおよそ162ヘクタール(東京ドーム約35個分)あるので、日本のスノーリゾートと比較すると大規模なリゾートに分類される。4本のリフトを備え、少人数での運営ながら、安定した積雪量によって地元客にも長年愛されてきた。
この場所は、フット氏が1970年、農夫とともに空を飛んでいた際に偶然見つけた斜面から始まったという。1976年、当時の資金で中古のブルドーザーを購入し、自らアクセス道路の建設に着手。3年をかけて開通させ、その後はロープトウ、Tバー、初心者エリアなどを地道に整備し、1979年にゲレンデとして開業した。
「雪不足で営業できなかった年は一度もなかった」。そう語るフット氏の言葉どおり、このゲレンデは自然条件と地形に恵まれた稀有なロケーションを背景に、幾度かの厳冬や経営危機を乗り越えてきた。
売却の理由は、本人の年齢と、運営から手を引いた息子たちの決断にある。現在も営業を続けており、リスティングは不動産大手のBayleys Realtyを通じて行われているのだが、価格の詳細は明かされていない。僕たちのような一般スノーボーダーにとっては縁遠い話かもしれない。しかし、もし本気で山を買ってみたい実業家スノーボーダーがいるとしたら、その条件としては十分に魅力的に映るはずだ。
かつては、クラブフィールドでの軋轢をきっかけに、フット氏が「なら、自分でつくってしまえ」とイチから切り拓いたこの場所。今、その意思とともに整備されたゲレンデが、次なる継承者を待っている。

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