BACKSIDE (バックサイド)

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40321

COLUMN

「春」──それは“上手くなる”ための季節

2025.04.17

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トップシーズンの凍てつくピリッと張り詰めた空気も好きだけど、春のゲレンデにはスノーボーダーを育てる余白がある。
 
朝陽が昇る頃、ピステンの効いた斜面に一番乗りできたら──そこにはまるで、パウダーライディングのような浮遊感を味わえる面ツルのコーンスノーが待っている。氷の粒が敷き詰められたようなザラメ雪は、見た目以上によく走る。その特別な感触に出会えるのは、春の朝だけだ。
 
けれど、ハイシーズンのようにエッジを立ててしまうと、雪に刺さってボードコントロールを失いやすい。そこで試してみたいのが、よりソール面で“踏む”ような滑り。カービングで彫られた浅い凹みをたどるように、雪面の反発を受け止めながらラインを描く。その感覚に気づいたとき、滑りがまた一段深まる。
 
時間の経過とともに雪はより重くなり、スピードは落ちる。でも、思うように滑れない春の雪は、ボードコントロールの精度を養うにはちょうどいい負荷。トップシーズンに比べれば転倒しても痛くないから、新しいトリックにも挑戦しやすい。
 
気温が上がれば、身体も軽くなる。フーディーやシャツといったラフなスタイルも、自由さを後押ししてくれる。びしょ濡れになるけど、それも春の面白さ。
 
「春」──それは“上手くなる”ための季節。
自分自身の“気持ちいい”を追いかける時間。
 
そこで培った滑りが、次の冬へつながる。

text + shred: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photo: ZIZO=KAZU

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