BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

サイドカントリー天国「ルスツ」の春はグルーマー&バンク天国。安藤健次が“二刀流”で当て込みまくった一日ルポ

2025.03.04

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北海道・ルスツリゾートは、ほとんどのツリー内が自己責任エリアとして開放されているため、パウダーラバーたちが愛してやまない“サイドカントリー天国”である。それ故に、グルーミングバーンに話題が転じることが少ないのかもしれない。断言しよう。ルスツの圧雪技術は折り紙付き。超絶気持ちいいカービングターンを刻むことができるのだ。
 
加えて、今シーズンから複数箇所に人工バンクが出現し、よりフリースタイルに遊べるコースが増えた。さらに、3月から一部のコースでスノースケートが解禁となっている。というわけで、スプリングシーズンもルスツを最大限に楽しむために、スケートボードも巧みにこなす遊び上手な男、アンディこと安藤健次にスノーボードとスノースケートの“二刀流”で滑ってもらった。

サイドカントリーを攻める必要がないほど価値あるグルーマー

「ルスツはパウダーもいいけど、グルーミングがすごくキレイだからターンが楽しい。めちゃくちゃスピードを出して身体を倒したカービングターンをしても、エッジが飛ばされることがまったくない。今日は天気がよくて景色も素晴らしかったから、最高でしたね」

 

羊蹄山と尻別岳を眼下に、美しいグルーマーをビッテリーターンで駆け抜けるアンディ

 

前日の降雪はほとんどなかった2月下旬、本記事の撮影は行われた。まずはMt. Isola(イゾラ)のピークを目指すため、朝イチのイゾラゴンドラに乗り込む。ゴンドラを降りると、目の前にはノートラックのパウダーバーンにも引きをとらない、極上のグルーミングバーンが広がっているではないか。52歳の誕生日を迎えたばかりのアンディの後ろを滑らせてもらったのだが、ビッテリーターン、バタートリック、スケートライクなアクションなどすべてにおいて、ノーズからテールまでを自在に操っていた。前述したようにスケートボードも確かな腕前を誇るだけあり、プロスノーボーダーの中でも特段に“板に乗れている”男だ。

 

ハイスピードから繰り出されたこのノーズプレスを見れば、上述した言葉の意味がわかるはず

 

しかし、ルスツについての感想を求めた際、開口一番に出てきた彼の答えは、本章の冒頭にあるように「ターンが楽しい」のひとことだった。
 
「キレイに(圧雪車で)踏まれているグルーマーは段差が一切なく、斜度もいいから大きいターンができます。コースを滑っていてもノールしている地形が多くて、向こう側は見えないんだけど、危険な感じではない。そのノールを活かしてカービングターンを刻むんですが、めちゃくちゃ気持ちいいんですよね。オレの場合はそこで踏むけど、仮に踏めなかったとしてもエッジが気持ちよく入っていくから、平坦なバーンでカービングしているよりも3D感が味わえて楽しい」

 

圧雪技術がアンディのヒールサイド・ビッテリーターンをより昇華させる

 

本記事の写真を撮影してくれたニール・ハートマンは長きに渡ってルスツを滑り込んでおり、その歴史についても詳しいのだが、昨シーズンお届けした「サイドカントリー天国を30年以上滑り続ける男が語るルスツ攻略法」の中で、その斜面の秘密について教えてくれている。30年以上前に策定されたルスツのマスタープランを見たことがあるそうで、斜面の起伏を3Dマップで起こしてから木を伐採してコース設定を行っているんだそうだ。これを聞けば、アンディが語ってくれたことと合点がいく。

 

アンディの目線の先にバーンのうねりが見てとれる

 

また、3月も降雪が期待できるルスツだけに、アンディはこんな耳寄りな情報も教えてくれた。
 
「グルーミングされた上に朝降った雪が乗っているときが、最高に気持ちいい。サイドカントリーに行く必要がないほどだね。サイドカントリーはいろいろな人が入ってガタガタになって、その上に雪が積もるわけだから。それはそれで面白いんですけど、歩いてバックカントリーの面ツルの斜面を探しに行ったとしたら、その下がガタガタってことはないよね。だから、しっかりミルをかけてくれた上に雪が乗ったときが、バックカントリーの一枚バーンを滑っているような気持ちよさを味わえるんです」


春のルスツをフリースタイルに遊べる「フリコ沢コース」

適度な斜度の「イゾラグランコース」などを滑り倒した一行は、緩斜面の「フリコ沢コース」へ。ライダーズライトにナチュラルヒットが点在するフリコ沢の魅力を最大限に引き出すため、今シーズンから新たにウェーブバンクが造成されたからだ。
 
「フリコ沢は斜度がないからスピードを出せないことが欠点だったんですが、人工バンクができたことで加速して滑れるようになりました。これまでは基本的にフロントサイドの地形で遊ぶしかなかったから、バックサイドにもバンクができて当てられるようになって、Sラインで滑れるようになったのはいいですね。ナチュラルヒットに加えてバンクができたことで、すごく楽しいコースになったんじゃないかな」

 

3連のバンクで遊びながらも加速させる滑走力

 

バンクで加速させながら、点在するナチュラルヒットでエアを繰り出し、ちょっとした地形を縁石に見立ててスケートライクなアクションを繰り出したアンディ。とにかく遊び上手なのだ。

 

昨シーズンまでフリコ沢コースにはなかったライダーズレフトのバンクに当て込むアンディ

 

「スケーター目線っていうか、あれやったらカッコいいかな?とか、できるかわからないけどやってみよう!みたいな感じで、すべてがトライだよね。挑戦するのがすごく楽しいから。やらないよりは絶対にトライしたほうがいい。フリコ沢コースには、そういうポイントがたくさんあります。もともとあるナチュラルヒットもめちゃくちゃデカいわけでもないし、キッカーみたいに飛ばなきゃいけない距離が決められてもいない。大きく飛んでもいいし、小さくてもいい。個人のレベルとか気持ちに合わせて遊べるのがいいんじゃないかな。レベルに関係なくジャンプにチャレンジしやすい。それがフリコ沢のいいところですね」

 

アンディはナチュラルヒットでスタイリッシュなインディグラブを放つ

 

フリコ沢コースのウェーブバンクを上から滑るためには、イゾラAコースか、Mt. East(イースト)のピークからスーパーイーストコースを滑る必要があるのだが、降雪がないとハードなコブ斜面となる。イゾラとイーストの間のボウル状のツリーがルスツで大人気の通称「シュガーボウル」。サイドカントリー天国の名所も、春になると荒れている可能性が非常に高い。
 
「ハイシーズンだったらめちゃくちゃいいパウダーを滑っていけるけど、斜度があまりないフリコ沢ではスピードが出せなくてエアは小さくなってしまう。春はボコボコだけど、それはそれで楽しんだほうがいい。キレイなところばかり滑っていても、スノーボードは上手くならないから。友達とあそこクリアできるかな?とか、トライすれば楽しめると思いますよ」
 
アンディの滑りを見ていると、心底スノーボードが上手くなりたいと痛感させられる。どんな状況でもクリエイティブな発想でアクションを繰り出し、そのすべての動きがオシャレだからだ。そのためには当然だが、フリーライディングのスキルが必要。そうした総合滑走力を鍛えられる環境もルスツにはあり、だからこそ挑戦する価値があるのだと、アンディは教えてくれた。


フリースタイルのすべてが楽しめる「イーストティーニュコース」でスノースケートが解禁

「ゲレンデで可能なフリースタイルアクションのすべてが、あのリフトに乗ればできるんじゃないかな」
 
このようにアンディが絶賛するのが、イーストクワッドリフトを利用して滑ることができる「イーストティーニュコース」。昨シーズンまではキッカーやレールがレイアウトされた「フリーダムパーク」のみがコース下部にあるだけだったのだが、今シーズンからコース中部に人工バンクが設置された。
 

創造力次第で多様なラインを描けるバンクセクション

 

「バンクに当てながらパークを流せるようになったことで、より多くのスノーボーダーが行くようになるだろうね。キッカーでジャンプしなくても、その法面がキレイだからバンクのように利用してスラッシュで当てることもできる。マスタークラスのスノーボーダーじゃなくても、ラインを選べばほとんどのレベルのスノーボーダーがトライできると思います。レールもあるし、途中から斜度が緩くなるからグラトリで遊びながら下りてもいい。これまで以上にフリースタイル要素が強くなりましたね」

 

バンクセクションをリズムよく駆け抜けるアンディ

 

キッカーの法面をバンクに見立てて豪快に当て込んだ

 

スノーボーダーにとっても満足度が高まったコースは、冒頭で述べたように3月からスノースケートが解禁となった。新設されたバンクは、それも想定してのことだろう。エッジ付きのスノースケート限定で、当然だがリーシュコードの装着がマストとなる。当然だが滑り手と板がバインディングで固定されていない、いわゆるフリーフットなので、リフト乗車中や降車時に注意するのはもちろん、スノーボードで滑走するとき以上に周囲の安全を確認し、ご自身の滑走レベルに合わせたスピードで楽しんでいただきたい。

 

3月限定で解禁となったスノースケート

 

「スノースケートでは十分な斜度ですね。あれ以上の斜度になるとかなり難しい。乗り慣れていない人には前半の斜度は大変かもしれないけど、あの斜面で滑れるようになればすごく楽しくなると思います。フリーダムパークの横くらいの斜度が一番いいんじゃないかな。バインディングで固定されているわけではないフリーフットは、荒れたバーンやちょっとした段差でも弾かれやすい。なので、マスタークラスの人は通常の長さのデッキでいけると思いますが、慣れていない人は長めのスノースケートのほうがおすすめですね。スノーボードもスノースケートも、パウダーデイでなくても朝イチが狙い目。繰り返しになりますがルスツは、グルーミングがキレイだから」

 

フリーフットでもトランジションを巧みに攻略するアンディ

 

アンディにとっては物足りないサイズのキッカーをスノースケートに乗り替えてトライする

 

スノーボードでもスノースケートでも、常にトライする気持ちを忘れないアンディ。言うまでもなくスノーボードはトッププロの腕前なので、アンディのチャレンジ精神をうかがい知ることは難しかったが、スノースケートでは彼がトライしている姿を目の当たりにすることができた。撮影を終えてボトムに下りてからも、「絶対に決めたい」と何度も何度もノーリーヒールフリップに挑戦。マイナスの気温の中で汗だくになりながらもメイクする瞬間に立ち会えたことで、アンディが再三に渡って語っている「挑戦」の大切さを思い知らされた。

 

このときの様子はアンディのInstagramをチェック

 

春のルスツには、上達するためのヒットポイントやエリアがたくさん点在している。スノーボードでもスノースケートでもいい。今シーズンやるのか、やらないのか。それはあなた次第だ。
 
「春でもグルーミングでスプレーを上げたり、カービングターンを楽しんだり、パークで遊んだり。春は春らしく楽しみながらトライしてほしいですね」

 

安藤健次(あんどう・けんじ)
 

 
生年月日: 1973年2月16日
出身地: 京都府(北海道・札幌在住)
スポンサー: RIDE SNOWBOARDS、TACTICS、PICTURE、ANON

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos + movies: Neil Hartmann

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