BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

【連載Vol.2】パウダーランもフリースタイルな遊びもツリーラン天国「斑尾高原」を滑り込めば上手くなる

2025.02.10

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“MADAPOW”と称される極上パウダーと、日本最大級とも言われる広大なツリーランコースを求めて、国内外から多くのスノーボーダーたちが集う、長野・飯山と新潟・妙高にまたがる斑尾(まだらお)マウンテンリゾート。
 
そんな斑尾に30cmのフレッシュパウダーが降り積もった1月中旬のある日。北信越の山々に魅せられて3年前からこのエリアに移住した阿部祐麻に声をかけ、朝イチからゲレンデ全体をフリースタイルに滑ってもらうことにした。目的は、斑尾が山全体をフリースタイルに遊ぶスキルを伸ばすのに最適なリゾートであるかを検証してもらうためだ。
 

パウダーでもボードコントロールしやすいからフリースタイルに遊びやすい

ユウマと言えば、かつて都市型レールイベント「BURTON RAIL DAYS」で活躍し、さらにはSTONPの映像作品にも出演するなど、天性のバネを活かしたダイナミックな滑りで魅せる生粋のフリースタイラーとして名を馳せたライダーである。現在は、北信越のスキー場を滑り込みながらコンディション次第でバックカントリーへと足を運び、マウンテンフリースタイルのスキルを磨き続けている。近隣エリアを知り尽くすユウマに、まずは斑尾の雪について聞いてみた。
 
「妙高エリアの標高の高いところに比べると、斑尾の雪は少しだけしっとり感があるかもしれません。でも、斑尾は全体的に標高が高いから、トップシーズンは基本的に軽いほうだと思います。しかも、それでいて適度な踏み応えがあるのでボードをコントロールしやすい。なので、雪がけっこう降っても遊びやすいイメージがありますね」

 

斑尾はツリーランだけじゃない。オープンバーンも極上

 

斑尾は、日本海から直線距離にして約35kmという海に近い立地にありながら、ゲレンデのボトムでも標高910mに位置し、コースの大半が1,000mを超えるため、水分をほどよく含んだフレッシュパウダーが降り注ぐ。北海道の内陸エリアのような超ドライで手で握っても固まらないパウダーでは、たとえ50cmオーバーの新雪が積もっても滑走中にボードが深く沈んでしまい、滑ること自体が難しいと言われるが、斑尾では30cmほど積もれば底当たりしづらくなる。なので、自在にラインが描きやすく、その踏み応えのある雪質のおかげで様々なアクションも仕掛けやすいとユウマは教えてくれた。
 
いっぽう、標高が低いエリアに降り積もる水分をたっぷりと含んだずっしり感のある雪質でもないため、例えば、パウダージブの途中でボードを動かしづらくなるということもないそうだ。「だから、パウダーでフリースタイルな動きをしたい人にとって、斑尾の雪質は最適かもしれないですね」と、ユウマも太鼓判を捺す。

 

コース脇のハジパウで、足裏に“MADAPOW”を感じながらパウダージブをかます

 

「しかも、斑尾はほとんどが北斜面だから、時間が経っても雪質が悪くなりづらいんですよ。結局、訪れた日も朝イチから15時までガッツリ滑っちゃいましたからね(笑)」
 
さらに付け加えれば、いいコンディションの雪を長く楽しめるだけでなく、トップシーズンはコンスタントに極上パウダーに恵まれるのも斑尾の魅力のひとつ。それゆえ、ユウマもタイミングを見計らっては斑尾へ足を運ぶという。
 
ここで気持ちよくパウダーを滑るなら、どのコースがお気に入りかを聞いてみた。
 
「一番はツリーランコースの“パウダーウェーブ2”ですかね。第13リフトを降りて右に進みトラバースで奥へ奥へと向かえば、平日なら多少は出遅れたとしても荒らされていないところがいっぱいあるんです。あちこちに起伏があるのも好きな理由のひとつ。あと、早い時間帯なら第13リフトを降りて左側に進んだ先にある、スーパークワッドリフト降り場の上のオープンバーンもけっこう斜度があって気持ちいいですよ。そこはけっこうな穴場かもしれない」

 

“パウダーウェーブ2”で豪快なスプレーを噴射しながら颯爽と駆け抜けていく

 

穴場スポットのノートラックを堪能する

 


管理されたツリーランコースだから安心して突っ込める

今でこそ多くのゲレンデがこぞってツリーランコース解禁を謳い始めたが、斑尾は15年以上も前から「管理されたコースとして、自然に限りなく近い状態で提供する」をコンセプトにツリーランコースを開放した、まさにパイオニア的存在だ。そして現在に至るまで、より滑走しやすいようにと木々を間引いたり、新たなツリーランコースを次々と開拓してきた。結果、今では緩斜面から急斜面まで、多彩な地形を楽しめる12のコースがラインナップされている。

 

 

「妙高のバックカントリーはけっこうハードな地形も多いので、パウダーの日に気軽にツリーランを楽しみたいって人たちと滑るときに斑尾は調子いいんですよ」とユウマが言うように、初めてツリーランにトライするレベルに適したコースが用意されている。加えて、ツリーランしながらフリースタイルなアクションを織り交ぜたい上級者にもピッタリなスポットも点在。まさにツリーラン天国だ。
 
「滑るラインを考えて木を間引いてくれているから、森の中でもスピードを出して地形に突っ込めるんですよ。それに全体的に木の間隔が広いから、地形を活かして飛んだあとも余裕が生まれやすいです。コース自体が広いから遊べるラインは無限って感じですね」
 
実際、お気に入りだと語っていた“パウダーウェーブ2”で、ユウマはちょっとした落ち込みを活かして飛んでグラブしたかと思えば、着地後に続くバンクで大きなスプレーを舞い上げていた。そして、探せば至るところに起伏があるため、雪が荒らされていないポイントを選んでは地形を活かしたトリックを繰り出し、リフトで何本も回して楽しんでいた。

 

ツリーランコースでもスピードを出せるからこそ、ちょっとした起伏があれば滞空時間のあるジャンプができ、グラブもガッツリとできるわけだ。“パウダーウェーブ2”にて

 

また、この日は訪れなかったが、“NINJA”というツリーランコースには「NATURAL SELECTION」を連想させる、エキスパートがトライしたくなるラダージャンプ台が設置されている。「あそこは、スピードや抜ける場所次第でけっこう落ちるんですけど、トライするなら朝イチの雪がいいときがベターだと思いますね。そうじゃないと、着地が荒れてしまうので」と、そこを流して気持ちよく滑るにはタイミングの見極めが重要だとも教えてくれた。
 
さて、ここでユウマにパウダーでジャンプするコツを聞いてみた。
 
「強く踏み切ろうとするとボードが深く沈み込んでしまうため、自分はオーリーしないことを心掛けていますね。上半身の引き上げを意識し、あとは地形に合わせて“抜ける”イメージ。ただ、いきなりノーチェックで急な落ち込みでジャンプするのは避けてください。僕も知らないポイントだったら、まずはランディングの状態を確認するようにしています」

 

しっかりと目を凝らせば、ツリーランコースにはこのように飛びたくなる起伏があちこちに存在する

 

広大な非圧雪コースを有しており、北斜面の多い斑尾では、こういったアクションを至るところで、さらに、降雪直後は午後になっても練習できるのが強みだ。「パウダーでジャンプする練習がしたいなら絶好のフィールドだと思いますよ」と、ユウマも自信を持って推薦してくれた。


“SAWA”はフリースタイルに遊びやすい地形の宝庫

ゲレンデ上部のツリーランコースのパウダーが喰い尽くされバンピーになったタイミングでユウマが向かったのは、タングラム斑尾に近いエリアにある“SAWA”。ここは“SAWA I”“SAWA II”に加えて、昨シーズンから“SAWA III”が開放され、現在は3つの沢筋を活かして遊べるツリーランコースだ。様々なアクションを繰り出しやすいR地形が続くため、フリースタイラーにとっては最高のプレイグラウンドのような場所である。
 
そもそも“SAWA”は「パウダーがなくても楽しむことができる」を目指して開拓が進んだコースで、滑っていると自然と目に入ってくるバンクやR地形が、「当て込んでくれ」「飛んでくれ」と語りかけてくるような錯覚に陥るほど、次々にヒットポイントが出現する。たとえトリックを織り交ぜなくとも、たとえパウダーでなくても、壁地形で描くターンは独特の3D感覚を味わえるため、シーズン最後まで誰もが何度も足を運びたくなる斑尾の名物コースでもある。

 

フロントサイドのバンクでGを感じながら心地よいターンを描く

 

「ここは沢のボトムのパウダーが踏み固められてからのほうがスピードが出せて遊びやすいんですよ」とユウマが言うように、沢地形を活かしてジャンプするにしろ、バタートリックを繰り出すにせよ、イメージどおりに遊ぶためにはスピードが欠かせない。そのため、ユウマは“SAWA”に積もったパウダーがある程度踏み固められるまでは、ほかのツリーランコースを回していたのだ。
 
このコースを訪れたユウマは、いきなり沢のボトムに入るのではなく、そこへ向かうまでの尾根でノートラックのパウダーを味わいながらツリーランを楽しんだり、ちょっとした起伏を活かしてパウダージャンプをしたり、様々なラインを描いてから沢地形へと向かっていた。
 
それぞれの特徴を軽く紹介すると、“SAWA I”はボトムの幅がややタイトなところもあるが、壁の立っている部分が多いのでジャンプを何発も入れながら流すのが楽しいコース。“SAWA II”は広めのボトムで、なおかつコース自体も横にうねっているため、バンクドスラロームのようにスピードで駆け抜けるのが気持ちいいコース。そして、“SAWA III”は開き気味の壁地形を活かして、レイバックやバター系トリックを仕掛けやすいコースといったところだろうか。
 
朝イチから非圧雪コースのノートラックパウダーを喰らい、ツリーランコースでは起伏を活かしたジャンプなどを繰り出し、そして、沢地形ではRと戯れまくったユウマ。すべてのツリーランコースがリフトで回せる利便性のよさもそうだが、彼がこれだけ何本も滑っていたのには理由があった。

 

ツリーランを楽しみながらも、ゴーグルの下の目は次に当て込むポイントを探している

 

「斑尾ってコースが長すぎず短すぎず、それでいてバックカントリーにあるような地形やツリーランをリフトでガンガン回せるのが最大の強みなんですよ。トップ・トゥ・ボトムでフリースタイルに遊びまくりながら滑っても、もう脚がパンパンすぎて動けないってこともない。だから、ガンガン滑っちゃうんですよね。あと、これは繰り返しになるけど、パウダーでフリースタイルな動きをしながら滑りたいと考えている人にとって斑尾は、いろいろな練習ができるから本当にオススメですね」

 

阿部祐麻(あべ・ゆうま)
 

 
生年月日: 1993年1月13日

出身地: 新潟県南魚沼市

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text: HaruAki
photos: Gaku Hiramoto

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