BACKSIDE (バックサイド)

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FEATURE

ファミリーゲレンデなのに“深雪ワンダーランド”というギャップを知る。「湯沢中里」が面白い

2025.02.04

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新潟・南魚沼にある「湯沢中里スノーリゾート」に抱くイメージは、多くがファミリーゲレンデだろう。初~中級者向けのゆるやかな斜面が整う、子連れスノーボーダーやスキーヤーに特化したゲレンデ……。ところがこの記事をご覧いただけば、それがいかに凝り固まったイメージだったかがよくおわかりいただけるはずだ。6つの非圧雪コースを有し、リゾート公認でツリーランが楽しめる林も多数。日本有数の豪雪地帯・南魚沼において、「じつは当たると楽しいローカルゲレンデ」とささやかれる“深雪ワンダーランド”をご紹介する。

ファミリーゲレンデに隠されたフリーライドのポテンシャル

湯沢中里スノーリゾートは新潟県南部にある魚沼盆地からさらに南下した、群馬県との県境近くの谷あいにある。最寄りICは関越自動車道・湯沢IC。そこから車で10分弱という好立地にあり、また、上越新幹線の停まるJR越後湯沢駅からはゲレンデ直結の電車や無料シャトルバスも出ていて、どちらも10~15分ほどの所要時間。アクセスのよさは抜群だ。
 
そんなアクセスに恵まれた湯沢中里スノーリゾートが、立地のよさだけでなく、「じつは当たると楽しいローカルゲレンデ」と密かにパウダーやフリーライドの穴場として知られている。
 
その魅力をひも解く前に、まずは雪に恵まれた立地条件を知っておきたい。
 
湯沢中里から見える谷川岳は、日本海側と太平洋側を分ける日本の脊梁山脈のひとつにある。日本海で発生する水蒸気たっぷりの雪雲が、冬型の気圧配置が強まると北西の季節風にのって谷川岳を含む脊梁山脈に運ばれ、山にぶつかって雪雲が次々に発達。山脈の向きや上昇気流が強まりやすいといった土地的な条件も合わさり、一帯は日本でも有数の豪雪地帯になっている。新潟側の雪はやや湿り気があるが量がすさまじく、群馬側は量は少ないが乾いた雪というのもこのメカニズムに起因している。
 
さて、そんな雪に恵まれた立地にある湯沢中里。今回は、そのポテンシャルに早くから気づき、以前から滑り込んできたというライダー・星宏樹に魅力を聞くことにした。

 

星 宏樹
新潟・北魚沼エリアで生まれ育つ。スノーボードは8歳から始め、奥只見丸山で幼少期からフリーライドの土台を築く。その後、地元だけでなく国内外の様々なエリアでスキルを磨き、2022年にはFWT JAPAN SERIESで年間ポイントランキング2位を獲得。現在は主にフィルミングを軸に活動している

 

「ふたつの山からなる湯沢中里は、コースが横にレイアウトされた幅広なゲレンデです。ゲレンデマップでいえば、左側は圧雪の緩斜面を中心とした初級者向けのエリア。デビューしたばかりのスノーボーダーやスキーヤー、子連れが多いピースフルな雰囲気になっています。いっぽうで右側は長い1本の初心者コースを除いて、あとは山全体が非圧雪コースで、ツリーを開放したエリア。ここが降ったらすごいんですよね!」

 

ファミリーゲレンデという印象をもたれている湯沢中里だが……

 

弊ウェブマガジンの読者なら、降ればやはり狙いたくなるのは右側のエリアだろう。第1高速リフト(クワッド)と第2リフト(ペア)のいずれかで回せる非圧雪コースは、右からダイナミック、ジャイアント、チャレンジ、エクストリーム、トレーニングという、どれもそそられるネーミングの5本。いずれも平均斜度20°を超え、チャレンジバーンは最大32°ある。ハイシーズンの湯沢中里はひと晩で腰ほどの深さまで雪が積もる“積雪力”があるが、緩斜面ばかりでは正直スノーボーダーはつらい。その点、どのコースもスピードに乗れる十分な斜度があり、コンパクトに極上のパウダーライディングを回せるエリアなのである。

 

コース入口が斜度31°あるエクストリームコース。地形変化が豊富で、ギャップも多数!

 

「ゲレンデのボトムにある中里スキーセンターに向かってまっすぐに下りるチャレンジバーンは、最大斜度が32°ある急斜面が特徴。前夜からたっぷり雪が積もった翌朝は、高速のパウダーライディングがたまりません」
 
チャレンジバーンは昨年に続いて世界的なフリーライドの大会である「FREERIDE WORLD TOUR」の予選が開催されるコースになっていて、一部は誰でも自由に自然地形を滑ることができる「FWT ZONE」に認定されている。世界各国の選手が滑る斜面が普段は開放されているので、自分の力量を試す場としても楽しいはずだ。

 

スピードにのったパウダーライディングがたまらないチャレンジコース

 

ファミリーゲレンデと思えない攻めたライディングが可能だ

 

ちなみに、もうひとつの非圧雪コースはゲレンデの左側エリアにある。ファミリーコースの脇にある第5リフト線下の上部にあり、斜度は入口が急であとはゆるやか。急斜面がまだ苦手な人は、ここでパウダーと圧雪を行ったり来たりしながら足慣らしをしてもいいだろう。ゲレンデマップには明記されていないが、パラレルコースの中央部分もピステンでは踏まないため、知る人ぞ知るパウダーゾーンだそうだ。


場内で楽しめるバックカントリーさながらの極上ツリーラン

「もうひとつ湯沢中里で楽しんでほしいのがツリーランエリアです。パウダーに目がないコアなスノーボーダーやスキーヤーが楽しめるよう、木々を適度に間引くなどして立ち木の間隔がほどよく整えられ、斜面も地形変化が豊か。あちこちに小さなマッシュも点在し、ジャンプも楽しい。その上どこを滑ってもコースに復帰できるところも、初めて来る人にはポイントが高いと思います。非圧雪コースと同じくらい、湯沢中里の名所といえると思います」
 
ひと晩で完全にリセットすることも少なくない豪雪地帯だからこそ、その雪をとことん楽しんでほしい。滑り手として来場者に寄りそうゲレンデスタッフが、3年をかけてツリーランエリアのオープンに向け整備したのだそうだ。短いリフトを使ってコンパクトに、これだけ効率よく非圧雪コースとツリーランエリアを自由に巡れるゲレンデは、日本広しと言えどなかなかないのではないだろうか。
 
さらに前述した『FWT ZONE』も注目ポイントだ。湯沢中里は23-24シーズンよりフリーライドの祭典「FREERIDE WORLD TOUR」の予選の舞台となり、それに伴ってウッドレールやウッドジャンプも設置されている。もちろんランディングも整備され、安全面も配慮したこれらのアイテムは練習にうってつけ。ベースエリアからの視線を感じながら、自由なラインどりでフリーライドスキルを高めることができる。

 

ウッドジャンプは積み上げられた巨大な木製のアイテム

 

また、第1高速リフトでアクセスできる「GROWTH PARK」もおさえておきたい。南魚沼市出身のライダー・関口敬がプロデュースしたもので、起伏やバンクなどの地形を自由な発想で遊べるという新感覚セクションだ。自然の降雪とユーザーとで成形され育つという進化系地形パークというユニークな位置づけで、同じ形は二度とない一期一会の新スポットとして注目されている。

 

降雪とユーザーとで育っていく新感覚の「地形パーク」

 

左側のエリアにあるパラレルコースも中央部はピステンで踏まれず、降った朝イチは意外に穴場

 

「湯沢中里は僕のなかで“降ったら面白いゲレンデ”という認識で、20代初めのころから通ってきました。今でこそ知られてきましたが、それでもパウダーで有名なゲレンデと比べたら長い行列もないし、一瞬でズタズタになる心配も少ない。ゲレンデ自体は大きくありませんが、右側のエリアは急斜面が多いので、午後の荒れたバーンなども練習になります。それに、ファミリー層に人気があるだけに設備がしっかり整い、子連れで利用しやすいと思います。夫婦で交代で非圧雪を滑りながら子供を見てもいいし、スクールが充実しているので半日子供をレッスンに入れて夫婦でサッとパウダーを滑るっていうのもいいですね。コンパクトだからこそ短時間で効率よく回すこともでき、いろいろな意味で多くの人を受け入れてくれる懐の深いゲレンデだと思います」

 

ご覧のとおりファミリー層やライトな利用者が多い。だからこそ狙いめである

 

ファミリーゲレンデに隠されたフリーライドのポテンシャル。まとまった降雪が期待できる予報を確認したら、行き先はおのずと見えてくるのではないだろうか。

text: Ryo Saito

湯沢中里スノーリゾート | 公式ページはこちら

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