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流佳2位&歩夢3位でダブル平野が表彰台。トリプル合戦が繰り広げられた伝統の一戦「LAAX OPEN」ハーフパイプ

2025.01.19

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スイス・ラークスで繰り広げられる「LAAX OPEN」はFIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)との併催として行われ、伝統の一戦ということで世界中からトップランカーたちが集結。ハーフパイプはナイトゲームとなり、日本人ライダーは男子5名、女子4名が決勝へコマを進めた。
 
今大会のファイナルはひとり2本のランを行い、ベストポイントが採用されるルール。現在のハーフパイプシーンのレベルを鑑みると厳しい条件である。女子は惜しくも表彰台を逃す結果に終わったが、小野光希はCAB900からスイッチBS540につなぐ新たなルーティンを成功させ、冨田せなは完成度の高いFS1080をクリーンにメイク、15歳コンビの清水さらと工藤璃星のふたりも物怖じすることなく堂々たる演技を披露し、多くのオーディエンスを沸かせていた。
 
女子優勝は女王クロエ・キム(アメリカ)。ノーマルスタンスかと思わせるスイッチメソッドやCABダブルコーク1080など、表現力と技術力がかけ合わさった素晴らしいランを披露した。2位のマディ・マストロ(アメリカ)はファーストヒットでダブルクリップラーを放つと、中盤以降に彼女自身初となるFSダブルコーク1080を成功させるなど、大きく進化した姿を世界中にアピールした。3位にはノーマルスタンスとスイッチスタンスの境界線が存在しないような卓越した滑りに定評がある16歳のチェ・カオン(韓国)が入った。

男子は平野流佳が口火を切る。1本目にスイッチBSダブルコーク1080スイッチジャパンという流佳のオリジナリティあふれるトリックから入ると、BSダブルコーク1260ウェドル→FSダブルコーク1440インディを決めたのち、自身初となるCABトリプルコーク1440をトラックドライバーで成功させると続けてFSダブルコーク1260インディでフィニッシュ。全体的にエアの高さも十分だったランは93.75ポイントを叩き出し、トップに立った。
 
そのあとに続く平野歩夢は1本目、FSトリプルコーク1440トラックドライバー→CABダブルコーク1440ウェドル→FSダブルコーク1260インディ→BSダブルコーク1260ウェドル→FSダブルコーク1440テールという北京五輪で金メダルを手繰り寄せたルーティンを成功させるも、1、3ヒット目の着地で若干ラインがズレるなどパーフェクトとはいかずに87ポイント。3位のポジションから逆転を狙った2本目は、2ヒット目のCABダブルコーク1440の着地に嫌われてしまい、順位を上がることはできなかった。
 
本大会を生放送していたJ SPORTSの番組で解説を務めていた筆者は表彰式直後の歩夢と会話することが許され、限られた時間の中で話を聞くことができた。まず、今シーズンは開幕戦の時点から肋骨を折っている状態で臨んでいたわけだが、ケガの回復は90%。復調の兆しだ。また、北京五輪のルーティンでは通用しないと踏んでいて、さらに高難度なルーティンを用意していること、この2点について明かしてくれた。米コロラド州アスペンで行われる「X GAMES」や同地開催のW杯、ショーン・ホワイト主宰の「THE SNOW LEAGUE」に向けて、100%に力で挑む歩夢がどのようなルーティンを繰り出すのか、期待したい。
 
圧巻だったのはスコッティ・ジェームスの2本目。特大のスイッチマックツイスト・スイッチジャパンからルーティンをスタートさせると、CABトリプルコーク1440トラックドライバー→FSダブルコーク1260ステイルフィッシュ→BSダブルコーク1080ステイルフィッシュ→スイッチBSダブルコーク1260インディを決めて95.75ポイント。1本目では3ヒット目にFS900を入れることで後半にかけてひと呼吸置いていたところ、自身のルーティンをアップグレード。スイッチマックでオリジナリティを表現し、超高難度トリックのトリプルコークを組み込み、全4方向への高難度スピンを織り交ぜ、そのうえで、すべてのヒットがハイエアだった。

2本目で大逆転を狙った流佳だが、3ヒット目のFSダブルコーク1440で転倒してしまい万事休す。スコッティに逆転を許したシーンでスタートエリアにいた流佳が拍手喝采だった映像がカメラに抜かれていたため、表彰式直後のリモートインタビューでその真相について聞いてみた。すると、全員が出し切った状態で勝たないと意味がないから、すべてのライダーがベストルーティンを決めてほしいと思いながら、常に戦っているそうだ。自身の結果を優先するのであれば、強敵であればあるほど転倒することを望みそうなものだが、そのような凡人の発想を流佳は持ち合わせていない。非常にクールでカッコいい男である。
 
戸塚優斗はラストヒットでFSトリプルコーク1440を、重野秀一郎はFS1620を決めるも表彰台には一歩届かなかった。ダブルマックツイスト1080やスイッチマックツイストなど、オリジナリティあふれるルーティンで勝負に挑む山田琉聖は、ラストヒットのスイッチアーリーウープBSダブルロデオ1080の着地で弾かれてしまった。
 
男子は上位4名がトリプルコークを含むルーティンを決めるというハイレベルな戦いとなったLAAX OPEN。ミラノ・コルティナ五輪まで残すところ1年あまり。次回大会は、その前哨戦となる。W杯だけでなくプロ大会も含め、戦況を見守りたい。

text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photo: FIS SNOWBOARD

 
女子結果
1位 クロエ・キム(アメリカ)
2位 マディ・マストロ(アメリカ)
3位 チェ・カオン(韓国)
4位 小野光希(日本)
5位 工藤璃星(日本)
6位 冨田せな(日本)
7位 清水さら(日本)
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男子結果
1位 スコッティ・ジェームス(オーストラリア)
2位 平野流佳(日本)
3位 平野歩夢(日本)
4位 戸塚優斗(日本)
5位 重野秀一郎(日本)
9位 山田琉聖(日本)
13位 村上広乃輔(日本)
45位 菊地原小弥汰(日本)
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