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ブッ飛び女王から一流スノーサーファーへの華麗なる転身。双方のスキルを川場で体得した北原あゆみに迫る「KAWABA LIFE Vol.7」
2024.12.29
話を聞くと、2018-19シーズンから群馬・川場スキー場にコモり始めてフリースタイルスキルに磨きをかけ、3シーズン続けて同ゲレンデを滑り続けた結果、スノーサーファーとしての才能が開花。相反するかのようなそれぞれのライディングスキルを、川場で身につけたということだ。そんな彼女のKAWABA LIFEに迫る。
風を味方につけると上手くなるし楽しくなる
「2019年のAIRMIXは、ファイナルになると急に雪が降り始めて3月なのにアイシーな状況に変わったんですけど、フルスピードで突っ込めました。恐怖心を感じることはありませんでしたね。そのシーズンは川場でしか滑っていませんでした」
AIRMIXの動画をご覧いただければわかる(記事はこちら)が、男顔負けの巨大メソッドを放っているのがあゆみだ。彼女はスノーボード専門学校の高等部に入学してから本格的にライディングをスタートさせた。当時は学校からほど近い新潟・妙高エリアで練習に明け暮れていたが、卒業してからはホームゲレンデを持たずにスロープスタイルの大会を転戦しながら、全国各地を転々とする生活を送ることに。そうした中、あゆみのことを面倒見てくれていたムラサキスポーツのライダー担当が川場店の店長になるタイミングで誘われ、はじめてのホームゲレンデが川場となった。
「川場で滑るときはクリスタルコースの左側の高い壁にハイスピードで入っていき、板一枚分くらいのリップが何箇所かできるので、そこで飛んでいました。土日になるとクリスタルはお客さんが多いから、動くツリーに見立ててかわしながらスピードを出していましたね(笑)。壁の入口には圧雪車による段差ができていることもあったので、ヒザで吸収しながら入っていくなどあらゆる状況への適応力が高くなり、総合滑走能力が培われたと思います」
だからこそ、コンディションが急転してもAIRMIXで勝つことができたのだろう。強風が吹き荒れるとアイシーなバーンが顔をのぞかせることもある川場だが、その斜面を滑り込んだ結果、カービングターンが上手くなったとも語る。だが、川場のファーストインプレッションは──。
「はじめて川場で滑ったときは感動しちゃいました。『雪、軽っ!』って(笑)。妙高は雪が重いからラインが入ると滑りづらいですけど、川場は雪が軽いから全然気にならないし、ずっと同じコースを滑っていても楽しかったですね。雪の軽さと風の影響でリセットされることがかなり多かったから」
内陸部特有の北海道にも引けをとらないドライパウダースノーだからこそ、強風はポジティブにも作用するのだ。高校時代からスノーボードと並行してサーフィンにも取り組んでいるあゆみは、当時のKAWABA LIFEを次のように振り返る。
「サーフィンみたいな感じで風向きを見て、明日はこっちに(パウダースノーが)溜まる!と予測して滑るコースを選んでいました。一日のルーティンを決めて滑っていましたね。今は『OFF THE PISTE』としてツリーが開放されているので風をしっかり読むことができれば、かなり長い時間パウダーを楽しめると思います! 一日ずっといい雪だったと感じられる日がけっこうありましたからね」
そして、これまでは飛ぶためにあった川場ウォールは徐々に、あゆみの目には波のように映っていくのだった。
スノーボード人生を変えたKAWABA LIFE
高校時代の夏休みを利用して訪れた高知県でサーフィンにのめり込んだあゆみは、5年ほどまでにその地に移住したリアルサーファーでもある。現在はGENTEMSTICK(ゲンテンスティック)からサポートを受けながらスノーサーファーとして活動しているわけだが、実のところ、その原点は川場にあった。
「スノーシューやビーコンなど山グッズをはじめて買ったのは、川場でコモっているときでした。ムラサキスポーツの先輩たちにバックカントリーのイロハを教えてもらいました」
川場は雪山登山の入口としても知られている。安全対策のため、登山届の提出とココヘリ装着が絶対条件。あゆみも万全を期したうえで、川場でバックカントリーライディングを学んだ。
「はじめてのバックカントリーは川場でした。今は白馬をベースに活動していますけど、歩くことも滑ることも川場で覚えました。もともとバックカントリーに興味はあったんですけど、始めるキッカケがなくて。(ムラサキスポーツで)働いているメンバーや先輩ライダーたちが誘ってくれたおかげです。本当にお世話になりました(笑)」
スノーサーフィンとバックカントリーは切り離せない。まずは、手つかずの大自然の中で滑る技術や知識を身につけていった。そのうえで、冒頭で述べたようにBIG WAVE CHALLENGEで優勝するなど、今や一流のスノーサーファーにまで成長した。
「サーフィンはずっとやっているので、川場にいた最初の頃は飛んでいた壁地形を滑るときも、自然とサーフライクなラインどりに変わっていったんです。壁が波に見えてくる、っていうか。私がいた当時は『SURF RIDE PARK』はありませんでしたが、もともと高手ダウンヒルには壁が多くて、そういうところを小波のように見立てて遊んでいました」
クリスタルコースの名物であるレギュラースタンスのバックサイドウォールを筆頭とした川場ウォールは、あゆみのフリースタイルスキルを高め、その後、彼女をスノーサーファーへと誘った。
「川場が今の私を作ってくれたと言っても過言ではありません」
美味しい食。快適で暖かい施設。そして温かいスタッフたち
「『TENJIN BANKED SLALOM』に出場するときなど、近くに行ったときは今でも川場に滑りに行きます。改めて思うのは、立体駐車場なので雪下ろしの必要がないのはうれしいですね。あと、私がいた頃はありませんでしたが、『パウダーラウンジ』はすごくくつろげてよかったです。足の疲れがとれるようなリカバリーサンダルが置いてあったりと、とても快適でした。あそこは会員制なんですかね?」
パウダーラウンジは会員制ではなく、おひとり様1,500円で丸一日利用することが可能だ。パウダーラウンジ以外にも、一日貸し切ることができる「有料休憩室」が4部屋用意されており、そのすぐ近くにはキッズルームも完備されているので、小さなお子様連れでも安心かつ快適に過ごすことができる。
「コモっているとき、頑張った日はクレープを食べていました。あと、ピザもめっちゃおいしかった! コンディションによっては休憩時間が長くなる日もあるかと思いますが、『カワバシティ』の中でおいしいものを食べたりゆっくりできるのはとてもいいですね」
カワバシティ7階にある、奥渋谷の人気コーヒースタンド「good good not bad」とのコラボコーヒースタンド「ビーチ」では、大人気のクレープと絶品コーヒーが堪能できる。また、カワバシティ8階の「Good diner KAWABA」では、神戸で人気のニューヨークスタイルピザの「JESUS PIZZA」や、川場オリジナルバーガーをご用意。ほかにも、「牛タン すずや」や北インド料理を提供する「タンドゥール」が7階に、総合レストラン「ティンバーライン」は8階だ。
「私にとっての川場は“ホーム”みたいな感じです。3シーズンに渡って寮に住んで、スノーボーダーとして大きく成長させてくれました。フリースタイルから山滑りに入っていくキッカケになった山であり、ライダーとして次のステップに後押ししてくれたのが川場。今でも顔を出すと『お帰り』みたいな感じで言ってもらえてうれしいですね。ゲレンデは寒いですけど、川場で働いている人たちはみんな温かいんです!(笑)」
本記事の撮影は雪不足だった昨シーズン行われたため、降雪はあったもののコンディションは芳しくなかった。しかしそこには、笑顔あふれるあゆみの姿があった。
北原あゆみ(きたはら・あゆみ)
生年月日: 1994年12月27日
出身地: 大阪府岸和田市
スポンサー: GENTEMSTICK、HAGLÖFS、KARAKORAM、STANCE、MERMAID & GUYS、POW GLOVES、KANG POLES、GENTEM FACTORY TUNE
interview + text: Daisuke Nogami(Chief Editor)