平昌、北京と2大会連続、スロープスタイル＆ビッグエアのフィンランド代表としてオリンピックに出場し、「X GAMES」では3個のメダルを獲得するなど、コンペティターとして世界トップレベルで活躍。その傍らでシューティング活動も行っており、近代スノーボードでは両立が困難とされている中、競技者と表現者の二刀流を貫いてきたレネ・リンネカンガス。北京五輪以降、その才能が爆発した。
オリンピックイヤーも含め、2022〜24年の3シーズンに渡り、コンテストの過密なスケジュールの合間を縫ってフィルミングが行われた。その間、ケガに苦しめられる時期もあった。しかしその中身は、とてもひとりのライダーの映像作品とは思えないほど、あらゆるライディングスタイルが濃厚に収録されているので、まったく飽きることのない20分あまりのムービーに仕上がった。タイトルはずばり『HEAVEN』だ。
SNSの台頭により世に溢れかえっているショート動画ではなく、フリースタイルスノーボーディングの世界観を形成してきた長編ムービーの真髄を表現している。そのためには豊富なフッテージが必要で、さらに、バリエーションがなければ成立しないわけだが、雪山から街中までをあらゆる表現方法でレネは見事に魅せている。コンテストで培った驚異的な滑走力と、リアルスノーボーダーとしての創造性が掛け合わさり、美しさとエネルギッシュさあふれるスノーボーディングがここに詰め込まれた。
ストリートではヘルメットを着用しているのだが、時にはディープパウダーで長髪をなびかせながら滑走しているシーンも。特筆すべきは、札幌市営東豊線のシーン始まる北海道パートだ。6:14あたりからになるので、絶対にお見逃しなく。
このHEAVENを観終えたとき、フリースタイルスノーボーディングの本質やその奥行きを改めて痛感することになる。そして、レネというライダーのことが脳裏に焼きついて離れないはずだ。

text: Daisuke Nogami（Chief Editor）