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男子6回転・女子4回転のビッグエア新時代に突入したW杯で荻原大翔が優勝。深田茉莉は2位
2024.12.01
2022年4月に世界初の6回転、BSクイントコーク2160を荻原大翔が決めてから、2年7ヶ月ほどが経過。ついに、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップ(以下、W杯)ビッグエア中国・北京大会において、コンテスト史上初となる2160をイタリアのイアン・マッテオリがフロントサイドスピンで成功させた。気になるポイントは97.75。ほぼ満点だ。2本目は失敗、3本目は今秋に世界で初成功させたCAB2160が出るかという期待感が高まったが、確実に優勝を狙ったのかCAB1800を決めるも思ったように得点を伸ばすことができずに67.75ポイントでトータル165.5ポイント。衝撃トリックをメイクするも2位に甘んじた。
今大会を制したのは6回転時代の幕を開けた男、前出の大翔だ。1本目にBS1800インディで86ポイント、2本目にFS1800ウェドルを決めて83.5ポイントで計169.5ポイント。この時点でトップにつけ、2本目までの合計ポイントが下位からの出走となる3本目は最終走者として迎えることになった。念のために触れておくが、ビッグエアのルールはひとり3本のジャンプを行い、回転数の異なる2本の上位トリックのポイントの合算で争われる。
そうした状況で、長谷川帝勝はCAB1980を2本目に決めるも3本目に放ったスイッチBS1980は飛びすぎてしまい着地に嫌われ、北京五輪ビッグエア金メダリストのシャオミンことスー・イーミン(中国)も同じくスイッチBS1980に2本連続トライするも決めることができなかった。前述したように3本目にCAB1800を決めたイアンが2位に食い込み、その時点で3位に後退した中国のヤン・ウェンロンが3本目に逆転を狙うも転倒し、この時点で大翔の優勝が決まった。
今大会はJ SPORTSで生放送されており、その番組で解説を担当している筆者は、大会直後に大翔と話すことができた。1本目からイアンがFS2160を決め、前述のとおり帝勝やシャオミンは1980を繰り出している中、大翔は1800の完成度にこだわっていたそうだ。そのうえで、ラストとなる3本目に6回転の大技、BS2160を狙っていたと語ってくれた。リスクを鑑みればウイニングランで攻める必要はまったくないわけだが、大翔は自身の戦略どおり、3本目にBS2160を放った。大きな放物線を描いた6回転の超大技は成功には至らなかったが、回転が余っていたことには驚きを隠せない。間違いなく、着地もしっかりと見えていたことだろう。大翔は「来年は絶対に成功させる」と力強く語っていた。
女子はW杯ビッグエアの前回大会を制した深田茉莉が、今大会もすごかった。1本目から、前回のスイス・クール大会で優勝を手繰り寄せた大技、スイッチBS1260スイッチジャパンを決めるも、この時点ではアンナ・ガッサー(オーストリア)のCABトリプルコーク1260、ミア・ブルックス(イギリス)のBS1260にポイントは劣っていた。このことについて大会直後、焦りはなかったのかと茉莉に聞いてみたのだが、まったく動じていなかったそうだ。
それもそのはず。3本目にFS1440ウェドルを放ち、完璧に成功した。91.5という高ポイントをマーク。1本目のスイッチBS1260が85.25ポイントだったので、トータル176.75ポイント。ミアが3本目にCAB1440スイッチメロンを成功させて94ポイントを獲得して優勝を飾ったのだが、わずか3ポイント及ばなかった。2大会連続の優勝は逃したものの24-25シーズン、素晴らしいスタートダッシュを切ることに成功した。
なるほど、この隠し技があったのだから焦りはなかったのかと合点がいったのだが、このFS1440という超大技についても茉莉に話を聞いてみると、公式練習中、1本も成功していなかったとのことだから驚きだ。W杯を転戦し始めてからまだ3シーズン目の茉莉。デビュー戦で優勝を飾るなどこれまでも勝負強さを随所に発揮してきた彼女だが、今シーズン、滑走力はもちろん、その精神力にも磨きがかかっているようだ。
前回大会では4位と成績は奮わなかったが、どうやら肉離れを起こした状態で大会に臨んでいた村瀬心椛は、今大会では予選を1位で通過して期待が寄せられていた。しかし、女性ライダーではほかに誰もできない超高難度なBSトリプルコーク1440で勝負に挑むも、2本とも着地に嫌われてしまった。まだケガの影響があったのかどうかはわかりかねるが、3本目を終えた直後、涙を流しているシーンが強く印象に残った。
text: Daisuke Nogami(Chief Editor)
photos: FIS SNOWBOARD
男子結果
1位 荻原大翔(日本)
2位 イアン・マッテオリ(イタリア)
3位 ヤン・ウェンロン(中国)
8位 木俣椋真(日本)
9位 長谷川帝勝(日本)
11位 宮村結斗(日本)
41位 南谷花都(日本)
45位 飛田流輝(日本)
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女子結果
1位 ミア・ブルックス(イギリス)
2位 深田茉莉(日本)
3位 アンナ・ガッサー(オーストリア)
4位 鬼塚 雅(日本)
5位 岩渕麗楽(日本)
7位 村瀬由徠(日本)
8位 村瀬心椛(日本)
18位 鈴木萌々(日本)
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