FEATURE
チームライダーたちにリスペクトの想いを込めて。K2が贈る3本のシグネチャーボード
2024.11.27
さて今シーズン、K2 SNOWBOARDING(ケイツー スノーボーディング)からゲイブ・ファーガソン、カーティス・シジック、ケネディ・デックのシグネチャーボードが限定発売されることになった。ここ数年で目覚ましい進化と深化を遂げているK2のギアとチーム。K2が誇る敏腕ボードデザイナーの創造性をカタチに変える技術に、近年強化されているチームライダーたちからのアイデアや多大なるフィードバックが掛け合わさることで、世界中のスノーボーダーたちから熱い支持を受けている。そんな一部のライダーにリスペクトの想いを込めて、本記事で紹介するシグネチャーボードは作られたのだ。
ゲイブ・ファーガソン × ANTIDOTE
選ばれし者しか出場が許されない世界最高峰のコンテスト「X GAMES」スーパーパイプに若くして出場するなど競技者として活躍したのち、表現者へ転身を遂げバックカントリーにフィールドを移し、映像の世界で活動しているゲイブ・ファーガソン。パイプというシビアなフィールドで培ってきたテクニックと、米オレゴン州マウントバチェラー仕込みのフリーライドスキルを掛け合わせたライディングスタイルが魅力で、昨年配信されたBROWN CINEMA『THE KNIGHTS OF BROWN TABLE』(記事はこちら)では5分を超えるパートを獲得している。その作品を観れば、彼の遊び心あふれるスキルフルなマウンテンフリースタイルを存分に堪能できるはずだ。
そんな彼が愛用しているのは、2022-23シーズンに登場したフリースタイルに遊べるフリーライドボードシリーズ「LANDSCAPE COLLECTION」にラインナップされているANTIDOTE。アグレッシブなフレックスを備えたディレクショナルツインで、ノーズとテールにはK2独自のSPACE GLASSテクノロジーが採用され、頑丈かつ軽量に仕上げられたモデルである。高速滑走時にもバタつきがなく、ビッグジャンプでのランディングにも耐えてくれ、さらに、タイトなセクションでの軽快な動きも思いのまま。加えて、3Dベースによって余分にエッジに引っ掛かる感じもなく、スムースなターンも可能。まさに、バックカントリーをフリースタイルに遊ぶゲイブのライディングスタイルに完璧にマッチする一本なのだ。
「このボードにはK2の様々な技術が盛り込まれていて、特にスピードを出してチャージするときに威力を発揮してくれる。グルーマーではスムースだし、パウダーでは最高の浮遊感を与えてくれるからね。急斜面を滑るのが好きな人も、パークでフリースタイルに遊びたい人にもオススメだよ」とは、ゲイブ本人からのコメントだ。
そんなANTIDOTEにK2が粋な計らいをして完成したのが、世界で120本限定生産の「ANTIDOTE – GABE FERGUSON」である。実は、ゲイブの兄であるベンに秘密裏に連絡を取り、グラフィックを描いてもらったのだ。
このボードを手にしたゲイブは、興奮を抑えきれない。
「自分の名前がスノーボードに描かれているのを見るのは最高の気分だよ。しかも、グラフィックのすべてを兄のベンが担当してくれた。これ以上の喜びはないね。ちなみに、大きく描かれているのは、僕たちの両親の愛犬・フランク。ベンは、そのフランクの額に第3の目を描き加えて、トリッピーな雰囲気に仕上げてくれたんだ」
兄弟愛、そして、家族愛がグラフィックに表現された唯一無二のボードである。テクノロジーはもちろん重要だが、グラフィックもそれ以上に大切なのだ。
カーティス・シジック × ALCHEMIST
LANDSCAPE COLLECTIONの中心的存在、ALCHEMIST。K2のボードのなかでフレックスがもっとも硬い……と書くと敬遠される方が多いかもしれないが、実はトーションがとてもよく利くため操作性がよく、試乗会で搭乗して虜になるスノーボーダーが後を絶たない人気モデルだ。特徴は、SPACE GLASSテクノロジーの採用に加えて、特許取得済みのSPECTRAL BRAIDテクノロジーという計算され尽くしたボード内部のカーボン配置のおかげで、高速域でもボードがバタつかず、それでいてターンはスーパースムースに始動できること。さらに、ノーズは3D形状になっているため、余分なエッジの引っ掛かりがないという点にある。そのため、壁地形にハイスピードで突っ込んでも、スムースな切り返しができるというわけだ。
「このボードの開発に携わらせてもらったけど、個人的に今までで一番好きなオールマウンテンボードに仕上がっている。山をもっと自由に滑りたい人、いろいろなライディングを楽しみたい人にこそ乗ってもらいたいと思っているよ」
このALCHEMISTが完成に至るまでにもっともフィードバックを寄せたライダーが本章の主役だ。かつてのMACK DAWG PRODUCTIONSや、新時代の幕開けを告げたVIDEOGRASSといったビデオプロダクションが手掛ける映像作品に出演してきたフリーライド界の重鎮、カーティス・シジックである。約20年に渡って撮影活動に従事してきた彼は、近年、ゲイブ・ファガーソンやジャレッド・エルストンをはじめとする次世代マウンテンフリースタイラーとセッションを重ねることで自身の知識や経験を伝え、後進の育成にも力を入れている。現在、彼はマウントバチェラーをホームにパウダーを追い求める生活を送っているが、シーズンの90%をALCHEMISTの164Wに乗って過ごすそうだ。
そんなカーティスのためにK2がまた秘密裏に動き、実に彼らしいシグネチャーモデルを完成させた。それが、地球上で200本しか販売されない「ALCHEMIST – CURTIS CISZEK」だ。
「このボードは、僕が歳をとって振り返っても大切にできる宝物だと思っている。特にグラフィックがスペシャルなものなんだ。昔から仲のいいブライアン・フォックスがアートディレクターになってくれて、『スノーボード界のCEO』って呼んでいるジェイミー・リンがタイトルを手描きしてくれたし、そこに『9191』などで一緒だったジェイク・プライスが加わって、3人がデッキのアートワークでコラボしてくれた。しかも、ソールには僕が少年時代に船乗りの両親と一緒に乗っていたヨットの思い出が詰め込まれている。K2からの素晴らしいサプライズだよ」
自身のシグネチャーボードを手にしたカーティスは、こう語りながら頬を緩めていたに違いない。
ケネディ・デック × SPELLCASTER
メンズライダーの撮影に混じってハードなスポットを攻め続け、近年の女性ストリートシーンを牽引しているライダーのひとり、ケネディ・デック。テクニカルかつ勇猛果敢なライディングで、2018年にはスノーボード界のアカデミー賞とも言える「RIDERS POLL」にて「WOMEN’S ROOKIE OF THE YEAR」を受賞。以降も、『EVERGREEN』(2020年作)や『IT’S LOVE』(2022年作)といった注目作品に立て続けに出演してきた。
そんな彼女が愛用しているボードこそ、直訳すれば「魔法の呪文を唱える人」「魔法使い」というワードがモデル名になったSPELLCASTERだ。
このボードは両足間がキャンバーながら、インサートホールの外側からロッカーを取り入れたことで、キャンバーならではの高速域での安定性やポップ感を備えている。なおかつ、キビキビとした動きにも対応してくれるキレのよさがあり、それでいてプレスなどのトリックやルーズな遊びも自在にできるのが特徴だ。
さらに、ノーズとテールの余分なサイドウォール材をすべて取り除いて3Dキャップエッジにすることで、ボードのスイングウエイトを軽量化。旋回性能にもかなり優れた仕上がりとなっている。
その乗り味についてケネディは、「キャンバーとロッカーを組み合わせたボードで、ジブ以外にもあらゆるタイプの地形で威力を発揮するはず! 女性用のボードだけど、スタイル重視のジブ好きな男性も絶対に楽しめると思うわ」と語る。ジェンダーの壁を越えた、まさにマジックボード。
ケネディがストリートで頭に思い浮かべたトリックを次々とメイクできるのは、この「魔法使い」のボードのおかげかもしれない。そのSPELLCASTERにケネディのシグネチャーモデルが限定版として発売されることとなった。
実際に完成したボードを目の前にした彼女に、その感想を語ってもらった。
「自分が乗るボードに自分の名前が描かれているのを見るのは私の大きな夢だったから、とても興奮しているわ! このボードが数量限定ってところも、私には価値があると思うの。グラフィックは友人のダン・ブバロにお願いしたんだ。Instagramで彼のクールなドローイングを観るのが好きだったし、彼はすごい滑り手でもあるしね。ソールのユニークなクリーチャーも、カジュアルなテイストになったトップシートも、SPELLCASTERっていう名前にピッタリの遊び心あふれる画を手描きしてくれた。ダンには大きな拍手を送りたいの。彼のおかげで私はスノーボードをするのがもっともっと楽しみになったからね」