FEATURE
Anonの代名詞であるMAGNA-TECHとノーマルレンズを使い分けて世界に羽ばたいた片山來夢の視界に迫る
2024.11.19
しかし近年、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界を股にかけて活躍している片山來夢は違った。ライディング時に視界が重要であることは言うまでもなく、シビアな状況では装着感も大事にしているという來夢は、少しでもストレスを排除することで、自らをプッシュできる状態にもっていく。それが、MAGNA-TECHとノーマルレンズを使い分けるという選択だった。このようにして世界のトップレベルにまで上り詰めたのだ。
彼のゴーグルに対する考え方を知れば、今よりも快適にスノーボーディングが楽しめるようになる。ストレスが軽減されるからこそライディングに集中できる。だからこそ、きっと上手くなる。
自らをプッシュするために必要なストレスのない視界
「大会に出ていたときは感情がセンシティブになっているから、ゴーグルがちょっとでもくもったり、見えづらかったりすることがストレスになっていました。そういうときは明るいレンズに替えたくなることが多いんですけど、オレは性格が雑だからか、ノーマルのゴーグルだとレンズ交換が面倒くさくてイライラしちゃうんですよね。MAGNA-TECHは状況に応じて素早くレンズ交換できるのがいいですね」
來夢は平昌五輪ハーフパイプのファイナリストである。結果は7位入賞。メダル獲得のため再び北京五輪を目指すも残念ながら出場することは叶わず、そこからバックカントリーに身を置き撮影活動に注力するようになると、彼の才能が爆発した。「WORLD QUARTERPIPE CHAMPIONSHIPS」や「PEACE PARK CHAMPIONSHIPS」といったプロの世界で権威あるコンテストで優勝を飾ると、グローバルムービーへの出演はもちろん、昨シーズンは地球最強ライダー決定戦「NATURAL SELECTION TOUR」に日本人として初出場、今夏はアメリカの人気ポッドキャスト番組「THE BOMB HOLE」に日本人として初出演を果たすなど、世界トップクラスで活躍するライダーにまで成長を遂げた。
「パイプも含めてゲレンデで滑っているときは、MAGNA-TECH搭載のM4を使っています。仮にレンズがくもってしまっても、リフトに乗っているときに簡単に交換できるのがいいですね。ほとんどのスノーボーダーがゲレンデでライディングすると思いますが、初心者も含めてMAGNA-TECHのほうが断然いいと思います。レンズが見えづらくなったり、その交換が煩わしかったりしたら、スノーボードがイヤになっちゃうじゃないですか。まずはマグネットから入って、自分に合ったものを探っていくのがいいと思います」
かつての來夢もそうだった。自分に合うゴーグルやベストな視界を模索し続けながら、Anonとともに歩み出してから10年以上が経過する。
「正直なところ、MAGNA-TECHのゴーグルを使い始めた当初はレンズが外れることもありました(笑)。当時はレンズの種類が球面しかなくて、アジアンフィットもありませんでした。でも、フラットレンズやアジアンフィットがスタンダードになって、デザインやモデルも増えてきて。最初のころは機能面を中心に進化していましたけど、そこからフレームデザインやカラーなどチョイスの幅が増えました。フィット感がよくなり軽くもなっているので、自分好みのゴーグルが見つけられます。レンズも進化していて、最近ではまったくストレスを感じませんね。ほかのゴーグルを使っていないから比較はできませんが、以前よりもレンズを交換する頻度が低くなりました」
ブランド20周年を迎えた20-21シーズンから、スノースポーツ用に開発されたPERCEIVEレンズを採用。このレンズは周囲の色味を忠実に再現しながら奥行き感を出すことで、コントラスを高めている。光量や天候などの条件にかかわらず、こうした究極のコントラストを生み出し、さらに透明度をもたらした結果、これまでよりも地形や雪面の細かな情報をスノーボーダーやスキーヤーたちに提供しているのだ。
さらに言えば、撥水コーティングによりレンズに付着する水分を弾き、撥油コーティングは皮脂の汚れや油に強いため、クリーニングが容易だ。そのうえで、レンズの内側にはアンチフォグトリートメントが施されているため、湿気を寄せつけず、くもりを防止する。
「山の天気は変わりやすいってよく言うじゃないですか。見えない状態は話になりませんが、見えづらい状況もものすごく危険。自分をプッシュするうえで、視界はものすごく重要です。だからこそ、自分に合ったゴーグルを使ってほしいですね」
ライディングに集中するために利便性よりも快適性を求める重要性
冒頭で綴っているように、Anonチームライダーの中で唯一、MAGNA-TECH以外のゴーグルを愛用している來夢。プロライダーレベルでも十二分に使えて、レンズ交換が瞬時に行えるというメリットしかないはずのMAGNA-TECHのはずなのだが。
「バックカントリーに出るときはMAGNA-TECHが搭載されていない、NESAを使っています。バックカントリーというシビアな状況で滑るときは、ほんの少しなんですけどマグネットの重さが気になるからです。MAGNA-TECH用のレンズは厚みがあるから、その分そう感じるのかもしれません。ベン(ファーガソン)も同じことを言っていますね。NESAは着けている感じがしないくらい快適なんです。バックカントリーは言うまでもなくリスクが高いじゃないですか。だからこそ、より集中するためにNESAを使っています」
バックカントリーではハイクアップをする時間が長くなり、有酸素運動による激しい発汗を伴うため、ゴーグルはむしろくもりやすくなるからこそMAGNA-TECHの恩恵にあずかれると考えていた。海外に活動の拠点を置いている來夢は世界トップクラスの好環境で撮影する機会に恵まれているため、スノーモービルやヘリなどを利用して撮影する機会が多いのだろう。
「いや、ハイクアップもたくさんしますよ(笑)。そういうときはもちろんくもりやすくなりますけど、バックカントリーメインで活動するようになってから、Anonのブランド力をひしひしと感じています。Anonと言えばMAGNA-TECHなので、そこに注力すればいいところを、それ以外のゴーグルもかなり進化しているんです。昨シーズンから使わせてもらっているNESAは、それまでにあった同タイプのゴーグルよりもレンズの脱着が簡単になりました。なおかつ視界も広くなっていて。手を抜いていないし、妥協していないというか、主力モデル以外もしっかり進化させているところがオレとしてはとてもうれしいですね」
本記事を読んでくれている読者諸兄姉の中で、來夢のように命を落とすかもしれないリスクが潜んでいるバックカントリーで滑るという人はいないのかもしれない。しかし、スケールダウンさせて考えれば、恐怖心がつきまとう急斜面や、飛ぶのを躊躇してしまうサイズのキッカー、トライするのに一大決心が必要なトリックなど、集中力を高めなければならない状況は誰にでもあるはず。
ゴーグルやレンズを替えることでそうした壁を乗り越えられたとき、あなたのライディングスキルは高まっているに違いない。ライディングするうえでスキルはもちろん、自身に合ったハードギアの選択が重要なことは言うまでもないが、すべては目に飛び込んできた情報から始まる。多様なニーズに応えるあらゆる選択肢が、Anonにはあるということだ。