HOW TO
「ボードのセンターに乗る」基本姿勢は間違いだった!?
2016.08.18
何をするにしても基本姿勢は大切だ。生き方にしても、仕事にしても、スポーツにしても。スポーツでいえば、よいパフォーマンスを発揮できる理にかなった形が基本姿勢である。では、スノーボードでは? 「ボードのセンターに乗って、腰を落として……」という説明を受けるだろう。しかし、言葉ではわかっていてもいざ実践してみると……意外な落とし穴があったのだ。
前傾になりすぎていたらノーズが雪面に詰まってしまい、前のめりに転倒するだろう。後傾になりすぎていたら前足での抑えこみが利かなくなり、ボードが操作しづらくなる。これは容易に想像できると思うので、「ボードのセンターに乗ろう」と言われればしっくりくるもの。
では、ツインチップのボードに乗って、ボードのセンターにスタンスを設定し、重心を真ん中に置いてみよう。ボードに対して体軸が垂直になっている状態なので間違いなくセンターに乗っているから、これで完璧……ではない。なぜかと言えば、スノーボードは斜面を滑降するから。要するに、このポジショニングでは、実際にボードのセンターに乗ってはいるものの、雪面に対しては前のめりな状態になってしまっているのだ。
なので、後ろ足にやや加重する基本姿勢が正解。斜度や雪面の状況によって異なってくるのだが、比率で説明すると、前足に4割前後、後ろ足に6割前後加重すると覚えておこう。後ろ足に加重割合が多いため、後傾にならないまでも重心は全体的にテール寄りになっている。ボードに対して“ど”センターに重心を置くことは否定したが、全体としてセンターにあるべきなので、後ろ足に加重した分だけ、上半身を前足側にかぶせる必要がある。このとき、上半身を進行方向へ開くようにすること。これにより、斜面を滑降するうえでのセンターポジションがとれるわけだ。
さらに、“重心を低く”と指導されると思うが、初心者や初級者でありがちな傾向としては、お尻を突き出すように腰を落とすことで重心を低くしているつもりになってしまう勘違い。そうではなく、真下にストンと落としてみよう。このとき、ヒザが突っ張っていると腰を落としづらいので要注意。
これはあくまでも基本姿勢の話なので、先述したように斜度や雪面の状況によって臨機応変に対応しなければならない。急斜面を滑っているとき、壁地形を上っているとき、ランディングするとき、ハーフパイプのトランジションでGを感じているとき……など、常にボードをコントロールしやすいポジションに移行する必要がある。この基本姿勢をベースとして、あらゆる状況下を滑り込むことで身体に叩き込もう。だからこそ、フリーライディングが重要と言われるわけ。
このようにあらゆるシチュエーションでのポジショニング=“ニュートラルな基本姿勢”をマスターすることで、プロスノーボーダーのように“板に乗れている”と表現される滑りが実現できる。それは、ボードと身体の動きが一体化したように見える、人馬一体ならぬ“人板一体”な滑りだ。
rider: Ruiki Masuda / photo: Akira Onozuka